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XMPとJDFで、印刷制作のオートメーションへ

PAGE2005のメインテーマは、メディアは循環型ビジネスへであった。循環の意味はいくつもあって、コンテンツの再利用を容易にすることはもちろんだが、印刷物を必要とするビジネスのPDCAの循環にあわせた制作システムを作るべきであるという考えである。つまりコンテンツを作る側や発注者と連携したシステムに価値があるのであって、もはや製作現場の中だけで最適化を考えても投資効果が得られないとか、せっかく作っても顧客から取り残されてしまう恐れすらある。過去に印刷・製版側が取り組んだ画像データベースの多くはそのようなものであった。凸版印刷のガメディウスなど顧客のビジネスプロセスの方から発想したものは生き残っている。

では今日の技術や近未来の技術のどのようなものをどう組み合わせたら顧客のビジネスプロセスに合わせたシステムつくりができるのだろうか。2005年2月2日の【A1】セッション、「制作の自動化にメタデータを使う」では、North Plains Systems のロン ロスキウィッツ氏が、(急遽来日できなくなって)ビデオのプレゼンではあったが、W3CのセマンティックWEBにそったインターネットの検索技術のインフラの上に、コンテンツの検索やハンドリングが出来るようになることを説明した。つまりコンテンツのデータに関するさまざまな情報(メタデータ)をXMLで記述しておくことで、環境が変わっても使えるようになる。こういった技術はすでにAdobeXMPに反映されており、XMPを扱うコンテンツ管理、DAM、アーカイブの開発が進んでいる。またメタデータセットもPhotoshopでの画像情報に以前から使われているIPTCを代表として、既存の使えるものがいくつかあり、また検討されている。AppleやMicrosoftの次期OSにはメタデータサーチエンジンが搭載されるなど、この方向で進もうとしていると話した。

同セッションでAdobe Systems XMPプロダクトマネージャのガナー ペニキス氏は、AdobeXMPが誰でも使える標準技術の上に成り立っているもので、制作のオートメーション化の基礎となるものであるし、ビジネスプロセスに合わせた戦略的なシステム構築のためにも取り組まれている話をした。XMP自体はラベルとかタグ付与の技術だが、それによってファイルの中にファイルに関したメッセージを入れられる。例えば、何が映っているのか、写真家のコンタクト先、使用に関するライセンス情報、履歴、他ファイルとの関連、ワークフローの次ステップはどこか、などで、メディアにインテリジェンスを付与するものである。XMP利用のためにはオープンソースのSDKが無料で提供され、Adobe製品以外のどんなファイルにも付与でき、そのようなツールもあるという。デモで、あるファイルのメタデータ部分のをダンプして表示して見せたが、RDFで記述された標準的なコードが埋め込まれている。XMPのメタデータはAdobeCS製品の中では引き継がれていき、InDesignで統合され、最終的にPDF-Aのアーカイブにまで残り、トレース可能となる。

【A2】セッション、「編集・制作はどこまで効率化できるか」では、Adobe Systems JDF シニアプロダクトマネージャのジェス ウォーカー氏が、短時間で人手をかけないように制作プロセスを改善するために、クリエイティブから製品が出来上がり配送されるまでの全体をコントロールするJDFの重要性と、電話やfaxやemailでの連絡に代わって、クライアントがデスクトップから直接JDFでコンタクトするように印刷会社が啓蒙すべきといった。啓蒙とは、最初に取引の要件を印刷会社が聞いてJDFのテンプレートを作ってクリエイティブ側に送り、クリエイティブ側はそれに手を加えてAcrobat7でPDFを作り、それを印刷会社が受け取って検証してMISに渡すとか印刷工程に渡すというのが当面の流れであろうという。JDFに関するツールは近いうちにAdobeとOEM側から色々出てくるようである。
富士ゼロックス プロダクションサービス事業本部 マネージャの小原裕美氏は、プリンタで10分の仕事をするための連絡や準備に何十分もかかる現状を説明し、印刷に関する全工程をJDFでシームレスに統合して最短化するワークフロー製品FreeFlowのデモをした。顧客との窓口となる画面は、大幅にカスタマイズができて、顧客や印刷物の種類に合わせて作りこめる感じである。価格設定などはここでもランク分けができるが、個別にはJDFサーバを経由してMISの方に委ねることになる。印刷すべきファイルをアップロードして、印刷条件や面付けを設定・確認するとかする、サーバでPDF化してプリビューするなど、プリプレスの作業もデスクトップで行え、あたかもインターネットでお買い物をするように、印刷の発注ができてしまう。当然ながらリピートの印刷も簡単である。またクレオとパートナーシップで、オフセット印刷用CTPにもそのまま持っていけるようにしている。JDFワークフローが最終目的ではなく、こういったネット環境での印刷制作コラボレーションの上に、新たなビジネスの機会、ビジネスのモデルが考えられる。

2月2日の 【D1】セッションメタデータによるDTPとコンテンツ管理では、毎日新聞社 制作技術局技術センター 副部長 小野寺尚希氏と、国際新聞電気通信評議会(IPTC)所属 イースト シニアマネージャ 藤原隆弘氏から、IPTCのNewsML/AdobeXMPで使えるDTP制作作業のためのメタデータセットとして考えられているPageアセンブリメタデータセットの作業報告があった。個々のコンテンツに対して、編集側での重要度や、いつ使う予定か、どのようなセクションに載せるものか、ページの中での扱い(例えばトップニュースなど)、改版・校正の履歴、隣接記事隣接広告との関連などがメインで、いわゆる組版指示は主眼ではない。これに似たCMSは新聞社各社各様に取り組んでいるが、個別なのでコストがかかるとか、システムの変更ができない、マルチベンダー化できないなど、今日の技術革新の対応には問題があるので標準をベースにした共通化が望まれる。現在は新聞から雑誌におけるメタデータの検討のフェーズだが、一般商業印刷にも共通なものとして取り組んでいくことになるだろう。ガナー氏からは、XMPについてマーケティングマテリアルのDAMのような企業の戦略的な取り組みがされている話もあった。

ガナー氏も長期的なスパンで考えて、スタートは小さなとこからするのがよいというアドバイスしていたが、たとえ印刷制作現場の側からは標準的なメタデータセットを考えて、それを戦略的に使っていこうという考えがないにしても、以上に取り上げたメタデータをめぐるさまざまな要素がシンクロしながら前進しようとしていることからわかるように、いずれそうならざるを得ないのならば、身近なところから取り組みはじめるべきでであろう。

PAGE2005報告
その1:複合化し、新たな価値をうむ Webビジネス
その2:XMPとJDFで、印刷制作のオートメーションへ
その3:印刷か、Webか、これからのコンテンツ制作の本丸はどちらに?

2005/02/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会