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情報統合のインフラ構築ステップ

ITは日々変化しており、これから印刷業が目指すシステム化も,日々要求機能は変化する。このような状況の中段階的に目標に近づけるには、印刷市場の変化、生産性向上の限界、情報統合化の必要性を睨んで進めていく必要がある。
印刷市場の変化では、出版市場は8年連続マイナス成長というように紙媒体の印刷市場は縮小を続けている。多品種化、小ロット化、短納期化、低価格化は今後も進むと思われ、そのため自社だけでなく、得意先・関連会社とより強固なパートナーシップを築かなければ生き残れない状況がある。

さらにDTP化、CTP化の進展、製造設備の更新に伴い、プリプレス・実用版・印刷など各工程の生産効率が向上し、今では工程単体での効率アップは限界に近づきつつある。このため製造工程全体の効率化が必要である。また営業・生産管理・事務部門の生産性は余り向上しておらず、多品種・小ロット・短納期の受注品目の増加の為、一人当たりの作業負荷は増大し、ホワイトカラーの生産性向上も必須となっている。
このような状況の中では、情報統合化が絶対に必要となる。印刷会社が仕事の質を高め、生産性を向上し、最大利益を創出していくには、全体最適の視点で製造工程全体のボトルネックの排除が不可欠である。そのため得意先・社内各部門・関連会社との情報の共有化、情報伝達の効率化により、リードタイムを圧縮し、品質管理の強化、得意先とのコミュニケーション増による得意先満足度の向上などの課題を解決するシステムの実装が必須である。従来は個別に構築・運用されていた業務系システムと製造系システムの融合、更には得意先・協力会社をも含めた全体最適を目指す必要がある。

製造系システムでは、今後はCIP4/JDFを活用したCIM(統合化製造システム)をメーカー主導ではなく各印刷会社による検討段階に入ってきた。
反面,CIMの土台となるべき基幹業務系システムであるMIS(情報管理システム)は、多くの印刷会社で10数年来ほとんど変わっていない実態がある。
このため現状のMISでは業務系システムと製造系システムのデータは一元化できないためCIMは実現できず、MISの再構築が必須となってくる。

MISの抱える問題

現状のMIS構築の多くの経緯は、手書き伝票のコンピュータ化、事務処理の省力化が第一の目的とされ、システム化の対象となった業務も受注・発注・支払・売上などの勘定系の業務であった。製造に関連する製品仕様、製造指示、製造計画、実績収集などのシステムはその後、投資効果の高い工程を優先に工程個別に順次構築されてきた。
このため、現在のMISは印刷会社としての全体最適を目指した形でシステムが構築されておらず、工程間の情報連携・共有が弱く、特に製造する上で最も重要な製品仕様のデータ化が不備で、製造系システムとのシームレスなデータ連携が困難である。
また業務個別、工程個別システムのコンピュータ化による効果は既に限界に達しており、業務系システムが本来寄与すべき営業・生産管理・事務部門の生産性の向上が困難になっている。

CIMを実現する為に求められるMISの構築ステップ

MISの要件は、

・統合化(業務・情報・システム・データの統合)
・オープン化(Web技術の活用、社外とも情報交換が容易にできること)
・自動化(受注から印刷物の製造・納入に至るまでの製造工程の自動化)
・柔軟性(組織・業務プロセスの変更にも柔軟に対応できる)
・共有化(部門間、生産設備、社外と双方向のコミュニケーション機能)

であり、製品仕様や様々な業務情報を一元的に管理し、どの部門、システムからもリアルタイムに情報を共有化できる統合システムとする。これはCIMやEDI構築の基盤となり、経営戦略を実現し、自社の最大利益の創出に寄与すべきシステムである。

このためMISを構築するステップは、自社の目指す将来像・ビジョンを描き、ロードマップを作成し、市場、取り扱い品種、自社の保有設備、会社の規模などにより、業務プロセスや組織・部門など印刷会社にあった、それぞれのMIS/CIMを構築する。
パッケージソフトの導入か、自社開発かは、自社の目的にあったパッケージソフトがないわけではないので、検討も必要である。

自社の業務プロセス全体を見直し、業務プロセスの統一を行う。特に「標準化」が必須であり、標準化がされなければ、統合化・自動化は困難である。また、業務系システムと製造系システムを層別に構築し、どのような情報がどのタイミングで発生するかを整理する必要がある。
システム環境では、オープン化が前提であるが、必ずしも全ての業務がWebに向いている訳ではないので、開発コストや操作性などを考慮しながら開発技術の検討も必要である。
既存のMISを一気に全面再構築(スクラップ&ビルド)するのか、段階的に再構築するのかもある。段階的に再構築する場合、既存システムとのデータ連携をどうするのか、システムへの構築費用はどれだけかけられるのか、実際の実現ステップ・スケジュールをどこまで具体的に落とし込めるかなど、過去の経験値だけでは判断が難しい。

最近の製造システムにおける考え方には、次のようなモデルがある。



このような検討を行いながら、CIMに向けたシステム化へのアプローチがそろそろ必要な時期になってきた。このためPAGE2005コンファレンスでは、CIMに向けたいろいろな要素をCIM/JDFトラックで取り上げており、また「情報統合のインフラ構築ステップ 」セッションでは、大手印刷会社や中堅印刷会社のアプローチなどを紹介している。

2005/01/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会