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PDFワークフローにおけるJDFの価値

Adobe Systems JDF Sr.Product Manager Jess Walker

JDFとXMP、あるいはそのベースになるXMLもAdobeが力を入れてきた内容だが、JDFとXMPの2つのコンセプトはお互いに共通点がある。JDFとXMPともに、デスクトップレベルの情報と最終工程であるプリントサービスプロバイダとの間の情報交換、あるいはよりハイレベルな情報のやりとりを可能にすることが狙いになっている。XMPのほうは、ドキュメントあるいはファイルの中の要素としてのドキュメント、写真等、異なったいろいろな種類の情報をお互いに結びつけてやりとりできるようにすることが狙いである。JDFのほうは、ドキュメントやファイルを実際に処理して、最終的にはオフセットやデジタル印刷の形で印刷できるような、プロセスを狙いとしている。

XMP担当とJDF担当では別の領域で作業しているように見えるかもしれないが、XMP関係の担当者もカメラ関係や出版関係の人と頻繁にやりとりして作業を進めている。それに対して、JDFのほうは主として出版関係のプロセスを対象としており、プリントサービスのプロバイダや、印刷機器を提供している会社、例えば富士ゼロックスや大日本スクリーンと共同作業することによって、デスクトップレベルの情報をいかにプリントサービスプロバイダに展開するか、そのプロセスを重点的に扱っている。

印刷会社とカスタマーの力関係を見ると、明らかにカスタマー側に主導権が移ってきている。カスタマーもいろいろなメディアに注目しており、印刷製品以外に電子媒体やバリアブルプリントの2つの技術が、従来型、いわゆるオフセット印刷に拮抗するような、あるいはそれを浸食するような作用を及ぼしている。現在の環境では、出力先がレーザープリンタを使うのか、オフセット印刷機にかけるのかということが事前には見通せないような状況になっている。

リードタイムもどんどん短くなっているので、ファイルの様式や出力の形式をあまり固定して可能性を絞らないような柔軟な対応が必要になっている。同時に、利ざやが非常に狭まった結果、ファイルの操作やファイル作成に非常に高いスキルを持っていた従業員や作業者がだんだん手薄になってきて、人件費の問題と併せて問題になっている。

Adobeとしては、リードタイムがどんどん短くなるということと、付加価値サービスをどんどん提供できるような新しいツールが必要と感じるようになった。それは、従来型の印刷のプロセスを維持あるいは可能にした状態で、新しい付加価値を生み出せるものでなければならない。JDFは、このような全体的な環境を踏まえた形で登場したもので、ニーズとしては、プロセス全体をクリエイティブなサイドから最終的な印刷の制作に至るまで、全体をコントロールするというものである。

印刷側からのアプローチ

現時点ではJDFをツールとしてどういう形で活用できるか。Adobeとしては、JDFの活用はまずプリントサービスプロバイダ(印刷受注)側で導入が始まるものと考えている。プリントサービスプロバイダがまずJDFの方式に馴染んで、それを活用してOEMのツールベンダーから導入したツールと組み合わせる形で普及に努めることになるだろう。
プリントサービスプロバイダがJDFの使い方に慣れたり、Acrobat7を使ってプロセスの管理に習熟するようになると、それをもとにカスタマーの啓蒙活動に入るのではないか。それは、新しいテクノロジーの普及の形態としては非常に自然で、現在ある普及の仕方とよく似ている。

印刷会社には生産に関する知識とノウハウがあるので、まずそこから新しいテクノロジーの導入が始まって、それが上流工程のクリエイターたちに影響を及ぼしていくという構図になるだろう。そういった新しいテクノロジーが普及すると、印刷会社とクリエイターやカスタマーとの情報のやりとりに新しい道や可能性が開けることになる。
まず、プリントサービスプロバイダや印刷会社は、カスタマーから電話を受けて、そこでいろいろな要望事項を受け取る。電話の内容は、例えば紙の伝票や、受注処理としてMISに取り込んだ形で展開されるが、現時点ではプリントサービスプロバイダや印刷会社の社内、組織内に留まったフローになっている。
それに対して、JDFを使うことにより、プリントサービスプロバイダはジョブチケットを発行することができるので、Acrobatの環境の中でその情報を横断的に流すことができるようになる。

現在では、カスタマーとのいろいろなやりとりのときに、eメールで確認を取っていることが多い。例えば見積やその確認を行っている。そういった現在のワークフローも継続的に成立するが、それに加えてJDFをベースにしたワークフローも活用されるようになると考えている。eメールを通じた見積に関するやりとりは今後も続くが、それにJDFファイルを添付することによって、カスタマーがJDFファイルを開いて内容を確認することができるようになる。
具体的なスペックが決まると、ページ数とかカラーをどのように使うのかということが具体化してくる。その中で新しいワークフローを使うと、プリフライト機能が入っているので、事前に確認した形でジョブをファイルに展開して後工程に流すことができるようになる。

新しいJDFを使ったワークフローでは、単に情報をフィルタリングしたりプリフライトするだけではなく、スペックに関する追加情報や、ジョブのスケジュールやワークグループに関する情報を添付することが可能になる。そういったジョブチケットという形でJDFファイルが添付されると、カスタマーは添付されたファイルを開けば連絡先の情報等も常時参照できるので、非常に安心である。
こういったカスタマーとのやりとりを入れると、カスタマーにもジョブの提出、進行に対して、ある程度責任を持ってもらうことが必要になる。プリントサービスプロバイダは、カスタマーとより密な形でJDFのファイルを通じて確認できるので、効率も上がるし、カスタマーが指定したとおり、期待したとおりの印刷ができ上がれば、それによってカスタマーの信頼も上がるという好循環になる。

2005年2月2日PAGE2005「A2 編集・制作はどこまで効率化できるか」より(文責編集)

2005/03/19 00:00:00


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