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ユーザフレンドリーな広告戦略の提案

インターネットの利用方法は,以前なら必要な情報を探している人が積極的に検索して,アクセスしていた。これからは,眺めているだけでサイトのほうから面白い情報をアピールしてくることも十分考えられる。インターネット利用者の中には,もはやテレビの視聴者と同じように常時接続の「ながら族」が増えている。
株式会社イー・ビジョンは,常時接続時代におけるプッシュ型の動画広告を中心に各種ツールを提供している。代表取締役の酒谷信佳氏に同社の事業展開を伺った。

ブラウザセーバーOOPSによる自動広告配信
イー・ビジョン(東京・文京区)は,ブロードバンド時代のWeb,電子カタログ製作などを提供するベンチャー企業である。
代表の酒谷氏は大学卒業後,大手コンピュータベンダーでクライアントサーバの研究開発を行っていたが,2000年12月に同社を設立した。
設立当初は受託のシステム開発がメインであったが,2001年ごろからパッケージのASPサービスを事業の中心に切り変えていった。
酒谷氏は,ブロードバンドが普及する前からWebの常時接続時代を予見し,「ながら族」が増えていくとライフスタイルそのものが変化していき,そこにビジネスチャンスが生まれるのではないかと考えていた。
2002年には,自動広告配信システムのブラウザセーバーOOPS(ウープス,びっくりの意)の開発提供を行った。PCの作業を中断しているとスクリーンセーバーが立ち上がるように,対象のサイトを表示している状態でPCに触れないでいると,閲覧しているページが自動的に広告画面を表示するというものである。
スクリーンセーバーがモニタ画面全体を使用するのに対して,ブラウザセーバーはブラウザ内全体が広告になる。
ブラウザウインドウ全面にFlash動画を流すので,バナー広告と違い,何もしなくてもテレビのスポットCMによく似た15秒間広告が自動配信される。最初はびっくりするが,動画をクリックすることでクライアントサイトに接続が可能で,商品情報提供につながるというものである。
OOPS CMを見るためにブラウザ以外の特別なソフトウエアは必要ない。仮にFlash Playerがインストールされていない場合は,GIFやJPEGの画像を表示する。

Push Channelがサイトをシンプルに変える
サイト内の情報量が増えてくると,企業側が見てほしい情報とユーザ側が見たい情報がかみ合わないケースが生じてくる。情報が多過ぎて伝えきれないと,ユーザはサイトから立ち去ってしまう。そこでプッシュ型でお勧め情報やダイジェストなど訴求したい情報を提示していくことも必要であろう。
同社のPush Channelはまさにそれらを解決するものである。簡単に言えば,複雑化しているサイトをシンプルにする自動生成動画システムである。
テキストデータと画像ファイルからFlashで作られたチラシを生成してPush配信するシステムである。データベース利用により,テキストや画像の設定をすれば,自動的に動く動画のアニメーションのようなものを生成することができる。
Push Channelを使って,リッチコンテンツもノーコストで製作できる。データの取り組み部分以外は,既存システムとは完全に独立して動作するし,ASPなので回線の心配もいらない。電子カタログや電子チラシを配信することができる。チラシ内容はいつでも簡単に変更可能である。商品データベースと連動して,トップページで常時商品画像と価格を紹介していくことができる。本日の特売など,訴求したい情報をWebの前面に押し出していくことが可能である。

「ライブコムシステム」で顔の見える対応
最近同社が力を入れているのが,Flashを利用した最先端「ライブコムシステム」である。eラーニングツールなどへのカスタマイズも可能なASPパッケージで,応用例として,企業向けインターネットテレビ受け付けシステムがある。
「これまでのように使い方を勉強しないといけないものではありません。機器を購入したり,専用の端末やドライバなども必要なし。PCにWebカメラをつなぐだけでできます」
インターネットでの問い合わせには,Eメールで受け付けているケースが多い。しかし,商品購入をしたがメールの返事がなかなかこないとか,そもそも自分の出したメールが届いているのか,などで不安になる。Eメールではどうしてもレスポンスがワンテンポ遅れてしまうので,人によってはストレスになったり,リアルタイムで返事が欲しい場合などには不向きである。
電子カタログに申し込みや問い合わせを埋め込んでおいて,テレビ受け付けシステムが立ち上がる。相手の顔が見えるインパクトは相当なもので,コールセンターからのニーズが出てきている。問い合わせる側は,自分の顔を出して双方向のコミュニケーションを取ることもできるし,音声だけ相手に伝えることもできる。
営業時間以外の場合など,相手がいない時には電話と同じように留守録機能を完備しているので,映像・音声・テキストでメッセージを残せる。
このシステムはさまざまなシーンでの利用が可能で,カメラを設置すれば,工事現場における進捗管理状況把握などにも利用できる。また応用パターンとして社内のテレビ会議などもできる。
インパクトも強くて,ニーズが増えてきているので,今後の抱負としてもっと広くアピールしていきたいという。

パートナーシップでさらなる躍進を
酒谷氏によれば,今後情報収集は,プッシュ型情報で無意識的に蓄積されるか,またはダイジェストを得てからプル型情報で詳細を収集するというスタイルに変わっていくのではないかという。また成功しているホームページは徹底的にユーザビリティを追求している。
流通業界がターゲットの一つになりそうだが,酒谷氏が以前スーパーなどに営業をした時によく言われたのが,「紙媒体をなくせない」という答えだった。確かに販売担当者からすれば,新聞の折り込み広告を外すことはできない相談と言えるだろう。紙媒体を減らしてまでWebで代行するのはいかにも危険な賭けだという。となれば,紙プラスαでWebやCDでのチラシ配信なら考えられるということだろう。コストの問題にしても紙媒体とWeb媒体の併用を推進し,顧客に提案できるのは,やはり印刷会社だけなのかもしれない。同社では今後,印刷会社とパートナーシップを組んで提案することも視野に入れていく考えだ。
一番の悩みは営業力が弱いことだという。開発主体のベンチャーで,酒谷氏自身も技術者で,営業の専門職がいない。今後は代理店になってもらえる企業を増やしていきたい。

JAGAT info 2005年2月号より

2005/03/04 00:00:00


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