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メディア制作に関するビジネスの将来を見た:初夢

日々WEBや携帯電話など電子メディアの利用が高まっていく中で、それら制作を手がけるための人材投資やIT投資がかさんでいくものの、なかなか十分な利益を産むところまで至っていない。昨年からわが社でもメディア制作の案件は増えていて、目下の仕事はあるものの、何かもうひとつ思い切ってどんどん提案して仕事をとろうと決意ができないでいる。この分野の仕事の先行きが読めないからだ。印刷物を発注している顧客にとって電子メディアも必須になっていることはわかるが、それを我々が将来とも負いきれるものか、将来は我々の仕事ではなくなってしまうのか、思案しつつ今後の事業拡大に踏み切れないまま元旦の夜を迎えた。

そうすると初夢に ピースマークのような円を区切った形が現れた。これは何かと思案していると、解説文が書いてある。これは200?年の報道で、メディアの制作に関わるビジネスを分析したものである。その市場規模が1兆円になった時の産業構成比を分析していて、1兆円を境に電子メディアが急激な成長にさしかかったと回想のようなことが記されている。つまり1兆円まではECとかネットを合目的的に使うことに比重があって、要するに必要だからネットを使うという時代であったが、この1兆円時代から先はネットを使ってのコミュニケーションが人間のコミュニケーションの主流になっていったとの解説がある。

1兆円を迎える200?年の?の数字は紙が破れているのか画面にゴミがついているのか、判読できない。他のニュースからして2010年直前のように思える。円のようなものは、左半分はIT業がメディア制作に関して稼ぐもので5000億円分あり、右半分は印刷業界が稼ぐ分で同じく5000億円分ある。出荷金額では拮抗しているが制作される情報量では圧倒的にIT業の方が多くなっている。これは両者が同じ電子メディアとはいっても、異なる領域にすみわけ始めているからであると説明されている。性質の異なる仕事になっているようだ。

2000年以降に電子メディアの使い方で増えたのはデータベースに基づく情報サービスで、出版社の編集のような裏方の作業はなく、無人で運用されるコンピュータシステムを、ネットワークを経由して利用するモデルである。時刻表のような印刷物の代わりに乗り換え案内のWEBサイトや、旅行のガイドブックの代わりに宿を比較して予約するシステム、それから一般・専門分野それぞれ検索エンジンの発達である。見栄えはWEBページと同じでも、コンピュータがオンデマンドで生成しているページで、人手で作業するのはデザインテンプレートや、ユーザインタフェースのプログラムくらいである。しかしそこはやはり印刷のノウハウが生き残っているところのようだ。

こういった合目的的な利用は200?年には大きな転機を迎え、それまで人口知能とか機械知識処理といわれた分野と結びついて、顧客サポートやセミナーなど知的労働をするロボットが仕事を受け持ちつつある。社会的な規模で、単純な案内業務が人からコンピュータに移ろうとしていて、司法書士などの資格をロボットに与えてよいかどうかの議論が起こってるそうだ。それはともかく無資格でできる知的労働は急速にコンピュータ化し、ネットワークを通じてサービスをするために、人と意思疎通をするためのインタフェースとしての電子メディアという分野ができているようだ。

そういえば漢字情報処理で索引類を昔はよく作ったものだが、そういった仕事はデータベースがどこでも参照できるようになると、いらなくなるものも多いだろうなと思う。一方右半分の印刷業が行っている仕事は、コンテンツ制作のサポートが増えていて、クリエイタとパブリッシャの間に入って作業し、出来上がった作品が出力メディアの如何を問わずに使えるものにして管理している。もともと印刷メディアという限定された出力のために発達したノウハウなのに、メディアから自由なノウハウとしてビジネスが続けられている。200?年の課題は、コンテンツのメディア変換のようで、特定メディアに出力する際に、クリエイタのインテントをどれだけ反映させてクオリティを保つかという技術が競われているようだ。

ピースマークには円の形の右も左も下のほうに飛行機の翼のような斜線がみえるが、IT業界側は下のパイの切れ端のようなところが機械知識処理の発達がもたらした領域で、まだ我々が見ていないベンチャー企業が200?には出てきて活躍している。印刷側は下のパイの切れ端のようなところが大手のシェアで、2000億円ほどになっている。その上の残りは中小印刷業界が稼いでいる。夢から覚めて自分の会社経営に当てはめて考えてみると、結局過去に製版や漢字情報処理で稼いでいたのと同じようなところがクロスメディア制作の仕事としてやれそうな気がしてきた。

今までITはメディアとはあまり関係なく、生産設備とか仕入れとしかみなかったが、ビジネスを根本から変え、それにつれてメディアのあり方も変わっていくと思えるようになった。まずはITでビジネスそのものの変化がどうなりそうか、今何が起こっているかを知らなくっちゃダメだなこれは。そうだ! PAGE2005に関して、Webビジネスを象徴する3つの巨大企業――グーグル、アマゾン、楽天という記事があったな、もう一度読んでみようか!

関連情報 : PAGE2005基調講演【A0】Web:飛躍の原動力

2005/01/04 00:00:00


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