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資格の取得は通過点,日々勉強し仕事の幅を広げたい

◆国分 未緒

私は現在,広告プロダクションにデザイナーとして勤めています。Illustrator,Photoshopなどのデザインソフトを使用し,Macintoshに向かう毎日です。クライアントの要望を聞き,売りたい商品を把握し,エンドユーザに訴える表現を目指して,アイデアを出し広告を作るのが主な仕事です。最終電車やタクシーになることも多く,肉体労働の職場です。
会社には300人の人数がいます。これだけ印刷と関わりの深い仕事をしていながらも,「DTPエキスパート」の資格取得者は私を含めて現在2人。資格を取得してからは,名刺にも「DTPエキスパート」と明記していますが,「DTPエキスパート」という言葉は浸透していないのかデザイナーと思われないこともしばしば。認証試験を受験する前も,資格を取得してからも「DTPエキスパート」は専門的な資格だという印象があります。

この資格を取得しようとしたきっかけは,会社の資格取得支援制度。勤務年数も5年目になり,がむしゃらにこなしていた仕事も少し余裕をもって見つめることができ,遅ればせながらスキルアップという言葉を真剣に受け止め始めていたころでした。資格って目に見えて分かりやすいスキルだなぁと調べてみると,自分が気になっていることをカバーしている資格がある!それが「DTPエキスパート認証試験」でした。

気になっていたこととは,経験で結果は分かっても,実は意味が理解できていないことが多くあり,独学でMacに向かい,DTPと関わってきたために,デザイン・レイアウトソフトを使えても,ハードを理解していない自分がいるということでした。例えばデザインと製版は以前は分業でしたが,現在はデザイナーがその役割まで担うことが多くなり,必要とされる知識も増えました。例えば,印刷の仕組みを知り,紙を知ることで,デザインの幅を拡げることができます。基礎を学ぶことは,応用の可能性を拡げることであり,自分の仕事に生かされると真摯(しんし)に感じていたからです。
DTPエキスパート認証試験は,その内容が多岐にわたることから,その資格を取ることで確実にスキルアップできると感じました。
そこで思い切って後には引けないように,人事考課のため社員に課せられている「本年度目標シート」にDTPエキスパート認証試験の受験・合格を挙げました。そこから私にとって苦しい日々が続きました。毎日仕事が終わった深夜からの受験勉強でしたので睡眠時間もあまり取れず,今思えばよく情熱が続いたものだと思います。社会人になって以来,これほど自分ががんばったと思えたことはありません。

筆記試験当日は,張り切って臨みました。しかし,新しい問題も多く出題されていたので手ごたえががっちりとあるようにも思えずに,落ち込んだ中で実技試験を迎えました。デザイナーという職業がら,実技試験のほうが気は楽でしたが,これもやはり「制作ガイド」に苦心しました。試験期間も,発表までの期間もとても長く感じ,合格したとHPで名前を見つけた時,認証証が届いた時のうれしさは,デザイナーの経験で言えば,競合プレゼンで自分のアイデアが勝った!くらいうれしいものでした。

現在,その資格をフルに生かして仕事をしている……というようなことはありません。それは自分の中での理解力として,仕事に生かされています。Macでの作業中に,これはこういう意味のある作業である,と理解することが増えました。後輩への指導もその一つ。やはり以前の私のように,知っているような,いないようなことが多い後輩へ,理解できる説明をしてあげられるようになりました。クライアントや,印刷会社の方と話す言葉も増えました。以前より自信がある自分を感じます。
資格を取得した今も,知識を削らぬように,また新たなことを覚えようと勉強の日々です。これを通過点として,もっともっと実を伴ったデザイナーとして現場で働いていきたいという希望をもっています。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2005年2月号


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2005/02/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会