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印刷会社が模索するモバイルのビジネスチャンス

ネットビジネスの中で,市場の拡大が特に期待されるのがモバイルコマースである。

1995年からインターネットユーザーの動向調査を継続し、携帯電話の利用実態調査を 2003年から毎年続けている(株)イプシ・マーケティング研究所の野原佐和子氏は, 「モバイルコマースは着メロ、待受画面など通話料とともに支払うサービスは浸透し たが、物流を伴うショッピングやデジタルコンテンツはまだこれから。今年くらいか ら本格的に市場が活発になるのではないか」と期待する。 経済産業省「情報経済アウトルック2004」では,モバイルBtoC EC市場は2003年に 7,770億円と推計され、急激に拡大している。現在のところ、モバイルコマースの中 心層は20代でPCコマースのユーザー層よりも若く、その層の幅は狭い。しかし,イン フラや端末の機能の向上,商品販売サイトの拡充など,市場を後押しする要素が着実 に増えているという。

印刷業界はどのように新たなモバイル市場に参入できるのだろうか。大日本印刷は,2005年1月11日に携帯ショッピングサイト「株式会社モバイルインパルス」を設立した。事業のリーダーが、社内ベンチャー制度を利用して新しいビジネスモデルの提案を行い、事業としての有効性が認められたことから、自らが社長となり、社内ベンチャー第4号として新会社を設立した。

モバイルインパルスは,「オシャレライフ」という成功報酬型のモバイルのコマースサイトを提供する。コマースサイトと一番近い印刷物は通信販売カタログだろう。しかし,カタログは刷り上がれば,一定の料金を受け取り,顧客に納品して終わりである。ネット上の物品販売の仕組みを提供する「オシャレライフ」は,売れた分だけ同社に報酬が入る。ただし,売るためにはオシャレライフ側で様々な工夫やノウハウの蓄積が必要となる。モバイルインパルスは印刷業界が受注産業から脱皮するためのひとつのヒントを提供する。

凸版印刷は5年前に,PC上でコンテンツ流通サービスを行う「ビットウエイ」を開始した。出版物を制作する時にできるデジタルデータを,新たなビジネスに有効活用できないか,というのがビットウエイ誕生のきっかけだったという。モバイルについては,2003年よりサービスを開始(第二世代携帯向け)。第三世代携帯むけには,約1年かけて各キャリアへの対応をすすめ,2005年12月にボーダフォンへ対応が済み,3キャリア全てでビットウエイのサービスを利用することができるようになった。

モバイルで提供するコンテンツは出版系である。特にマンガが売り上げを伸ばしているという。小さい携帯電話の画面でどのようにマンガのコマを表示するのか,出版社や著者との調整には苦労があったようだ。最終的に,PC上のビットウエイのユーザ層とは異なる新たなユーザ層を獲得しつつある。

野原氏が語るように,モバイルのショッピング市場はまだ大きいとはいえない。購入する年齢層も狭い。これはまた,市場がまだまだ広がる可能性があるともいえる。携帯電話の手放せない今20代前半の年齢が上がれば,層が厚くなるだろう。モバイルやPCなどネットは販売の流れやプロモーションの主流になるのは確実であり,紙もネットに組み入れられるという形で,接点がでてくるだろう。ネット上での商取引が日常的になる中で,企業におけるモバイルへのサポートは必須となる。

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上記に関連した講演とディスカッションをお聞きになりたい方は,PAGE2005 コンファレンス「ネットが生み出す新ビジネス〜急成長するモバイル」にぜひご出席ください。
【講演者:(株)イプシ・マーケティング研究所 代表取締役社長 野原佐和子(株)モバイルインパルス 代表取締役社長 澤居大介凸版印刷(株) Eビジネス事業部 ネットワークビジネス本部 小林泰

2005/01/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会