本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

EMSについての誤解

ISO14001の認証取得は、EMS取り組みのひとつのきっかけである。EMSとは、「課題を確実且つ効率的に解決するための経営ツールであり、先手管理・上流管理のマネージメントにより、財政及び環境の両面で最大利益を得る」ことを目的としたものである。しかし、現実として、ISO14000の認証取得をした企業で「儲かった」という企業がどれだけあるだろうか?この問題には、EMSの利用に関する誤解が大きく関わっている。

ひとつの誤解としてマネージメントシステムの位置付けがある。EMSは品質ISOと別個に存在するものではない。ISOの文書には「環境に関する事項を全体的なマネジメントシステムに統合することは、効率化および役割の明確化と共に、環境マネジメントシステムの効果的な実施に寄与する」と書かれている。企業のマネジメントシステムは統合した方が良いということである。ISO14000では「方針」を作れと言っているが「環境方針」という名前の方針を作れとは言っていない。経営方針の内容として環境方針の要求事項が入っていれば良い。マニュアル、手順書についても、環境ISO用と品質ISO用を別々に作るのではなく、ひとつのマニュアル、手順書の中に、環境と品質のことを書いておけばよいのである。

このことは、環境経営といってもそれは本業の課題に取り組むことにほかならないということを意味している。「環境問題」というとマイナス面が強調されがちである。実際の活動でも、「紙」、「ゴミ」、「電気」の削減といった負のことしかやっていない。そのようなことは最初の意識付けには効くかもしれないが、それだけで意味のある活動を継続することはできない。
EMSでは技術的な側面からの取り組みが不足している。さまざまな無駄を省くことは必要だが、IT化を推進して紙の使用量を減らすことは環境側面である。製品のリサイクル適正設計などの課題も有益な環境側面である。

ISOに代表されるEMSを導入すると余計な仕事が増えると言われるが、それは課題を重点化せず、責任と体制を明確にせずに、きちっとした原因究明もしないでもぐら叩きを続けているからである。
ISOが意図していることの第一は、課題を重点化して取り組むことである。重要な課題とは、「環境目的および目標を特定の財政的効果と結びつけそれにより財政及び環境の両面で最大利益を与えるよう、資源が確実に利用される機会を組織的に与えるものである」、つまり利益を出すための方策である。

ISO14001の目的・目標要求事項として、「組織は組織内の関連する部門及び階層で文章化された環境目的および目標を設定し維持しなければならない」と書かれている。会社全体の共通目的を作れとは書いていない。環境目的は部門で作るものである。しかし、いろいろなことを事務局や環境担当部署、責任部署に持ち込んでしまう企業が非常に多い。環境担当部署で専門的なことが分かるはずはない。事務局は、仕組みを作り、その仕組みにのみ責任を持つものであり、運用はラインがすべきものである。

内部監査の質に問題がある企業が多い。EMSがISO14001の要求事項を満たしているか、あるいはEMS通りに運用しているかといったことは2,3年も経てば外部審査に移せばよい。質の高い内部監査とは、経営に役立っているか、本当に重要課題が上がっているか否か、という観点から監査をすることである。重箱の隅をつつくような内部監査をやっても意味は無いし嫌がられるだけである。

(「JAGAT info 2005年2月号」より)

2005/02/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会