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CTP時代の品質管理

 本格的な普及期を迎えたCTP運用によるワークフローにおいて,データの相違点を判別するデジタルデータ検査システムやデータの堅牢性など,印刷物製作全体における品質管理の考え方について,メディアテクノロジージャパンの原 正久氏にお話を伺った。

従来工程とCTPの違い

 従来工程では,いったんフィルム出しをして殖版機に掛けており,フィルムをライトテーブル上に置いて目で検版し,ノセになっている,毛抜きになっている,スミノセが問題ないかなどを確認することを行っていた。
 CTPになると,フィルムを使わないことがメリットで,合理化された分,短納期になり品質も上がった。ただ検版の部分は,フィルムで現物を出して検版していた時のほうがより丁寧にできていた面もある。それをデジタルでどう解決していかなければならないのか,かなり悩んでいるところが多いのではないだろうか。
 簡略化された部分は,版面設計,見当合わせが良くなる,ゴミ消しが不要になるという品質面でかなり向上していると言えるが,ヒューマンエラーは減らすことはできない。

品質管理上の阻害要因

 CTPにおいて各工程別にどのような問題が発生しているのかを見ると,制作では,完全なデータがこなくて困っている。例えば入力ミスや,先方支給データの不備などまともなデータがない。製版処理の部分では,スミノセにしなければならない,裁ち幅までデータがなければならないなど,さまざまな問題がある。そういうものを加工しなければ,次の工程に渡せない。
 校正に関しては,一番の問題はカラーマネジメントである。また,面付けの向きが変わることなどで校正ではなかったモアレが発生することがある。

何が品質管理を難しくしているのか

@コンテンツのハンドリング
 画像はスキャナから入ってくるのが当たり前であったが,デジタルカメラからRGBデータが入ってくるようになり,画像に関してはかなり変わった。また,OCFフォント,CIDフォント,OpenTypeフォントと,さまざまな種類が出てきた。さらに,Windowsのアプリケーションが一般的になり,MicrosoftのOffice系のソフトがそのまま印刷の原稿に使われるようになった。

Aオペレータのスキルに格差
 前述のコンテンツに対して,オペレータが的確に対応できるかといったところにも難しい面が出てくるのではないだろうか。スキルの差が品質管理を難しくしている。面付けソフトが別途あった場合,その操作をミスしてしまうと思わぬヒューマンエラーが発生してしまう。

Bカラーマネジメント
 デジタルカメラ画像,Windowsデータが代表格であるが,RGBをどうハンドリングするかというところが難しい。最近言われているのは,ヘキサクロームやハイファイカラーなどの特色データを含む形で高付加価値印刷にトライする場合のカラーマネジメントがあると,また複雑になってうまくいかない。いろいろな種類のDDCPを使用しているが,どれも色が今一つということもある。

C本格DDCPの導入・利用が困難
 DDCP設備導入や利用時のコストが掛かる。ランニングコスト,イニシャルコストが掛かるので,これらを導入できないところに難しさがあるのかもしれない。

DRIP処理結果
 RIPがいつも100%の答を出さない。コンテンツとの兼ね合いもあり,次々と新しいソフトが出てくる。その度に,RIPというのは接続テスト,評価テストをして通る,通らないという話になってくる。このように,いたちごっこのようなことをしている中で,何とか事故がないように使っていくことになる。このような品質管理の上での柱になっている部分をクリアできるようにしたい。

デジタル検版システム「ProofEyeMe」

 ProofEyeMeとは,デジタルデータ検版ソフトで,パッケージ商品になっている。TrueflowというワークフローRIPと同時に購入してもらうケースが多い。顧客には,100%の仕事をProofEyeMeに掛けるという企業もある。
 デジタル検版ソフトの特徴として,目視による見落とし,判断ミスを解消する,欠陥データのフィルム・CTP出力を未然に防ぐといった点がある。Windows2000/XPに対応し,自動検版機能を標準搭載している。また,RIP済みデジタルデータで比較検版する。RIPする前のデータでいくら比較しても意味がない。RIPを使って,その結果がどうなっているのか検証し,それが確実に事故を防止することにつながる。

 フィルムに出力する場合はセッタを使用するが,その代わりにインクジェットのプリンタをProofEyeMeと接続し,そこで検版した結果が出てくる形である。人間がするのではなく,機械が自動的に行うものである。
 検版システム導入ユーザの動機は,まず,印刷事故の未然防止がある。また,ISOで品質管理にきちんと取り組んでいる姿勢を顧客に見せることがある。あるいは,システム導入による合理化・効率化があり,自社に検版しているベテランがいなくなったため,セッタ出力時のヤレフィルムを減らしたいといったことが,検版システム導入の動機になっている。

 例えば,RIPして初校のTIFFと再校のTIFFが集まれば,それを比較して検版結果をモニタに表示したり,あるいはプリンタに出したり,TIFFやJPEGファイルとして書き出したり,ファイルの取り出しもできる。ファイルの取り出しをすることで,クライアントに比較検版した結果を,ここが直っていないというように,JPEGをメール添付で送ったりすることもできる。
 初校の読み込み,再校の読み込み,検版実行という作業の流れになり,初校,再校のデータ以外に,増減データや差分を枠で表示する。
 表示の仕方は,画素単位で比較し,増減分が,比較して濃度が下がったところは赤,上がったところは緑に表示される。同じところは半調で表示する。
 ただし,自動検版に関してはファイルネームが重要になる。従って,自動検版の対応の有無は,RIPのバージョンを確認する必要がある。

品質管理のための提言

 まず,作業ルートを多く作らないことである。OS,アプリケーション,フォント環境を統一する。当たり前のようであるが,Macによって全然環境が違う会社もあるのであえて提言する。
 また,制作環境でフォントエンベッドのPDFを作成して製版に渡す。この考え方は,ある出版会社でこれから実行しようとしている。例えば制作はIllustratorやInDesignで作り,結果をPDFにして渡す中間ファイル運用ということである。それを一つの事例として,今後いろいろなところで紹介できるようになるだろう。また,一つの仕事に対して異なるRIP,プルーフを使わない。製版から刷版に渡す中間ファイルを決める。
 また,任せられるものはすべて機械やソフトにやらせる。人にやらせるからミスが出るので,ヒューマンエラーをなくすためにソフトを使おうというものである。検版ソフトもあるし,ワークフローRIPを使う方法もある。確かに導入コストは高いが,一本化して安定した運用を考えてもよいのではないだろうか。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2005/03/26 00:00:00


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