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「環境」活動の根拠をどこに求めるか

企業に求められる環境活動の内容は非常に多岐にわたるようになってきた。しかも、それぞれにおいて相反するようなことのバランスをとって考え進めることが求められる。
EMS(Environmental Management System)でいろいろな審査があるときに、当事者ではなく事務局が書類を作れば審査を通しやすくはなるだろうが、事務局が一生懸命やればやるほど活動の実態はどんどん形骸化することになる。アカウンタビリティーでは、企業だから情報公開が原則となるが全てを公開すればよいというわけでもない。各種法規制への対応では、当然のことながら法的要求を満たしていかなければならないが、法を守ることだけを考えて実行すればいいといったことではなく、手間やコストも検討してかからなければならない。

環境問題対応というと、「地球にやさしい」、「人にやさしい」といったキャッチフレーズがあるが、少なくとも企業においては人手とお金を使っ環境活動の成果が「川に鮭が帰ってきた」というようなことだけではなく、最終的には何らかの付加価値になっていくことでなければ環境活動を継続していくことはむずかしくなる。
さらに、以上のようなことは経営者のみならず企業の各部署を巻き込んで考え進めなければならないから、担当者の思いのままになかなか進められないことが悩みである。

「環境」には、真正直に取り組むことに疲れてしまう、あるいはモチベーションを維持しにくい要素がいろいろある。
環境問題対応はきりがない。例えば、急性毒性がない物質を使うようにしたら、それには慢性毒性があった。そこで、替わりに急性毒性も慢性毒性もない物質に切り換えると、例えば川の魚に蓄積される物質が遺伝子毒性を持っていることが問題になるというようなことである。同様に、次から次へと規制が出てきて、その対応に追い回されてしまう。

COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)に基づくCO2削減が進められつつあるが、炭酸ガスの排出を現時点の水準から減らすためには、COP3での削減幅の6倍の努力をしなければならないという。そのような中でアメリカは京都議定書に参加しない。「環境」にかかわる問題といっても、見えないものは後回しになり、声の大きい者が勝ち、数値化されたことだけがどんどん話題として先行していく傾向がある。
「環境」をまじめに考えれば考えるほど、モチベーションが下がってしまう状況が厳然としてある。

自らのモチベーションを維持しつつ、しかもバランスある環境活動を継続していくためには、どこかに根拠を持っていなければならない。
ひとつの根拠は、法規制のロードマップからフィードバックして、いつどのようなことが動き出すかを考え、自社の環境活動のロードマップを作ることである。先に述べたように、「環境」と一口に言ってもその内容は多様にあるし、きりの無いことだからこそ、後追いではなく起こると予想されることとその影響を先手で考えながら何をしていくかを考えていかないと実のある活動を継続していくことはむずかしい。このとき、予想されることの根拠として信頼できるのが法規制の動きである。

もうひとつは、新聞や業界誌に掲載される情報のファイリングを有効に生かすことである。環境活動については、先に出過ぎてもいけないし遅れてもいけない、あるいはどこの会社はやったが当社はまだ必要ない、といったことが判断の要素としてあるからである。ファイリングによって、どのようなことをすれば利益になるかが分析できるし、どこの会社がどのタイミングで何をするかといったことをウォッチすることで自社がいるポジションを掴かむことができる。

(「JAGT info 2005年1月号」より)

2005/01/17 00:00:00


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