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ドルッパ2008でJDF対応システムはどんな姿になっている?;PAGE2005コンファレンス

JDF規格の議論は実装上の課題に移っており、工程進捗中に起こった変更への対応や、日本の商習慣から欲しい仕様項目とJDFのグローバルスタンダードとの整合性など、具体的な部分への対応策や見通しがテーマになってきている。

JDFワークフローの最初に来るのは製造仕様で、MISによって発注元が欲しい印刷物についてを、発注元の観点から記述したものである。通常は営業が起票する見積りや受注伝票に書かれるパンフレットやチラシや本などの仕様であるが、ここでは価格決定にかかわる要素はあるが、作業方法などは書かない。

次に、工務などで作業指図や日程計画や機械取りなど、仕様から工程への変換が行なわれる。つまり「物/製品」をつくるための「工程」を導き出すこと、生産工程を決定するために、生産能力を分析すること、さらに各生産工程の間のつながりを決定することが行なわれる。例えば「露光済みプレートはプリプレスからの出力であり、印刷への入力される」といったことである。さらに製品仕様が来たら、標準手順や標準工数、また前回の仕事を学習してくれていて、これらのデータから進捗計画や製造設計をシミュレーションできる仕組みも重要もある

JDFにおいて重要なことは自動化やプリセット、機械の稼動状況から原価などを算定することだけでなく、完了したJobをデータ蓄積して次回の同様な受注に際してJDFデータを再利用して入力の効率を上げること、JDFを利用して如何に発注元の意志である印刷仕様(Intent)を間違いなく速く生産部門に伝達するか、如何に効率の良い工程を設計して、生産のスループットを向上させるかのシミュレーションがリアルタイムでできること、そしてこれらの情報のやり取りを整流化していくことである。

JDFを策定している標準化団体であるCIP4には270社ほどの印刷関連システムや機器ベンダーが参加していて、海外ではMISベンダーの参加も増えてきており、活発に活動が行なわれている。

しかし、海外の状況が日本には伝わらない部分もあるので、PAGE2005コンファレンスE-1セッションでは,CIP4本部からJDFの最高技術責任者であるDr. Rinse Prosi(ライナー・プロシ)氏を迎えて、次のようないろいろな疑問を直接聞く機会を設けた。

*今までに7回ほど開催されている、開発者が集まってインターオペラビリティ(互換性)テストに参加するベンダーの規模や業種はどのような傾向や経過があるのだろうか。

*欧州での印刷会社へのMISの普及状況やJDFへの対応やはどうだろうか。またCIMに対する関心度はどうだろうか。規模によるメッリトとはどのようなものだろうか。

*印刷会社以外の、デザイン会社などがCIMやJDFで得られるメリットは何だろうか。

*日本では分業や分社化した中、また外注の協力を仰ぎながら仕事をすすめることが多いが、このような中でのCIM構築はどうしたら良いのだろうか。

*JDF対応製品を開発しようとする各分野のベンダーが、900ページにも及ぶJDFの中から何を選択して実装すべきかを示すガイドラインとしてICSが作られた。プリプレス、プレス、MISといった基本的なICSは策定されてほぼ出来てきているが、JDFの仕様とICSの仕様とはどう違うのだろうか。

*また、JDFを具体的な現場運用へ落とし込むと、まだ足りない部分もあるようでだが、具体的にどのような課題が残っているのだろうか?
例えば、
・再版指示(MISは新規だが、データは、再加工やそのまま使用する)
・編集と製版のやり取り(直しを含めて)
・直前での印刷機変更(面付けが8丁→4丁X2に変更されても、瞬発力のあるフロー)
・別ジョブ同士の面付けで作業を進めるには
・1版のみ版替え指定(チラシ等で店舗のK版のみを変える)

*JDFの仕様書のバージョンは現在1.2であるが、ここで積み残している課題にはどのような項目があるのだろうか。

*JDFとPDFとCMSのプロファイルを組み合わせ、さらにプリフライトのプロファイルを付けると、どのような優位性が得られるだろうか。

*JDFには対応した機器やシステムを簡単に接続できるプラグ&プレイのような仕様も盛り込まれてきているが、将来は簡便に接続できるようになるのだろうか。

*グローバルスタンダードを目指しているJDFには日本の商習慣に合わない所もある。国内ベンダーはオリジナルタグを作成して対応しているが問題はないだろうか。特に用紙について寸法の単位がJDFではポイント(日本ではmmを使用)である、また実際に印刷に使用する紙情報だけのタグ情報になっていて全紙の情報を記述するタグ(全紙寸法、連量等の他、断裁に関する情報)が、未だ足りないと思われる。

*次回の大きな展示会であるドルッパ2008ではJDF対応システムはどのような姿になっているのだろうか? 

また、PAGE2005コンファレンスE-2セッションでは、JDF対応の完成形はどのようなものか、現状はどこまで実現されているかを聞くとともに、実運用事例を紹介する。
JDFの利用範囲は印刷CIMを目指すにはMISと生産システムとの連携が重要であり、また自動化へのアプローチもあり、今実現できることだけでJDFワークフローについて判断することは早計である。
全体最適化を目指す印刷CIMの構築とは今まで「点(自動化)」から「線(機器連携)」への展開に留まっていたが、次の「面(管理)」への組み立てによって、全体を最適化するというアプローチである。IT技術としては個々のデジタル化からデジタルネットワーク化の活用になる。



PAGE2005展示会場では、CIP4/JDFのロゴマークで表示されたMIS/JDF Zoneへの参加ベンダーでは、JDF関連システムや機器の展示が行なわれる。また、展示ホールC(3階)の「JDFステーション(無料プレゼンコーナー)では、JDFによるCIM化とMIS/JDF Zoneの出展の見どころが分かる、「JDFマップ」が無料配布される。会場に行ったら、はじめにこのマップをゲットしよう。

2005/01/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会