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最近の環境問題対応の業界動向

過去1年ほどの一般紙に見る印刷に関わる環境関連の報道は、件数が少なくなると共に一時期紙面を賑わせた再生紙、大豆油インキ等の記事はほとんど見なくなった。それだけ当たり前のものになったということであろう。

日印産連が行なった調査によると、顧客企業の指示・要求と印刷企業の環境関連提案・アピール度において、再生紙の利用と大豆油インキの使用は両者ともに第1位、第2位を占めていた。顧客にしてみれば、グリーン購入法等の法律に規定され一般にも認知しやすい環境対応行動であり、印刷会社側としてもそれ相応の負担で済むからであろう。環境負荷が少なく一般にアピールもしやすい印刷物製品として、再生紙を利用したり金具や鉄製のツインリングを使用しない綴じを採用したエコカレンダーがある。それらのシェアは40%〜50%になっているという(「印刷エコビジネスのすすめ」樋口宗治氏著、印刷出版研究所発行)が、再生紙や大豆油インキの使用を含めて、グリーン購入に取り組んでいる規模の大きな企業・事業所や行政機関等では採用するところは既に採用済みになって、印刷側の差別化アピール効果も薄れてきているのではないだろうか。このような中で水なし平版に目を向ける企業も増えると考えられる。

環境問題への取り組みでは、やはり環境対応製品の開発が継続していかないと、プラスマイナスの収支面では苦しい。しかし、再生利用が容易な材料として他の原材料から紙に転換させていくものとして、書き損じのハガキや工場から出るくずを利用した緩衝材、木や金具を使わず紙だけで作った家具の開発販売あるいは選挙用ポスターに合成に代わって表面を樹脂加工して耐水性、耐光性を強化した紙が出されたといった記事があった程度である。パッケージ関係では、包装容器リサイクル法に関連して個別の開発テーマがいろいろあるように思われるが一般印刷では難しいようだ。

グリーン購入ネットワークによる意識調査によれば、グリーン購入に関わる印刷関連の取り組みは用紙関連で40%、印刷サービスへの取り組みは20%と低い。これを上記のような製品のさらなる拡大余地と見ることが出来るか否かは微妙である。同様のことは、小規模の事業所・行政機関への普及についても言えるだろう。

2005年2月8日にグリーン購入法の基本方針の一部変更が閣議決定された。印刷関連では、特定調達品目として「紙類」においてOCR用紙が削除された。「印刷(役務)においては「古紙再生の阻害要因となる次ぎに掲げる材料等が使用されていないこと」として、「フォーム印刷に用いる場合又はハイブリッドUVインキを除くUVインキ」、「点字印刷に用いる場合を除く発泡インキ」、「レンチュキュラーレンズを使った立体印刷物」、「芳香剤,香水,口紅等の芳香付録品」が明記された。高付加価値化、差別化策として特殊印刷・加工を使いたい企業にとってマイナスになる要因も入っている。

印刷分野における環境負荷の問題で大きいのはやはりグラビア印刷である。ハードルが高い問題だが、水性化への努力は少しづつ実を結んできて、2年後に水溶性インキによる印刷への全面転換を目指す食品包装用フィルム、コンビニエンスストアーの弁当用成形トレー印刷会社もある。

製紙関係では、京都議定書の発行を視野に入れてニ酸化炭素の排出抑制のための固形化燃料(RPF)利用が進んでいる。石炭、原油の値上がりもその動きを加速しているようだ。ただし、従来の枠組みでは限界にきているとも言われ、キノコ菌を使ったリグニン除去技術や再生可能な天然資源の有効活用による省エネ技術なども開発されつつある。製紙業界に限らず、オイルショックを契機に省エネを促進して体質を強化したようなことになって欲しいものである。
廃棄物処理では、ヤマト運輸が宅配便の使用済み伝票の全量リサイクルを始めるが、個人情報保護からの観点も絡めた動きのようだ。

(「JAGAT info 2005年3月号」より)

2005/03/22 00:00:00


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