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立ち上がってきたJDF対応製品と運用事例

現時点で実現されているJDF対応の生産設備,MISの機能はまだまだ部分であり,それをもってJDFワークフローについて判断することは早計である。JDF対応の完成形はどのようなものか,現状はどこまで実現されているかとともに実運用事例を紹介する。

大日本スクリーン製造 MT製造統括部 大屋元
印刷関連の各生産機の技術は成熟化して、例えばCTPの出力は時間あたり30版で各ベンダー横並びになってきた。

課題
納期短縮:生産機単体のパフォーマンスは限界 他に手は無いか?
工程管理情報の質:人為的なミスはなくせない?
情報の品質はシンプルに手入力を減らすこと、川上で入力したものを後工程で再入力することで情報の品質は劣化するが、JDFを利用すれば一度入力すればパラメータは継承されて情報の劣化を防げる。

解決策
(1)納期短縮:全体を最適化するためには、異なるフィールドをつなぐ部分をJDF連携して、自動化・省力化・省時間化の3つを実現したい。
(2)コスト:どこのコストがかかっているか工程はどこかを正確に知る。 正確な生産データの把握が必要であるが、今どこにコストが掛かっているか全く分からない。特に製版では多くのオペレータが多くの作業を並列に行なっていて、直しも入る。 データをJDF書き込むことで。正確な実績データをMISが受取り、どこのコストが掛かっているかを把握できる。

生産現場のデータをMISへ送信
Trueflow3というワークフローRIPにJDFを標準で受取れる(JDFリンク)。
MISが営業から受注を受けて、作業指示を書き込む(従来は工務が作業指示を入力してプリント出力していた)。これによって以前の手入力作成時間がゼロになり、トータルプロセス時間圧縮できる。

今までのTrueflowは製版オペレータに原稿袋のように渡していたが、MISからの作業指示のボタンをクリックすると、TrueflowがJDFを受取るようになる。JMFのサブミットキューエントリーのコマンドを受けて、TrueflowのJOBの自動生成する。これで省時間化になる、品質はMISで入力したパラメータをTrueflowに入力するので、再入力ミスが削減できる。

コスト分析はTrueflowからの実績データをMISに返すことで、JDF連携で正確な見積り、進捗管理、実績分析が可能になる。数値で、この仕事はこの時間でこれだけの刷版が出ました、と明確に出る。
今後の見積もりへの反映やリアルタイムで作業進行が分かる。
将来は校正の紙を何枚出力したかも分かるので、これをもとにコストダウンが可能になる。JDF連携で正確な見積もり・進捗管理・実績分析することでコストダウン方法が明確になる。

MIS−Trueflow3ーJDF連携の特徴は
自動JOB生成(MISからJDFを受け取り、自動でJOB生成)と進捗管理(Trueflow 3からMISへ作業完了報告)となり、リアルタイムの進捗管理が可能である。

これが最初のステップ
自動JOB生成はMISが出力したJDFを受取ってJOB生成する。進捗管理はTrueflow3が自動でJOB生成して、Trueflow3で作業して最終的に刷版が全部出たところで、MISに作業完了報告が戻る。MISはリアルタイムでJOBの進捗管理が可能になる。

実運用事例(国内)
(株)アーツ 従業員数 約50名 チラシ・カタログであり、オリーブ社のプリントサピエンス(MIS)から出力するJDFをTrueflow3が読み込んでJOBを自動生成している。 印刷機(リョービ)ともJDF連携を開始しているが、Trueflowから印刷機にPPFをJMFで送るのが次ステップである。
今でもPPFを印刷機のコントローラに送っているが、送ったPPFがどの刷版にヒモ付けられるか、を毎回毎回調べて取り出さないとダメであるという。
これに対してJMFでPPFをTrueflow3から印刷機に送ると、JOB-IDで自動的にPPFと刷版が結び付けられる。このような運用を、次ステップとして考えている。

経営者談:今まではMISの進捗画面はあたったが、使用していなかった。今はリアルタイムで状況が分かるので、画面を見るようになってきたという。 以前、製版はこの日まで、次は印刷という流れであったが、JDFによる進捗管理がスムーズに行くのであれば、工程を日で区切るのでなく、時間で区切ってもっとスピードアップが図れないかと、経営者は考えている。

実運用におけるSCREENが考える更なる課題
MISへの製版処理実績データの返信、進捗管理を含んで、仕様の刷版数だけでなく、実際の実績データとしのて刷版数の返信が課題である。

例えば進捗管理であれば。どのタイミングでどのように進捗を返していくかが顧客のよって違うので、どう対応するかがベンダーの課題である。

台割りデータの連携で、MISで受注段階では印刷機が大体わかって、面付けもラフに分かるのであれば、Trueflowの製版の台割り、面付け、テンプレートと、自動でヒモ付けられないのかという要望は多い。

今のTrueflowではできないが、次には台割りテンプレートのテーブルをMISで表示して、選択できるような機能を実現できないかの要望もある。

再版出力、単純再版、直しての再版、奥付直しの再版などについては、 現状のJDF仕様では、再版のジョブを設定するには工夫が必要なので、そこが課題であろう。

SCREENではTrueflownetというコンセプトで、印刷ビジネス全体の最適化を目指すDSのビジネスソリューションで、JDF/WFを使って、これだけのことが出来ると提案する。

目的は(1)生産プロセスの効率化、(2)品質の安定と向上、(3)経営の刷新、つまり実績データなどの明確なデータを返すことで、経営情報が明らかに分かること。

SCREENの関連製品:
MIS:RiteInfo、制作マネージャ;RiteFiles、PDFを扱う;RiteportalU、製版マネージャ:RiteControl、実際のワークフロー担当:Trueflow3、

Trueflownetの具体的展開は、RiteControlがMISとTrueflowの間に入って、再版処理を行ったり、印刷機や後加工機のコントローラとのMISの連携を深めていく。

MIS→Trueflow3の台割りテンプレートのヒモ付け、RiteInfoと連携して柔軟な再版の支持に対応していく。

Riteinfoから、簡単に再版指示
制作、製版、印刷、後工程トータルな管理を目指す

まとめ
JDF連携にて、停滞状況 打破!
生産現場のJDF連携は、既にスタートし、効果は出ている。
納期短縮・高品質・低コストは目の前に、これをTrueflownetにて実現へ



クレオジャパン マーケティング部 平田弘光
Networked Graphic Production(NGP)
NGPはJDFを活用するコンセプトで、JDFによって印刷の業務プロセス全域をカバーするネットワークを構築し、業務の全体最適を促進する。ビジネスワークフロー、制作業務、生産管理、プリプレス、印刷加工、在庫管理、発送などの業務をJDFを介してシームレスなネットワークによって、情報を共有していくコンセプトである。

NGPパートナーは業界を代表するベンダーのグループであり、JDFによるPlug & Playの実現を目指していて、標準的なCIP4/JDFの仕様に基づくインターフェースの開発している。新規加盟社は8ヶ月以内のパートナーベンダーとのCIP4/JDFの仕様に基づいてたインターフェースを開発することが条件になっているグループである。PAGE展を含めて各国の展示会ではパートナー間のデモを行なっている。パートナーは現時点で46社が加盟している。代表的なメンバーは、オリーブ、クォーク、クレオ、三菱製紙、コモリ、三菱重工、MANローランド、KBA、アキヤマ、リョービ、サクライ、ホリゾンなどで、海外ではMISベンダーも多く参加している。実績としては、パートナーの製品による140種類以上の接続の組合せを実現している。

クレオのNGPソリューション
PDFプリフライトのSynapse Prepare、Webポータル・オンラインプルーフのSynapse InSite、PPF・JDF出力のPrint LinkやInK PRO、プリプレスワークフローのPrinergy Evo、Brisque、Spire、Prinergyなどがある。

PrinergyはNGPソリューションのコアになるシステムで、PDFワークフローマネージメントシステムと呼んでいる。99年に発表されたが、オラクルDBによるジョブマネジメント機能を提供しているので、ページごとのステータスがDBで管理されている。また、Adobe Extremeベースのモジュラー型システムになっているので、生産の都合に合わせて構築できる。

最新のPrinergy3.0は未だ日本語化されていないが、JDFを受取ってJOBを自動的に作成する。JOBテンプレートを使って、色々な設定をプリセットする。プリプレスセットの中で、自動化のプロセスをアイコン配置によってプログラミングできる(RuleBase Automation)。さまざまなPrinergyのワークフローサーバーで起こるさまざまなイベントとアクションをつないで、色々な自動化のプロセスを作れる。例えばページが面付けテンプレートにアサインされた、全部揃った。そしてこれらを顧客が承認しOKされた版を自動的に出力させるようなことを設定できる。

Synapse Prepare
PDF/Xワークフローに対応した外部のクリエータなどへのデスクトップツールで、Webサーバーと連携して、WebでPrinergyのJOBホルダーに転送させる仕組みが簡単に設定できる。Enfocusのプリフライトエンジン搭載していて、PDFをプリフライトするための設定ファイルは印刷会社で作ってWebサーバーへの設定を行なっておくと、外部のクリエータのDTP用パソコンにWeb経由で印刷会社の新しいPDFのプロファイルを自動的に読み込ませることができる。これによって、印刷会社の条件に合わせたPDFプリフライトが行なえ、チェック後のPDFは自動的にPrinergyにアップロードするという仕組みのInSiteとシームレスに連携できる。

Synapse InSite
Webポータル・サーバーで、クライアントをDTP工程にリンクするWebポータルとなる。これは全体効率を上げられる「Webプロダクション」を構築する仕組みである。Prinergyなどと一体化して動くもので、ワークフローのジョブフォルダをSSLを介してインターネットに接続する。クライアントや協力会社とのシームレスなネットワーク化による、データの入出稿・リモート校正環境や、また次世代のプルーフ環境であるSmartReview・InSiteColorを提供する。

UpFront & Preps
UpFrontは工程管理という位置づけで、MISから発行されたJDFの粗い情報を参照し、自社の印刷機や後加工機のデータベースを参照して、最適な折丁面付けテンプレートを設計していくツールである。今まで営業や工務などのベテランが持っている経験やスキルをデータベース化しておいて、簡単に工程が作成できるようになる。

Prepsは面付けソフトでJDF入力に対応しており、MISから粗情報の初期のJDFを受けて、折り情報などを参照し、既に作成してあるテンプレートで使える候補を上げてくれるなどのテンプレート設計機能を持つ。また、面付け配置情報のJDF出力に対応している。

ジョブインテントによるプランニング
オプションモジュールであるが、基本的にはJFMを使ってMISと連携する。DBを搭載していて、最適な面付けプランを設計し、MIS(ハイフレックス),製版,後加工へプロダクトインテントを出力する。同じ作業でも顧客の要望で変更したので、お金の請求が必要なものを追加請求するステータスをMISに転送する。

Synapse Link
JMFを介してプリプレスとビジネスをダイナミックにリンクする。ジョブ作成から詳細な実績情報をフィードバックするので、JDF対応のMISがなくても、実績データをテキストとしてMS Officeに渡して集計を取ることも可能である。

運用事例1
米国シカゴのジョーンズ・バーン社は商業印刷会社で、2002年9月にコモリとプリントカフェ(現在はEFI)のよるCIM化を行なった。FM(スカタット)印刷、UVインラインコーターつきなども設備していて、ワークフローはInSiteとハーゲンMISで、ネットワーク経由で客がPDF(プリフライト済み)を作成して送稿してくる。全ての生産ラインはハーゲンMISに接続されて、ビジネスと生産プロセスの統合を行なっている。プリプレス工程はインターネットも含めて接続している。

運用事例2
米国バーモント州の Lane Press(レーン・プレス)社は 創業100年の出版印刷で、270種類の出版印刷をしている。2004年にはNGPの3社、Creo、MAN、Hiflexが協力しJDFを導入した。

NGPのビジネスモデルにもある、Webベースの生産ラインがあり、InSiteサーバーやPrepareを活用して、入稿に5つのレベル設定をしてあり、色校正(ハードプルーフ)を提供するレベルから、PDFプレートレディのようにリモートで客からデータを受けるレベルまである設定していて、レベルによって料金設定を変えている。
PDFプレートレディのレベルではネット経由でPDFデータを印刷会社のサーバーにアップロードしてもらい、そのままPrinergyでPDF生成して自動的に出力するということを行なっている

またアセットマネージメントでは、コンテンツデータ管理のを受託や、客のサーバーも立ち上げている。
また、出版物のクーポンを付けて、カスタマデータベースの作成を支援したり、プロダクト・ミックス(メディアミックス)として、出版物のPDFデータをWeb上で販売したり、コンテンツの作成が良いに行なえるようにテンプレートを提供するなどで活用している。



日本アグフア・ゲバルト グラフィックシステム事業部 東條好光
印刷会社の将来像として、クライアントを最優先した生産システム、印刷工程の全体最適化を「グラフィックエンタープライズ」という同心円を使った絵でコンセプトを説明している。外側に円は顧客からコンテンツ・プリプレス・印刷・後加工・配送・顧客に至る円で、内側の円はMIS、中間の円は工程管理を表しており、PDF、PJTF、JDF、JMFなどの及ぶ範囲が示されている。

:Apogee
中核となるワークフローRIPで、最初に発表されたのはJDFが発表されたのと同じ2000年である。今年提供される最新バージョンは3.0であり、JDF/JMFへの完全に対応したものとなる。JDFを受け取り、自動ジョブセットアップと処理を実行する。プロダクションプランは自動的に作成し、JMFによりリアルタイムに各種ステータス(ログ情報)として、開始/停止、 プレート出力枚数、プルーフ処理数、改訂履歴などを更新する。また、各種面付けソフトからJDF書き出しされたレイアウト情報をサポートする。

遠隔地でのプレート出力も制御でき、複数の印刷機器を所有している印刷会社では、遠隔地へTIFF又はPDFファイルを配信や安定したプレート出力、折工程を考慮し、最終変更にも対応できるなど、複数サイトに同じ設備(ワークフロー)を投資する必要は無いくなる。

:Delano
Webベースのプロジェクトマネージメントシステムであり、仕事のスケジュール管理、工程管理、製造情報を受取ってMISに戻す、そして印刷会社が進捗状況をWebで顧客に提供する仕組みも持っている。 印刷発注者と印刷バイヤーを繋ぐインタラクティブなプラットフォームでもあり、オープンな業界標準フォーマット(PDF,JDF,XML)を搭載していて、JDF準拠のデジタルジョブでプロダクションワークフローを起動する。

ユーザー運用事例
Wyndeham Heron社は英国エセックス州モールドン市にあり、従業員500人、 週刊誌33誌、月刊誌250誌、カタログ、デイレクトリ他を受注。「PrintWeek」誌からは2002年度、2003年度の一般雑誌部門の'Printer of the Year'を受賞している。 雑誌平均ページ数:100頁、通し枚数:12,000から1,500,000部、ワークフローシステムは:ApogeeXなど、ワークフロー・マネジメントシステムとして:Delanoを2003年10月よりテスト導入している。導入前の工務部門は仕事量の増加に連日残業し、納期の短縮とは逆行して増える不完全データの入稿、直前の直し、時にはPDFファイル全ての作り直し等でクライアントから常に拘束されていた。結果として納期の遅延、コミュニケーション不足によるクライアントと社員との間の信頼関係が崩れかけていた。

JDF導入後は、:Delanoがジョブ内容、納期に問題がある場合には事前に警告を発生、: Delanoを経由してWebでクライアントから仕事の全様が見えるので、問合せで仕事が中断されることがなくなった。Delanoがプレフライトチェックをして問題のファイルを受取った時には、自動的にそのメッセージをクライアントに送るので、プレプレス要員を70人から21人に大幅に削減できたという。



ハイデルベルグ・ジャパン 本田雄也

現状、MISは日本ではオリーブ社「プリントサピエンス」と、PAGE2005で初登場のトスバックシステムズ社「ひだりうちわ」とも接続している。 工程順に見ると、面付け:シグナステーション、PDFワークフローRIP:プリントレディ、印刷機のコントローラ:プリネクトCP2000センター、折り機・中綴じ機コントローラ:FCS100、またコンピュカットの断裁機の情報という流れになっている。現在、実績情報はJDFで、生産機器のプリセット情報は未だPPFを使っている。 プリントサピエンス(MIS)からはJDFを「作業指示書」という名称で発行する。はじめに面付け設計に用紙の情報などをJDFとしてシグナステーションに転送するが、面付け・折り・断裁・トンボ・カラーバーなどの詳細情報はシグナステーションで入力する。

次にはそれがJDFとなって、PDFワークフローに行くが、MISからも受注情報が、面付けワークフローからもJDFが来るので、ここでJDFを合体する。自動面付けがRIP処理されるが、出力前に一旦止めるようにしている。印刷機もジョブ情報は転送されているが、実際のインキ・用紙の情報はシグナステーション経由でプリントレディに転送されが情報が、さらにPPFにして印刷機コントローラのCP2000センターに転送されるている。

用紙サイズは印刷機のフィーダーが自動的に変わる最新機種になっている。 プストプレスについても、帯、中綴、断裁に関しての情報も表示するし、実績数字も入る。やはり指示はJDF、設定はPPFになっている。

接続上の課題がある。現在は生産機のコントローラとMISが1:1で接続している。これではMIS担当者は各工程ごとにJDFを指示する必要があったり、実績のJFMデータがが色々な生産機器からMISに集まってくることになり、システム的にもネットワーク的にも、ワークフロー的にも問題が起こりやすい。 これに対応する仕組みとして「プリネクトデータコントローラ」をMISと生産機コントローラの中間に入れて、必要なデータだけを振り分けるようにする。

さらにその次の計画である「プリネクトワークフローインテグレータ」では、スケジューラ・トラッキング・レポーティングなどの進捗管理にかなり近づいた機能になっているだろう。 また「プリネクト・コクピット」では、画面上にアイコンとそれを入れた箱とつないで、プリプレス−プレスーポストプレスのワークフローが設定できるようになっている。

(文責:JAGAT  PAGE2005コンファレンスE-2セッションより)

2005/02/11 00:00:00


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