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クロスメディアに取り組む5つの理由

20世紀に印刷の世界で起こった最も大きい出来事は、活字が滅んだことだろう。15世紀のグーテンベルクに始まり、日本には19世紀に本木昌造によって輸入され、社会の発展に寄与した技術である。その役割はコンピュータに引き継がれて、紙へのプリントだけでなく、電子メディアも数多く登場させた。紙媒体は不変だと考える人もいるが、その紙媒体の制作にコンピュータを使っていることは否定できない。

JAGATでは21世紀を迎えた時点で「印刷新世紀宣言」を発表し、今後グラフィックアーツ産業側から切り開いて、価値を産むことが出来るものは、クロスメディアと、eビジネスと、デジタルプリンティングに集約できると考えた。クロスメディアとは,紙メディアと電子メディアの共存をロスなくできる環境を作っていくことである。eビジネスは,印刷物提供に付随して過去から行っていた派生サービスも含めて,ITを使ってさらにサービス価値の向上を図るものである。デジタルプリンティングは,デジタルデータから即アウトプットができる時代なのだから,データを最大限に活用して,いろいろな場所でいろいろなプリンティングをするように事業を広げていくことである。

デジタルの時代になると、どのようなメディアのビジネスに関わる者も、単独のメディアのだけを扱うことはなくなり、制作の過程でも、販促などメディアの利用面でもクロスメディア的共通理解が重要になる。そこでJAGATは、クロスメディア的ビジネスを円滑に進める上にはどのようなリテラシーが必要であるかを検討し、クロスメディア制作のエキスパートになるためのカリキュラムをまとめた。その結果は、現在ではクロスメディアパブリッシング講座という通信教育になっているが、すでにこの分野の教育を行っている各学校や機関と連携して、資格制度化する準備を行っている。

例え紙媒体に特化した仕事をするにしても、クロスメディアという理解が必要なのは、メディアそのものの用途から考えて、またメディアの制作方法に関して今起ころうとしている変化から考えて、さらに旧来の印刷のビジネスモデルから脱却するために、これからも社会的なポジションを失わないために、最後に個別企業の努力を超えて業界全体が標準化に取り組みだしていること、などの5つの理由からいえることである。

理由1 メディアは組み合わせて使うもの

コミュニケーション手段は、よく交通手段に喩えられる。両者が同義である言語もあるほど似ている。自転車の軽便さと高速道路をすっとばす高級車の価値を同じ基準で比較することはできない。アナログメディアの時代から広告の分野では従来からメディアミックスという言い方があるように、TVのCFもSPもチラシも組み合わせて販売促進がされていた。 しかし従来のメディアは個々に独立した縦割りの世界があり、例え広告代理店が一元的にコントロールしていたとしても、各々の制作作業が一旦縦割りの世界でが始まると、横の関連がつけにくくなってしまった。でもTVの時代になるとクライアントからは印刷物の雰囲気もTVコマーシャルに合わせて欲しいというような要望も出る。同時並行的に作業される各メディアを統合的に管理する方法が必要なのである。
また携帯電話やWEBが普及するにしたがって、マスメディアで告知して携帯電話でレスポンスを受けるとか、印刷物で表現しきれないところはWEBで説明を加えるなど、複数メディアにまたがった使い方が多くなってきた。これは広告だけではない。製品に添付されたマニュアルでは書ききれない細かなユーザサポート情報をWEBに載せるとか、資格試験と教科書とeLearningをセットで企画するなど、異なるメディアを最初から適材適所に組み合わせて企画することが当たり前になりつつある。
要するに今後は単一メディアだけ考えて済む領域は非常に狭まってゆき、単一メディア制作の縦割りのビジネスは顧客ニーズには合わないものとなる。

理由2 メタデータが使える時代になった

DTPで分散処理はやりやすくなったものの,残った課題は統合化である。結局デジタル時代のメディアの仕事というものは,それが紙に出すものでも画面に出すものでも,「部品」を送って,それを即座に組み立てて見せるものである。それはプロが行う制作の局面でも,最終ユーザの局面でも同じだ。つまりこういったことにどこでも共通に使われる技術が次の「核」である。新しいDTPアプリケーションは「部品」を関連付けて自動的にコンピュータで扱えるようにする技術を最初から想定して作られるようになってきた。AdobeのCreativeSuiteにもXMPという形でXML化された情報を扱う機能が加わっている。
かつてのPostScriptは,当時300dpiのAppleLaserWriterではできないことも記述する能力があった。このことは最終的には何千dpiのCTPになってもこの技術が生き残ることにつながっている。AdobeXMPがサポートするXMLのメタデータセットというのも,今の現実のビジネスにおける応用をはるかに越える機能を持っているものであり,その背後にあるところのメディア利用という面で社会を変えるほどの技術とは,W3CのセマンティックWEBの考え方にそって発展しようとしている技術群である。ティムバーナードリーがセマンティックWEBを提案した時の文書に書かれていることが、今実現の第1歩を踏み出している。

理由3 ビジネスモデルを変えなければならない

今日ではホームページ制作の仕事が多くなっているが、それも次第にデータベースからテンプレートに自動的に流し込む無人編集へと変化しつつある。かつてなら原稿を集めて編集して、ページ組して、印刷していた紙メディアは、WEBの掲示板やblogのように、先にデザインのテンプレートが作られている中に、書き手が自分で文章を入れ、同時に多くの人が見て、反応も書き込まれるものとなる。こうなるとクリエイティブやデザインのテンプレートを作る仕事以外は減ると考えられる。紙の印刷自体は減っていくだろう。 反対にデジタルメディアは今から何倍も大きく成長する。まだ電子メディアがヨチヨチ歩きの今のうちに、電子メディアに慣れ親しんで、デジタルリテラシーを身に付けておかねばならないだろう。5年というのはそれはそれほど先のことではない。
自分の能力をデジタルメディアの世界で生かすには、デジタルメディアがどのような技術やサービスによって成り立っていて、今までの自分達はどこにいて、これから自分は何をしたいのかをちゃんと考える必要がある。デジタルになるとメディアもECもコミュニケーションもつながるので、連携して動くようにすることが効率化である。ソリューションを発想できる側に立たないとビジネスで優位にはなれない。

理由4 新たな役割と業界が見えてきた

今でもさまざまな業界が電子メディアビジネスで活動しているが、それら業態を大まかに整理すると、いわゆるITベンダーと、コンテンツの制作加工、メディアを使ったサービスビジネスの3つに分けられるだろう。メディアを使ってエンドユーザにサービスしているのは、印刷会社の発注者ともいえる。物販とか教育産業などは、商品なり教材を仕入れて、マーケティングして売るとか、生徒を集めて教育/評価をする。その業務や管理サイクルを効率的に行うためにメディアとかITを使うのである。つまり収益はメディアによってもたらされるのではなく本来業務からくるのであり、本来業務の改善手段としてメディアがあるという位置付けになる。基幹業務のシステムは自前で構築運営しているのでそのシステムとメディアのシステムを連携させることが課題になる。Webなどの応用が世の中で最も目につきやすい部分でもある。これらビジネスの運営に関してアウトソーシングを請け負う会社もある。メディアに関するサポートビジネスの大半はベンチャー的な一攫千金を狙うようなものではなくなり、ゴールドラッシュの時代の「ジーンズやスコップ」のように、地道で供給力も品質も安定的なものが望まれるようになるだろう。それはITベンダーやコンテンツホルダーとは別の仕事である。結局はコンテンツ制作の世界がどうなるかを消去法でみていくと、印刷業界が請け負う部分が大きいだろうことがわかる。

理由5 進む標準化

DTPのまわりにコンテンツ管理(CMS)やデジタルアセッツ管理(DAM)など新たなデジタル環境ができつつある。DTPとCMSで問題なのは、DTPに従属するようにCMSを開発するのも、CMSにあわせてDTPを使うのも行き詰まる方法なので、DTPとCMSがそれぞれ独立して、しかも必要な連携がとれるようにすることだ。そこにちょうどよいのがXML技術であり、XMLをベースにしたNewsMLなどで両者を結ぼうという考え方も出てきている。CMSが顧客側にあろうとも印刷側であっても、それらと連携して制作が出来るようにすることが、近年の印刷側の最大の課題になるだろう。NewsMLやAdobeのXMPなどそういった方向の開発は急に盛んになりだしていることがその裏づけである。ワークフローに関してはJDFがある。
IT環境が流動的である以上、システムの有効年数は2年ほどしかない。その最適化ために何年も準備するようなことはあり得ない。短い開発期間で、少ない開発コストで、ヒットエンドランのように細かい成果をつなぎながら、将来は大きく役立つシステムにしていくために、上記のようなフレームワークや標準化をうまく取り入れて負担を少なく取り組むことができるようになった。

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クロスメディアビジネスを効率的に行うには、クロスメディアのシステム構築に関わる方々、クロスメディアの制作・管理ツールを提供している方々、クロスメディアの制作や配信などのサービスを行っている方々の間のシナジーが重要である。PAGEコンファレンスのPAGE2005基調講演クロスメディア・トラック、PAGE2005展示会場ではクロスメディアZONEなどで、この分野の先端で活躍されている方々が、発表し、意見交換を行う。XMPに関してはグラフィックス・トラック【D1】、JDFについてはMIS・JDFトラックおよびMIS/JDF ZONEにて専門的な情報提供が行われる。

2005/01/18 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会