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マーケティング情報の収集

チラシやカタログなどの販促用印刷物のデジタル化が進められている。このデジタル化とは,単に印刷物の代わりにWebに電子チラシを載せるとか,CDで電子カタログを配るということ以上に,販促のためのマーケティング情報をどう収集するかというポイントも含まれる。

印刷会社が,印刷物ではないデジタル化を受注する時に,このマーケティング情報をどう収集するかも含めて提案することが今後重要になってくる。通信&メディア研究会で行った,販促物のデジタル化に伴うマーケティング支援のセミナーから,マーケティング情報収集の工夫について紹介する。また電子カタログ・電子チラシに対する一般顧客の意識調査についても紹介する。

販売店用の販促ツールから情報収集

住宅産業などでは,販売する仕組みとして,販売を担当する販社があり,さらにその下に工務店などがぶら下がっている構造になっている。このような仕組みで末端までいくと何千,何万という販売担当者がいるという構造になる。しかも,顧客に提案をしたり,チラシを作ったりする部分は末端の工務店などがばらばらに行うことになる。
このような構造をもつ住宅産業などへの提案では,販促のためのチラシや提案書を作成するための素材集といった電子カタログが考えられる。しかも作成するのが工務店ならば,だれでも簡単に作れる仕組みも必要になる。

今回紹介されたソリューションは,このチラシや提案書を簡単に作れるよう,素材やテンプレートをデータベースにして,カット&ペーストだけで,チラシや提案書が作成できる電子カタログのCDを配るというソリューションである。パソコンに入れて,チラシや提案書が簡単に作れる仕組みを素材データベース機能と合わせて提供している。
ここでのポイントは,利用したチラシや提案書を取り置き,さらに反応のあった顧客のデータを管理できる仕組みも組み込むことである。販社や工務店が利用した情報を吸い上げれば,マーケティング情報として利用できるようになる。顧客の反応が把握できるなど,次の商品開発やまたほかの地域へのキャンペーンに利用できるなどが考えられる。

このように,ただ電子カタログを作るのではなく,電子カタログを素材集として利用することで販促用の資料や印刷物を作ることができる。さらには,顧客情報や反応などを蓄えて集めれば市場の情報になるという仕組みである。
また販社などの営業担当者は,どこでどのようなキャンペーンを行ったかや,どのようなチラシやパンフレットを作成したかなどの情報をお互いに交換をしていない。そのためそのつど検討して行っている現状がある。これをグループウエア的に,作成したチラシやパンフレット,提案書などが自動で管理されれば,ほかの地区やほかの担当者の利用したものを再利用するなど,販促業務の効率を上げることができる。そのため,自動でサーバにアップするような仕組みを組み込むことで,グループウエア的な利用も可能になる。

これらは,ただの電子カタログの応用の範囲として実現が可能な機能である。このように販促用に作る電子カタログからどのように販促情報を集めて次に商品開発やキャンペーンなどにつなげていくかが,販促支援のソリューション提案として考えていくことができる。

eBook利用によるアクセス情報の収集

Webにアップされている電子カタログの中で,最近増えているeBook利用の電子カタログでは,従来のWebでは得られないマーケティング情報を集める仕組みが可能になってきている。これは印刷物のイメージのままWeb上に載せて拡大・縮小が行え,ぱらぱらめくるイメージで見せるソリューションが多い。デジタルカタログとかデジタルチラシと言われるもので,このソリューションの特徴はかなり細かなアクセスレポートを生成できる点が従来のWebとは大きな違いとなっている。
今回紹介のあったTrueEBOOKのアクセスレポートは,かなり細かいことが分かるようになっている。アクセスが多い日と少ない日というのがある。当然アクセスの多い時間帯も分かる。さらにその中で滞留時間も分かり,また拡大・縮小を行ったページも分かるというアクセスレポートができる。このため,どのページが多く見られてしかも拡大され,滞留時間がどのくらいかが取れる。今までのWebのログでは取れない情報を取れるのが特徴になる。

通販カタログのようなページ数の多いものでも,どのページが多く読まれているかとか,どのくらいの時間そこにいるかなどが分かるので,販促情報として利用することが可能になる。
またリンクしているものを何件クリックされたかが分かるような仕組みもある。例えばECサイトの場合,どの商品がどのくらい購買につながっているのかということを測定することが可能になってきた。このように,詳細分析を盛り込むことで,紙やWebのように今まで単純に広告の媒体として提供したものに対して,その結果がどうだったかまでサポートして提出することができる。これらは広告主にとって喜ばれるサービスとなっているそうだ。

eBookの意識調査から見たユーザニーズ

このeBookのソリューションを行っているセブンネットでは,「デジタルチラシ・カタログに関しての意識調査」を2004年11月に実施した(全国,10代から60代の男女を対象としたインターネット調査,サンプル数368)。
インターネットでチラシが公開されていれば見たいか,見たくないかという設問に対して,ぜひ見たい,もしくは機会があれば見てみたいが約80%であった。特に,ぜひ見たいという回答は女性が43.4%と,男性より女性のほうがニーズが多いということがこの調査結果で出てきている。

なぜインターネットでチラシを見たいかという設問では,「新聞を取っていないので,インターネットでチラシ情報が取得できるであれば見たい」が16.7%であった。「自宅近辺と他のエリアにある店舗と価格比較ができるので見てみたい」が63.2%とトップで,次いで「自宅で取っている新聞以外の朝刊に折り込まれているチラシ情報も見てみたい」が55.6%であった。「好きなエリアのチラシ情報を取得できるのであれば見たい」や「興味のある業種があるので多少遠方でももっと広いエリアのチラシ情報が欲しい」というニーズも25%を超えた。

見たいチラシの業種では,スーパー,ショッピングセンター,ホームセンター,家電など,どちらかと言うと生活に密着した情報を求めている。
希望する情報の受け取り方は,「エリアやカテゴリー一覧で見られるサイトがあれば閲覧する」が59.0%と最も多く,「各店舗のホームページに自らアクセスして閲覧する」が43.1%,「電子メールで知らせて欲しい」が33.7%であった。

電子ブックを見た感想は,ホームページより分かりやすい,商品の良さが伝わってくるという回答が多い。紙でデザインされたままを見せているのでこのような回答が多いのか。
見てみたいカタログのジャンルでは,1番がカタログショッピング,2番が旅行カタログ,3番・4番が地域のチラシ広告,地域のフリーペーパーとなっている。比較的,地域に関しての情報ニーズが多い回答結果となった。
このようなアンケート結果とアクセスログを組み合わせることで,顧客の意識動向をつかむことも可能になる。(通信&メディア研究会)

出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2005年3月号

2005/03/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会