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パブリッシングを進化させるコンテンツ管理

2005年2月4日,PAGE2005コンファレンスで開催されたクロスメディアトラックの「変わるコンテンツ管理とワークフロー」では,ジャストシステムの大野邦夫氏,国際新聞電気通信評議会/イースト 藤原隆弘氏,マイクロソフト比嘉智明氏,日本オラクル伊東学氏の4名がプレゼンテーションとパネルディスカッションを行った。セッションでは,コンテンツ管理システムの動向,NewsMLとMicrosoft製品を組み合わせたWebのコンテンツ管理システム,パブリッシングにおけるコンテンツ管理とワークフロー管理の仕組みを紹介し,スピードと効率化に欠かせないものとなっていることが確認された。


コンテンツの変遷と管理

ジャストシステムの大野邦夫氏は,コンテンツの定義と歴史を紹介するとともに,CMS(Content Management System)の動向について解説した。大野氏は,CMSののとコンテンツを複数系で表現するのは日本の特長で,英語ではコンテンツのことを通常はContentと単数で表し,Contentとは容器(Contener)に対する中身のことであると,解説した。1970年代のコンテンツはテキスト文字や画像,図形で,コンテナは冊子や書籍であった。2000年に入るとコンテナは携帯画面やデジタルTVとなり,コンテンツはcHTMLやXHTML,XMLと,大きく様変わりしている。 

デジタルデータの蓄積が進む中,コンテンツを収集,登録して統合的に管理し,更新・配信するCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の重要性の高まりを,大野氏は強調する。CMSを導入することで,企業は文書の作成からレビュー,承認,保存,廃棄までを自動化できる。また,行政においては,官庁や自治体の情報公開のシステム化や効率化に貢献する。

特に次世代コンテンツビジネスには,CMSは欠かせないと大野氏は指摘する。デジタルTVとケータイの連携や,ポイント制を活用した顧客へのプロモーション,顧客管理を匿名化して個人情報保護を行うなど,コンテンツを中心とした様々なサービスが求められているからである。

MicrosoftのCMSとNewsMLが実現する自治体ポータル

CMSとNewsMLを組み合わせたソリューションの事例について,国際新聞電気通信評議会/イースト藤原隆弘氏とマイクロソフト比嘉智明氏が紹介した。

マイクロソフトでは,Web向けのコンテンツ管理の仕組みであるMicrosoft Content Management Server 2002(以下,Microsoft CMS)と,XML文書を企業間取り引きに利用するためのサーバであるMicrosoft BizTalk Server 2004という製品を販売している。

イーストとマイクロソフトは,このMicrosoft CMS/BizTalk Serverと,NewsMLを組み合わせた,NewsML Newsサーバソリューションを共同開発した。これはMicrosoft CMSとBizTalk Serverに合わせたNewsMLモジュールを開発し,発信側の操作でニュースの追加・更新・削除が行えるWebの仕組みで,発行日,終了日,修正などコンテンツの利用規約にそった運用を自動化する。

同ソリューションは,NewsMLでの発信もできるし,自分で作ったコンテンツをNewsML化するコンバータでもある。新聞・通信社の業界で利用されているNewsML形式によるニュースの受信が可能である。例えば,地方自治体Webページに,新聞社からのニュースを自動で掲載,削除することができる。

具体的には静岡新聞社・静岡放送の事例がある。同社は,グループポータルのShizuokaOnline.com,静岡新聞社のサイト,静岡放送のサイトの3つのWebサイトを運営している事例がある。NewsMLソリューション導入により,3社の情報を管理する総合メディア局,現場担当者,共同通信など外部からの自動取組みから,適切に自動で3つのサイトへ情報配信している。

e-JAPAN計画の進展により,インターネットを介した情報公開の窓口として,官公庁・地方自治体のWebの重要性が高まっている。各所に点在している情報のデータ交換とWebサイト掲載において,NewsMLやCMSなどの仕組みの利用は今後も増えるだろう。

XMLパブリッシングを支える,コンテンツ管理プラットフォーム

日本オラクル 伊東学氏が,XPFやパブリッシングにおけるコンテンツ管理の考え方,CMSにおけるリレーショナルデータベースの導入について解説した。

オラクルが提唱するXPFの新バージョンXPF+は,ファイルオブジェクト,グループオブジェクト,フォルダオブジェクト,アーカイブオブジェクト,XMLオブジェクトという5つのコンテンツタイプに対応し,これらがすべてACL(アクセスコントロール)とバージョン管理に対応している。つまり,印刷冊子単位でグループオブジェクトごとにまとめてデータベース操作が可能になる。パブリッシングにおける台割管理やデータ入稿などの必要な機能を網羅し,DTPやWebに出力するためのクロスメディア配信の機能,データのXML化による入出力のオートメーション化などを実現する。

パブリッシングの際,作成されたデータは,ハードディスクやCD,MOなどに未整理の状態で保存されることが多い。XFP+はリレーショナルDBを利用して,コンテンツ間の関係をXMLで保持し,効率的に作業者へ送信したり,Webサイトへ変換したり,DTPとして組版する仕組みを構築できる。また,データがXMLで構造的に保存されているため,コンテンツの再利用も容易に実現する。

実際に,IT系の出版社の制作システムや,外資系保険会社にパンフレット作成システムとして導入されているという。また,DTP制作や映像制作などクリエイティブ系の人材派遣を展開するクリーク&リバー社は,XFPをベースに「any」というクリエイティブ制作管理基盤を開発し,オラクルとともにその普及に力を入れている。

2005/02/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会