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「次世代型ネット戦略」を提案

最近カタログやチラシのWeb配信ツールが増えており,印刷物の2次利用方法としては定着したと言ってもいいだろう。しかし,問題は導入に掛かる費用や制作運営の負荷なのかもしれない。
イージェーワークスは,リッチメディアを利用した映像配信を中心に各種サービスを提供している。執行役員Web開発事業部長の樋口悟氏と同事業部営業企画部の大城亜紀彦氏に同社の事業展開を伺った。

クライアントニーズに合った運用フローの提供
イージェーワークス(神奈川県横浜市・代表酒井茂彦氏)は,オリジナルブランドのインターネットプロバイダー「ejnet(イージェーネット)」の運営を基盤としたITカンパニーとして2000年4月に設立された。
親会社である株式会社ピーシーデポコーポレーションは,パソコン・IT関連機器販売専門店「PC DEPOT(PCデポ)」の運営を行っており,全国チェーン50店舗以上の事業展開をしている。ネットショッピングも充実しており,売り上げも多く優良サイトとしても知られている。その関係もあり,Webのデザイン,制作やシステム構築の事業展開を行っており,コンサルティングからシステムインテグレーションまでこなしている。
同社のクライアントは,流通・小売系の企業が多いが,単にWebデザインをするだけではない。Webに関する戦略立案から企画,設計,デザイン,開発といったシステム構築を行い,サイトの運用,プロモーションといったワンストップのWebマーケティングソリューションを提供している。
必要なことはクライアントニーズに合った運用フローを提供することである。同社の開発ポリシーは,システムありきではなく「お客様からのご要望を解決していくことで製品化していく」ことである。

インタラクティブ性重視の映像配信ツール
同社のソリューションの中からいくつか紹介したい。いずれもインタラクティブ性を重視するスタンスで製品化されている。
「ActiMotion」は,同社が独自の技術により開発した,Macromedia Flashベースの映像配信ソリューションである。専用サーバが不要でネット配信のコストを大幅に削減することができる。閲覧するユーザにとっても面倒な設定なしで映像が見られる。自社商品ラインナップとして企業サイト内の商品映像を配信したり,ポータルサイト内でのバナー広告としても利用できる。
「MultiMotion」は,「ActiMotion」の派生モデルである。複数の映像をマルチビジョン型,マルチチャンネル型などのレイアウトで目的ごとに自由にデザインすることができる。縦軸映像と横軸映像によるマトリクス型商品紹介など,企業ニーズによって見せ方をカスマイズできる。他社との差別化を図る企業サイトを構築するのに便利であろう。またイントラネット内映像アーカイブとしても社内で活用できる。
「Motion Lock」は,Web上で配信された映像をユーザが再生する際に,著作権を保護するソリューションである。Macromedia Flash Playerでの映像を視聴する際に,ユーザはWeb上からFlashのファイルをダウンロードして再生を行うために,知らないうちに肖像権や著作権を侵害してしまう恐れがある。「Motion Lock」では,ローカルにダウンロードしたデータやキャッシュのデータを再生しようとすると映像自体にブラックアウトや警告を表示し,視聴ができなくなるため,データの転用や2次加工が防げる。また不正にデータをダウンロードして再生を行うと,再生されたユーザの情報を管理者にメールで連絡を行うという機能も付加できる。
「MotionSaver」は,常時接続のユーザを対象として,スクリーンセーバーをインタフェイスとして使った動画配信プラットフォームである。ユーザが一度ダウンロードするとそのスクリーンセーバーへ配信者側から自由に映像を送り込むことが可能になる。CMやビデオクリップ,商品説明などさまざまな映像コンテンツが自動配信される。

「ADViewer」を利用したPC DEPOTのチラシ
最近同社が力を入れているのが,Flashを利用したパブリッシングツール「ADViewer」である。印刷物と同じものをWebで閲覧しようとすると,今まではPDFなどのフォーマットで配信されるケースが多かった。しかし,閲覧する際にアプリケーションが立ち上がるまでの時間がストレスになる。また,Javaアプレットなどを利用したアプリケーションを構築しようとすると,Macintoshに対応をしていなかったり,構築に膨大なコストが掛かったりしていた。Flashベースの「ADViewer」なら,後からの変更も容易で自由度も高い。従来のツールよりも圧倒的に早いスピードと広い汎用性を実現している。導入・維持費用の問題から,印刷物のWeb配信に踏み切れなかった中小企業でも容易に推進できるモデルとなっている。
主な特長として,(1)独自プラグインのインストールが不要,(2)データの独自ファイル変換の必要がないため低コスト,(3)自由な設計,カスタマイズが可能,(4)独自のノウハウでデータの軽量,鮮明化を実現,(5)Webからの印刷機能,(6)独自サーバ・アプリケーションが不要などが挙げられる。
PC DEPOTは新聞による折り込み広告が大切な販促ツールだが,新聞を定期購読しない人が増えているため広く訴求ができないという悩みがあった。市場開拓の面から,Webサイトを閲覧しているユーザに対するアプローチを模索している中で,エンドユーザからもWebによる新着カタログ配信の要望が強く寄せられていた。
そこで,PC DEPOTでは「ADViewer」を利用して,毎週新着のチラシをWeb上でも配信するサービスを開始した。新聞の折り込み広告とは違う対象層にも配信することが可能となった。時間設定もできることから,毎週金曜日の夜中12時に新しいチラシに切り替わる設定にしている。
「ADViewer」の活用方法としては,IR情報の公開,オンライン書籍などにも効果的である。

顧客のIT戦略をバックアップ
さまざまなソリューションを提供している同社の強みをまとめてみると,多数の企業のWeb構築やソリューション提供の実績,オリジナルブランドのISP運営によるノウハウの蓄積,親会社ピーシーデポコーポレーションのバリュー,などが挙げられる。
顧客企業のビジネスモデルに応じた形で,今後もますます貢献したい。そのためにはビジネスモデルの共同開発ができる企業,マーケティングやセールスパートナーの企業と戦略的提携を図りたいと考えている。
「ADViewer」などは,印刷会社からの問い合わせも多い。印刷会社の顧客に対し,印刷物とWeb制作をパッケージとして提供し,顧客のIT戦略をバックアップする次世代型ネット戦略を展開していきたいという。

JAGAT info 2005年3月号より

2005/03/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会