去る2月2日〜4日に開催されたポスタルフォーラム2005コンファレンスでは,『Break Through』,『ビジネスに効く!』のテーマのもと,合計47のビジネスに直結したセッションを用意した。
今回は,40年にわたってダイレクトマーケティングの実務に携ってきたダイレクトマーケティング戦略ラボ・中澤功氏の「ダイレクトマーケティングの今日的意味」と題する講演内容を紹介する。
この15年間で,ビジネスでの成功の基準軸が大きく変わってきた。かつては,マスマーケティングによる大量生産,大量販売すなわち,「企業本位・製品中心」の考え方であった。ところが,企業も工業生産技術が平準化し,消費者がどの企業の物を買うかを選択するようになってきた。さらに,市場のボーダーレス化で国内のみならず国際的に自由競争できる環境になった。よって企業の生存競争が厳しくなり,「市場本位・顧客中心」に考えないと企業の成功がおぼつかなくなった。
こうして,企業本位・製品中心(PRODUCT-OUT)から,市場本位・顧客中心(MARKET-IN)へと発想転換の必要があった。
マスマーケティングは市場が不特定であるのに対し,ダイレクトマーケティングは,市場で接触のあった人々を顕在化しデータベース化しダイアログ(対話)を展開し,その結果としてどのような商品が受け入れられるか,市場・顧客の意向に沿った形で商品が決定される。コミュニケーションがインタラクティブ,流通もコミュニケーションと連動する。すなわち,データベースを軸としてコミュニケーションと流通がつながっているのである。
顧客創造と情報化によって,顧客と個別に対応しITを駆使して関係を深めていくといったビジネス戦略が主流化した。データベースを構築し,ITを駆使するという二つの流れは,ダイレクトマーケティングの原理・システムの適用に他ならない。これは,あらゆる業種・業態の企業にとって必要になってきた。これを,自称「マクロダイレクトマーケティング」と名づけている。ダイレクトマーケティングの原理・システムこそ今の時代のビジネスを牽引するものと思う。
市場・目的・チャネル
マスとダイレクトは対称的だと今まで言われてきたが,今日的なマーケティングの考え方では,マスとダイレクトの間に境界線を引かない。マスマーケティングでもダイレクトマーケティングでも市場は一つしかない。マーケティングの目的は,マスマーケティングで成功するとかダイレクトマーケティングで成功するとかではなく,マクロに見なければならない。チャネルに関しては,流通とコミュニケーションの両方をマルチチャネルにする必要がある。流通,コミュニケーション(メディア)についてポイントを挙げる。
<流通インテグレーション>
マルチチャネル小売,リレーションシップマーケティング,エージェントシステム,ダイレクトピックアップの4つのポイントがある。
マルチチャネル小売
店舗・カタログ・オンラインの複合と相互乗り入れで,クリック&モルタルと言われているものである。米国企業では,LLビーンズ,エディバウワーなど,通販会社から店を作ったところが多々ある。日本では,ファンケルがマルチチャネル小売をしている。大事なのは,チャネルにかかわらず扱う商品が共通であることである。そして,顧客が自分の都合に合わせてチャネルを選ぶことができ,チャネル間の相互乗り入れができることがポイントである。
リレーションシップマーケティング
マスマーケティングの店舗販売にダイレクトマーケティングのデータベースマーケティング手法を取り入れ,マスではできないことを補完している方法である。最終的にその企業のファンになってくれる顧客を獲得・維持することが非常に大事である。アメリカでは,消耗品のメーカーでは大手はほとんど取り組んでいるが,日本ではネスレが取り組んでいる。トゥギャザーネスレという会員組織があり,店舗に来て買ってくれる顧客を会員化し,会員に特典を提供し,事業全体の結果を上げるために反映させているという,日本のメーカーのリレーションシップマーケティングの例としてはお手本的な方法をとっている。
エージェントシステム
一般的に,小売店を通販と対抗する立場に位置づけているが,アスクルでは新規取引開拓のために各地域の小売店に動いてもらい,獲得したものがアスクルのデータベースに登録され,通販カタログの送付,受注,商品宅配,代金請求を全てデータベースに基づいて行うが,代金請求は注文を獲得した店の名前で行う。開拓した店についてはマージンが落ちるしくみになっている。小売店と通販は競合するのではなく,合体してお互い生きてくる。エージェントシステムは,今後のダイレクトマーケティングの大きな方向ではないか。
ダイレクトピックアップ
ダイレクトオーダーとセルフサービスの組み合わせ。コンビニエンスストアをダイレクトオーダーと組み合わせて物流部分を合理化する方法をとっているのが,セブンアンドワイ。流通の新しい形である。代金決済・商品引渡しは,郵便局でもできるだろう。
<メディアフォーメーション>
単なるメディアミックスではない。広告によってイメージを形成するということで今日のマーケティングの目的が達成されるとは,もはや誰も思わない。販売だけでなく,情報を獲得し利益に結びつけ,顧客満足させ,長期維持するところまでが今日のマクロダイレクトマーケティングの目的でもあり,ビジネスの目的だろう。それを最大に達成するには1つのメディアではなく,複数のメディアのそれぞれの役割を持たせて連動させて初めて目的を達成する。
リンク
関心次元の接触関係を別のメディアのより深い認識・理解,受注,販売に着地させる。
マスメディアからウェブに着地させる方法はあるが,マスメディアでは多くの情報を伝えられないのでウェブに着地させるよりテレマーケティングの方がいい。テレマーケティングは受け入れるだけでなく情報獲得という意味で重要である。また,顧客満足を形成するのに大事である。機械的なウェブより人が対応する電話の方がいい。
リード&コンバージョン
一つのメディアで,市場から見込み客を顕在化するには,1ステップだけでできるが,十分果たすことができない場合が多い。まず,見込み客を顕在化し,他メディアで「顧客」に転換していく。一度獲得したものは,データベース化することも不可欠である。
フォローアップ
同じタイプのメディアや異なるメディアを使って反復訴求すること。
ダイレクトメールで先行してダイレクトメールでフォローする方法としては,最初は封書,あとはフォローアップポストカード(FPC)という手法がある。これは,どのような商品でも効果があがるので,お勧めである。
サポート
各メディアの役割を設定しメディアを使うタイミングを合わせて,コンテンツも一貫性を持たせて相関させる形で使う。レスポンスの集中を支援促進するのをサポートメディアといい,レスポンスを発生させるメディアをレスポンスメディアという。
サポートメディアとしてのダイレクトメールは,FPCとは対称的に,最初はがきで予告し,あとで封書を送ってサポートするアドバンスポストカード(APC)は高いレスポンスを得る。
インターネットが万能かのように言われている時代だからこそ,ダイレクトメールでフォロー,アドバンス,リンクし,リアルなコミュニケーションが有効に作用する。
顧客リレーションシップ形成
今日的なダイレクトマーケティングは,販売だけで終わらない。顧客とのリレーションシップを形成するところまでいって目的が達成される。キーワードは,フルフィルメント,顧客情報,報奨プログラム,AIDAS(注目・関心・欲求・行動・満足)の法則である。
企業のビジネスの長期的安定成長のための戦略は,マスマーケティングとダイレクトマーケティングの原理を相互補完的にリンクして市場からレスポンスを発生させ,受発信の双方向コミュニケーション性を持つ1to1メディアを通じて,販売・販促目的および関係形成・強化目的でのインタラクションを継続・反復することである。
そして,取引・関係継続における顧客の満足を実現,ロイヤルティを形成,ブランドへの定着をはかることが最終ゴールである。
2005/03/24 00:00:00