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全体最適化実現の手段と取り組み方

Page2005のMIS/JDFトラックの総括セッションでは、全体最適化実現の手段、取り組み方がひとつのテーマになった。それは、全体最適化について、JDFを前提としてどのようなことが考えられるか、どのようなことをすべきかという話しはいろいろ出てきているが、逆に、全体最適化実現には、JDF、MIS、あるいはそれらを使った生産設備の自動化以外の手段はないのか、また、それらを取り込むとしても、その前にしなければならないことがあるのではないか?ということである。

ひとつの意見は、生産工程について、JDF、MIS云々の前に工場全体を見回して無駄を見つけそれを排除することが、全体最適化の現実的なやり方ではないか?というものである。また、そのことは、JDF、MIS、あるいはそれらを使った生産設備の自動化による全体最適化の第1歩にもなるのではないか?という意見である。
MIS/JDFトラックの他のセッションで紹介されたドイツにおけるJDF導入の成功事例の場合、その会社の工場にはもともと仕掛品を置く場所も倉庫もなかったという。この例の場合には、そのような状況があったからこそJDFワークフローの導入効果が上がったのではないか、というのが上記の意見からの視点である。

印刷物生産における工程管理はバッファの塊で成り立っている。仕事をある工程に入れたときに、実際に掛かる作業時間の如何に関わらず、工程日程として2日あるいは3日を設定して生産計画を立てて作業を進めていた。これは、実は巨大なバッファをうまく使って工程管理をしてきたことに他ならないが、その一方で、各工程で仕掛品をいっぱい作っていたということである。しかし、現在では、夜に入ってきた仕事でも翌日には出さなければならないという状況になってきた。その対応策を考えてみると、JDFを使った仕組みを導入しなくても、目に見えている無駄あるいは工程間に溜まっているものをなんとか減らす努力をすれば、全体のスループット改善という意味での全体最適化は実現できるだろう。

全体最適化を、ITを活用して行なうとすれば間違いなく情報システムを使うことになるが、その場合には何らかの標準化やルール作りが不可欠である。標準としては、工程内の標準、各企業として標準、業界横断の標準がある。
従来、プリプレスや業務のワークフローを開発するとき、全く標準がない中でさまざまなシステムを繋ぐことは非常に大変なことであった。拠り所となる標準があれば開発効率は非常に良くなっていたはずである。したがって、業界横断標準としてJDFというツールを使っていく方が良さそうだということは間違いない。
しかし、自社でJDF対応システムを開発することは非常に大変である。JDFとのインターフェースを作ることはデータ連携の仕組みを作ることであり、例えば既存のMISとのインターフェースを開発する工数、あるいは以降のメンテの負荷は非常に大きくなるだろう。そのような意味で、ITを活用して全体最適化を図る場合には、MISのパッケージソフト導入で対応できればその方が有利だろう。

その場合には、パッケージソフトが自社に合うか否かが問題となる。印刷業の場合、規模が大きいほど自社開発をした基幹系システムを持っているケースが多いが、今後、パッケージソフト利用に転換するならば、業務プロセスの標準化を進めていかなければならない。ただし、個別受注生産をしている印刷業の場合は、標準化といってもひとつの標準では済まない。雑誌と書籍あるいはポスター、チラシではフローが異なるし新刊と再版でも異なる。デジタル入稿は増えてきているものの従来ながらのポジ入稿もある。
したがって、いろいろなパターンを洗出して、それぞれについて本来どのような流し方が良いのかを自社なりに整理することが、全体最適化のためのIT活用の前段として必要になる。

業界横断的な標準については、100点満点のものが出てくるのを待っていても無駄である。例えば、ジャパンカラーについては、賛否両論いろいろな意見があるものの、CMSを使ってカラープリンターで校正を出すためのひとつの拠り所になっていることは間違いない。100点満点ではないが、ある種のものが出てきてそれをもとに議論が行なわれ、見直しも行なわれていくというのが標準化の道筋である。ITを活用して全体最適化を図る場合にはこのような認識を持って取り組むことも重要である。

2005/03/09 00:00:00


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