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系統立てて学習し知識の定着を促す

◆清水 真紀子

DTPを始めて8年。現在の印刷会社に移って2年経ちます。今でこそ製版からデザイン,オペレーションまでの作業をこなせますが,ここまで来るのに苦労の連続でした。

記者志望だった私が,デザインに興味をもったきっかけは,大学の新聞部に入ったことでした。そこでレイアウトの面白さを知り,デザイン職への就職を希望。しかし当時は就職超氷河期,専攻も違うため,泣く泣く別の職種に就いたのです。
2年後『Macでポスター,本,チラシを作る仕事を天職に!』というMacの学校の広告を見つけ,「これならできるかも!」と深く考えずに入学・転職を決意。卒業後は運良く知人の紹介でデザイン事務所に入ることも決まり,自分では「デザイナー」気取りでした。

自信が打ち砕かれたのはデザイン事務所での初日のこと。先輩の仕事を手伝うことになり「カラーと写植の指定して」とカンプとカラフルな本,下敷きのような物を渡されたのですが,使い方が分かりません。カラーチャートと級数表を知らなかったのです。
通っていた学校は3週間でIllustrator,Photoshop,QuarkXPressの操作を教えるだけのカリキュラムで,印刷・デザインの基礎を教える余裕はありません。3週間ではMac操作もおぼつかなく,先輩にあきれられたことを今でも思い出します。恥ずかしさと悔しさで,その日のうちにDTP・デザインの本を買い込みました。その際初めてDTPエキスパートの資格を知り,いつか取得したいと思ったのを覚えています。独学の上,進んで仕事を手伝わせてもらい,基礎を身に着けるまでに1年掛かりました。

その後チラシ作成を主業務とする印刷会社のオペレータを経て,現在の会社へ移りました。製版・写真分解・オペレート・デザインが完全分業制だった前の会社と違い,現在の会社ではすべてをこなさなくてはなりません。が入社当時,製版の知識はゼロ,PDFの作り方も,フォントにOCFとCIDがあることも知りませんでした。
オペレート業務と多少のデザインには自信があった私は,前の会社で多忙を理由に,最近のDTPについて不勉強だったことを実感。またお客様からWord,Excelやデジカメ画像の入稿,相談などもあります。最新のDTP知識と8年間のキャリアを系統立てて学ぶ必要を痛感した時,エキスパートの資格取得を目標に勉強することにしました。

エキスパートは「水戸黄門の印ろう」ではありません。資格をもっているといっても周囲の見る目は特に変わりませんし,有資格者=実務ができる人間というわけではないからです。事実「資格だけ」という人を何人も見てきました。しかしある程度の経験のあるデザイナー・オペレータ・営業の方が,印刷・デザインの基礎からコンピュータの概念までカバーしたエキスパートの試験内容を,「復習」として勉強することはとても有意義だと思います。
弊社では最近,お客様からのデータ入稿が増えました。文字入力はほぼ100%データで,Word,Excelで作成されたデータには手直しの必要がないほど完璧なものもあります。PDFでの校正も当たり前で,初めて注釈入りのPDFが送られてきた時はこちらが面食らってしまいました。お客様の知識が深まっている時代に,お客様の質問に対し即答できず「後ほど連絡を」といった遅い対応では,仕事は取りにくくなっていくのではないでしょうか。

資格取得から1年。用語を理解したことでDTP雑誌・本を積極的に読むようになり,前後の工程を理解したおかげでロスの少ない仕事を心掛けるようになりました。お客様や他部署からの質問にも自信をもって答えられています。1年後の更新試験はもちろん一つの目標ではありますが,怠けず日々勉強を続けていきたいと思っています。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2005年4月号


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2005/04/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会