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eラーニングは教育からコミュニケーションへ

2005年2月3日13:00〜15:00,PAGE2005でコンファレンスクロスメディアトラック「教育の柱となるeラーニング」が開催され,NTTラーニングシステムズ株式会社 L&D事業部 企画調査室長/NPO法人日本イ−ラーニングコンソシアム 会長 小松 秀圀氏,早稲田大学人間科学部助教授 向後千春氏,富士通 FUJITSUユニバーシティ所長 山村弘氏の3名がプレゼンテーションとパネルディスカッションを行った。以下に概要を報告する。 セッションでは,実用化へ進むeラーニングの実態について,国内外の動向を紹介するとともに,日本でも先進的な取組みを行う企業として富士通,大学としては早稲田大学の例を紹介し,eラーニングの将来を展望した。


eラーニングの動向

これまでeラーニングはコンテンツ制作や仕組み作りにコストがかかっていた。しかし,コンテンツ制作が速く,安くできるようになり,またインフラの進展により,手軽で実用的なツールになりつつある,とNTTラーニングシステムズ 小松秀圀氏は語る。eラーニングビジネス調査2004によると,5000人以上の企業では70%近くがeラーニングを導入していると報告している。これまでeラーニングといえば,IT関連や語学関連の学習が中心であったが,業務と直結した情報を学ぶケースが徐々に増加している。

eラーニングは,コストダウン,教育コースの増強など教育の身近な問題解決に利用されてきたが,普及が進むにつれ,業務支援や情報共有,社員の能力管理といった機能が注目を集めている。従来のように知識をたくさん持っている人が,知らない人に教えるという上下の関係ではなく,数多くの小さな知恵をシステムに入れて,共有・活用するという横のつながりが重視される方向に向かっているという。

小松氏は「eラーニング導入の今後のテーマは生産性の向上」とし,情報の寿命が短い今,職場内の情報共有は重要な意味を持つ,と続ける。このため,人材開発におけるLearningは教育というよりもむしろコミュニケーションに向かうと予測する。例えば,研修で学んだ知識より,それぞれの人が経験で学んだことが業務を進める上で役立つことのほうが多い。この経験や知恵を,迅速に共有すれば,業務の生産性が大きく向上すると期待されている。

大学のeラーニングの実際

早稲田大学のeスクールは,eラーニングで修了することができる通信教育課程である。授業は通学制と共通である。早稲田大学 向後千春助教授はこのeスクールの立ち上げからたずさわり,様々な試みを行っている。環境,福祉,情報の3学科があり1学年150名在籍している。2003年4月に開設し,第1期生を受け入れた。2005年度は300名の応募があり,倍率が2倍という人気であった。生徒の70%が社会人というのも大きな特長である。

運営は,教材を作る専任のスタッフや,生徒をサポートする教育コーチがたずさわる。授業は,オンデマンド授業や,Web上での教材の提供やテストを実施したり,BBSやメールによるコミュニケーションの場などももうけられている。

オンデマンド授業は,好きなときに講義の模様を撮影した映像をみることができる授業である。向後助教授はオンデマンドの授業について,教室で撮影した臨場感のある講義や,スライドを使った講義を撮影したテレビの教育番組のような講義を作ったりと,いろいろな内容を作成し,受講者の反応を調べながら効果的なオンデマンドの授業を研究している。

向後助教授は「eスクールの課題は,いかに途中で止めてしまう人の数を減らすかという点だ」と指摘する。アメリカでもeラーニングの大学が増えているが,すでにつぶれた大学もあり,そのようなところは,ドロップアウトする率が非常に高い。eラーニングは,通信教育同様に一人で勉強するものなので,孤独になりがちである。BBSやスクーリングなどの交流の場をもうけ,継続して勉強していく環境を提供することも,eラーニングには重要な要素であるという。

FUJITSU NetCampus

富士通は2002年にFUJITSUユニバーシティを設立し,ビジネスリーダの育成やプロフェッショナルの育成を目指している。FUJITSUユニバーシティにおけるeラーニング「NetCampus」は,特に社員全体のスキルアップや知識習得の強化のために活用されている。

NetCampusは世界13カ国,富士通グループ160社に提供をしている。日本は特に全社員が受講する仕組みとなっている。NetCampusの目的は,急速なビジネスの変化への対応や,世界にひろがるグループ企業の意識の一体化,コストダウンなどがあげられる。

FUJITSUユニバーシティ 所長 山村弘氏は「特に大規模一斉教育に効果がある」と強調する。富士通では情報セキュリティ講座やウィルス対策講座などは全従業員が受講を義務付けられ,修了のテストに合格するまで受講しなければならない。またISO環境の知識や輸出の法律関係も数万人単位で一斉に実施をしており,大幅な教育のスピードアップやコストダウンを実現しているという。

知識習得やスキルアップの効果がある一方で,モチベーションの向上も重要な成果のひとつだという。世界にひろがるグループ企業に対し,富士通設立の経緯をeラーニングで学んでもらうことで,企業文化や歴史への理解度が向上したという。今後の課題は,低価格で短期に開発できるコンテンツの調達や効果的なコンテンツの調達,利用の促進,ネットワーク環境の改善を挙げた。

2005/02/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会