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郵政事業の現状と今後

ポスタルフォーラム2005基調講演の中から,2月2日に行われた日本郵政公社総裁・生田正治氏の講演内容を紹介する。なお,講演では公社の現状,経営課題,事業改革の進展状況,ダイレクトマーケティング,民営化についてお話しがあったが,今回はこの中で印刷業界と関係が深いダイレクトマーケティングに焦点を絞り紹介する。


郵政事業の現状と今後

日本郵政公社 総裁 生田正治氏

ダイレクトマーケティング

市場拡大や活性化という視点でダイレクトマーケティングを考えてみたい。ダイレクトマーケティングは,消費行動を効率的に刺激することにより市場そのものを拡大し,経済を活性化することに役立つ手法であると考えている。
平成15年度の総引き受け郵便数は255億8663万通で,対前年比2.3%の減少である。他方,広告郵便と冊子小包では単純に加算すると45億8420万通と過去最高の通数になっている。対前年比で4.3%増である。広告郵便と冊子小包の主な用途はダイレクトメールとカタログであり,その総数はさらに増加する傾向にある。

しかし総広告費に占めるダイレクトメールの比率は平成15年にはまだ5.9%である。この比率は欧米に比べると非常に低い。米国ではダイレクトメールの通数は,915億通,年間1人当たり329通受け取る計算になる(2001年)。日本は44通で米国の1/7.5という状況にあり,まだ国内のDMは伸びる状況にあると考えている。

米国との比較

成熟した資本主義社会のパターンからみると日本はまだ後進性が残っており,DMの状況は個人金融資産に占める株や投資信託の普及状況と似ている。米国ではTVコマーシャルよりDMにお金をかけている。多くの企業は不特定多数をターゲットにしてマスマーケティングを行うことに比重をかけるよりも,有力な顧客層に狙いを付け長期的に囲い込むためにダイレクトマーケティング手法を取り入れている。

米国の歴史を振り返ってみると,1950年から1980年当時はマスマーケティングが主流であった。マス広告と大量生産が消費者の実質所得を大幅に増加させていた。しかし生活にゆとりが出て,充足感が得られた後では,必需品以外を買い求める,また購入品に個性,独創性を求める,個人としての接点を求めてくるように消費形態が変化してきた。

1960年にレスター・ワンダーマン氏がダイレクトマーケティング手法を提示したが,このような個性化の時代を背景にダイレクトマーケティング手法が発達してきた。
米国のダイレクトマーケティング協会(DMA)の調査によると,ダイレクトマーケティング市場は22兆円であり,このうちDMは約5兆円規模とのことである。米国ではダイレクトマーケティングは巨大産業であり,その中でDMの占める割合も高い。

一方,日本は米国と比較し,国土が狭く,所得格差も小さく,単一民族,集団主義的であり,不特定多数に同一メッセージが到達するマス広告が少なくとも今日までは有効に機能して来た。しかしながら近年は少子高齢化による人口減少,消費者の好みの多様化等によりマス広告で認知度を高めるだけでは購買行動まで結びつけるのは困難な状況になっている。マスメディアで広告を打てば売れる時代は過ぎ去ったと考える必要があろう。
米国同様,マス広告だけでは対応できない時代が到来しつつある。マーケティングの視点は作る側から買う側へとシフトしている。これは真っ向サービスと同じく,常に顧客の視点で考えることにつながる。いかに顧客に満足していただき,長期的に利用していただくか,ということが鍵である。

DMのチャンス

DM活性化のチャンスもここにあると考えている。このDMの活性化はDMだけの活性化ではなく,市場,経済そのものの活性化につながることになる。どの商売でも利益の90%はリピーターから得られていると言われている。このリピータに焦点を当てる手段としてダイレクトマーケティングの手法を伝える必要があろう。
郵政公社にはダイレクトマーケティングの企画や提案営業を行う専門スタッフが既にいるが,これを増強して各業界で高いポテンシャルをもつ企業に対して戦略的な提案をしていくことを考えている。皆様と役割分担をし,私共はプロモータとしての役割を果たしたいと考えている。今回リニューアルしたDM Factoryもご参照していただければ幸いである。

(詳細については「JAGAT Info5月号」に掲載予定)

2005/03/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会