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印刷のサービス展開をネットワーク上に考える

印刷制作プロセスがデジタル化したなら、次は「印刷のeビジネス化だ」とか、「ネット上に仕事を移すことで新たな価値が出る」という話をPAGE98あたりからしてきたが、当時それがなんのことだかピンときた人はほとんどいなかった。しかしPAGE2005ではそのようなことをずっと指向していたところが、新たなビジネスとして姿を現してきた例をいくつも見受けるような段階になっている。

デジタル化の先にこのようなことができるという話しはいっぱいあるのだが、それが役には立っても利益を産まないという話を聞く。しかし技術を開発して提供する側からすると役に立てば十分で、それらをどう組み合わせるとどこから利益を引き出せるかというのを考えるのが経営側の問題ではないかと言い返すだろう。つまり新たな技術でどんなビジネスを考え出すのか、というところに話の焦点をもっていかないと噛み合わない。

紙面データがデジタルになるとアセッツ管理(DAM)やコンテンツ管理が可能になるとか、JDFでリアルタイムに生産情報の共有ができるという、このこと自体の価値ではなく、これらの上にどのような価値あるサービスを展開できるのかという議論が必要になる。XMLも、XMLを使った何々ML等も、DAMも、印刷のeビジネスを発展させる土台であり、その要素の一つひとつである。冒頭のように印刷eビジネスが見えだしている時代なので、そこから要素技術を吟味するように視点を取り替えるべきだ。

例えば印刷のリピートオーダーをする場合に、必要量や納期をどうしようかと考えるわけだが、発注者が自分のパソコンからネットワーク経由で発注履歴を調べたり、明日の社内会議用は100部だけオンデマンドで刷ってどこどこに届けてもらって、販社への説明会用1000部はオフセットで週明けに納品してもらおうと考えて、例え夜中でも画面で自分で設定しておけばそのようになるシステムが考えられる。

オンデマンドとオフセットの価格/納期は自動でシミュレーションとかスケジューリングできるようにしておけば、品質との見合いでどちらにどういう配分で振り分けるかは発注者の判断にゆだねられる。こうなるには在版管理やJDFというのが印刷会社の社内にできていなければならないし、また印刷会社の営業がeビジネス化していなければならない。

当然ながら単にシステムが備わっていればよいということではなく、こういった利便性を提供できることを通して、発注者側からは、印刷の品質/価格/納期のメニューが豊富で優れていることが理解されて、サービスの優れた印刷会社であると評価されるようになることがゴールである。サービスの向上という点でITによって実現できることは大変多くあるのだから、制作プロセスの整備を「出費」と考えるのではなく、サービス向上の「投資」として考えるようにすべきだろう。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 229号より

2005/02/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会