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POSデータと顧客データのドッキング

いま,小売店でPOSの導入は当たり前のようになっているが,顧客別POSデータと顧客の買い物行動は必ずしも一様ではない。ポスタルフォーラム2005コンファレンスでは,データベースマーケティングの第一人者である(株)ジェリコ・コンサルティング・代表取締役社長・荒川圭基氏が,「POSデータと顧客データのドッキングからわかったこと」と題し,スーパーマーケットの顧客の実態をつかむために作った19のタイポロジー(顧客類型)とタイポロジー別のマーケティングについて講演した。その内容を紹介する。

誰にターゲット,フォーカスするか

DMを出したり製品企画をする上で,いかにターゲッティングするかが大事である。しかも,年代,性別だけでのターゲッティングは甘い。もっと心理学的なターゲッティングをし,それぞれにあったメッセージを真剣に考えなければならない。

スーパーマーケットの顧客の中には,毎月25万円を3年続けて購入する人もいれば,1ヶ月38円購入するだけの顧客もいる。スーパーマーケットの顧客の実態をつかむため,3600万購買明細データからデータマイニングと集合演算というツールを使ってセグメントし,19のタイポロジーに集約し,それぞれ名前をつけた。ここから,誰に何をすればいいかが見えてくる。以下,良く購入する順に,類型化した。

19のタイポロジー

第1類型:マーチャント
月25万円も買っている人は,飲食店などの業者で,スーパーに仕入れに来る人である。ほぼ毎日来店し,低価格商品を購入する。夕方は材料を加工しなければならないので,11時から4時までが勝負である。
こういう人たちに何をすればいいのか。まず,朝市などして安くすればいい。ある業者向けの売り方をしているスーパーでは,もやし10個入りの袋を作っている。そうすればレシートも1行ですむ。しかし,それに気づいているスーパーがあまりない。きゅうりをバラで売ったりにんじんを3本で売ったり,みんな同じ売り方である。地域のスーパーなら,もっと顧客の顔を知って,ターゲッティングしてそれにあった売り場作り,チラシ作りをしなければ駄目である。

第2類型:カンパニーキーパー
病院・自営業の賄いさん。うどん20個などまとめ買いしていく。30個同じデザートを買っていったりもする。よって,30個詰めのデザートを作っておくと簡単に売れる。そうすれば,いつ来店して買っているかもデータから一目瞭然である。
ほぼ毎日来店し,日曜日は来ない。スーパーの売り上げトップの客に必ず入ってくる。このタイプの顧客は,低価格で品質にこだわているので,そうしたプレゼンをしなければならない。自分で給仕しているプロなので,プロ向きの省時間レシピを提案するなどすればいい。

第3類型:フルハウスキーパー
大家族,3世代家族など。売れるものは食品全般。食卓にのる家族団らんは,データでみると平均月に2回。あとは,焼きそばなど簡単なものが多い。チラシであれば,こうしたホットプレートメニューの食材訴求がある。
小売業の場合,売り上げを上げようと思えば先駆けが最大テーマである。うなぎは3月から始める。土用の日では遅い。マヨネーズは3月になると花見の時期で,普段の1.3倍になる。ピークより先に仕掛けることが大事。遅くなれば,どのスーパーにも置いてあるので価格競争になる。
大家族は,日曜日は来店しない。主婦なのでウィークデーの4時から5時の来店が圧倒的に多い。日曜日にこの人たちをターゲットにチラシを打つのは間違っている。

第4類型:キッチンプロ
食にこだわりのある専業主婦。低価格より品質を重視する。どこよりも安いというのは通じない。こういう人たちは,100円均一,88円,77円という安さで仕掛けると他の店に移っていってしまう。こういう人たちにはDMを出すのがいい。ROI(投資回収率)がいくらかが重要。DMなら客数を出し何人来店でいくら買ったかがわかるのでROIが算出できる。
ここまでの4類型までは上位10%に入る顧客である。

第5類型:タバコ&ドリンカー
たばこ,酒だけをまとめて買いにくる男性。たとえば,月1回の来店で25万円分のビール券を買っている人がいる。この人たちには,たばこ,酒関連(おつまみ商材強化)アイテムの販売,酒グレードアップを意識すること。

第6類型:コミュニティフレンド
従業員・商店街隣近所,隣人。昼食食材(惣菜・弁当・おにぎり・パン)を買って食べる。基本的に毎日買うが,休日は買わない。月1万円いくかいかないかの購入。
弁当のそばにデザート用のバナナを半分に切ったものを置いておくと完売したケースがある。これは関連陳列というプレゼンテーションである。近隣顧客の顔,名前を覚えたら対話をしながらアンケート調査する。そうすれば,自店の問題が何かも見えてくる。この人たちには,「おまけ」商品をつけると動員力がある。

第7類型:テキパキー(奥薗先生)
働く中年主婦・多忙・節約。プロ的な買い方をしているので,乾物(春雨,麩,干し椎茸,小麦粉,小豆,昆布,鰹節)をよく買う。時々,花,日用品,家庭用品の購入をする傾向がある。

第8類型:ディンクス(DINKS)
子供がいない夫婦二人生活。日曜日の昼〜2時,3時来店傾向,二重所得(財布2個)。ウィークデーは節約し,日曜日に買いだめしたものを簡単に調理する。1x2という購入パターンをとるので,ヨーグルトなども2個パックにして並べればいい。あるスーパーでは,全て野菜も2個ずつパックで置いている。ここは,顧客のことをよく知っている。

第9類型:ベビーストレス
客が少ない日10時に来店する人。子育て家族。ベビーカーで閑散時間に来店。広い通路を確保するのが原則で,買いやすい売り場(手が届く),混雑時間安全確保,買い物援助(サポート)がポイント。

第10類型:ウィークエンドバイヤー
特定曜日来店,30代,40代中心。特売初日来店傾向。1週間の買い物まとめ買いして冷凍庫に入れる。チルドフード派,チルドドリンク派,デリカ派である。

第11類型:フリークエントバイヤー
ほぼ毎日来店の高齢者。365日来ている。1回あたりは1000円以下と少ない。小パックにすると購入しやすい。デリカ,果物小パック提供を徹底するのがいい。

第12類型:シングルレディ
独身貴族女性,お勤め30代女性,CMでやっているようなもの,会社で話題になっているものを欲しがる傾向。日曜日に来店するので,日曜日のチラシにはここをターゲットにしたものを載せる。サンデーコーナーを作ることも提案したい。

第13類型:ランチモチベーター
店の近隣に勤務するOLがランチだけ買いに来る。味がよくなければ他の店にいってしまう。日替わり弁当,食後デザートを提案したい。

第14類型:ヌードルショッパー
繰り返し消費。車には金を使うが食事には使わないといった人。主食がうどん,そば,時々卵。1食分のめんつゆ,低価格めんつゆアイテム関連を陳列したい。

第15類型:ドロップショッパー
気分消費主婦(常連ではない)。月に1回立ち寄って買っていく。1回の買い物単価は高いが,月1度しかこないというような買い方。距離が遠い顧客が多い。ここでしか買えない商品(低価格)を研究したい。

第16類型:チラシストーカー
特売常連。100円均一市に来店する。こういった人は,ロイヤルカスタマーではない。中心顧客ではない認識を徹底すること。

第17類型:ブルースカイ
朝市,夕市常連。買いだめをして,通常来店傾向なし。

第18類型:ワークマン
道路,ビル工事関係者。500円が上限。昼と深夜に来店する。昼時間は弁当商材を陳列。店頭弁当販売も検討したい。

第19類型:ユース&カレッジ
高校生,専門学校,短大生,大学生。お菓子,スナック,即席ラーメン,チャーハンの素,シャンプー,髭剃りなど日用品や雑貨購入。学生カード(特典は通常カードと同一)を発行し,しかもカードデザインが勝負。

顧客主導マーケティングシステム体系

今,スーパーならPOSが分析のためのデータである。通販会社ならテレマーケティングのデータを打ち込んで誰が何を買っているかが全部データ化されている。このカスタマーデータベースをもとに分析してDMやパンフレット,資料を送ることをフルフィルメントという。
タッチポイントは,電話,FAX,インターネット,人対人,DMのメディアミックス。一つの手段でなくターゲット別に,例えば上位10%の顧客にはDMを出したり,上位100人には電話するなど手段を変えることが大事。そして,心理まで読んでターゲットを決めて絞り込み,重点的に販促を行うことだ。

2005/03/27 00:00:00


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