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クリエイティブワークの新たな可能性を創出

制作業務におけるコンテンツ管理や情報セキュリティ対応のための支援サービスが注目されている。
今回は,特に広告・出版・印刷業界で注目されているクロスメディアの領域において,クリエイティブ支援サービスを提供する,株式会社クリーク・アンド・リバー社の執行役員福地英氏と営業推進室ディレクター畑野裕亮氏にお話を伺った。

クリエイター・エージェンシーを展開
クリーク・アンド・リバー社(東京都港区・代表井川幸広氏)は,1990年の設立から「クリエイターの生涯価値の向上」と「クライアントの価値創造への貢献」をミッションとして,クリエイター・エージェンシーを掲げて活動してきた。
「クリエイター・エージェンシー」とは,クリエイターとクリエイティブに関わる人や企業が仕事に専念できるためのマネジメント業務やコーディネートなどを中心としたサービスである。
人材派遣やアウトソーシング,プロデュース業務などを展開している。
クリエイターには,企業の枠組みやメディアに縛られずに活動したいという要望があり,フリーになっていくことが多い。同社では,その受け皿になって,サービスを進めてきている。
映像,Web,モバイル,マルチメディア,グラフィックの広告,出版,ゲームなどの幅広い分野から,約2万6000人のクリエイターが登録し,パートナーのプロダクションは900社を超えている。取引クライアントは約3000社,テレビの各キー局を始めとして,一般企業,メーカー,印刷会社など幅広い。

クリエイティブ支援の新サービス「any」
個々の制作業務のデジタル化は飛躍的に進んだが,コンテンツ管理や素材データの共有化などの部分はアナログ的に行われており,現場の混乱は今もなお続いていることに変わりない。このような中,ITインフラ整備による制作物の一元管理や制作業務のネットワーク化とそれによる効率化へのプラットフォームのニーズが高まってきた。
そこで,日本オラクルとの協業により新たなクリエイティブ支援サービス「any」を提供開始することとなった。
「any」のユーザは,制作物のコンテンツ管理,制作プロジェクト単位における複数企業間の作業管理や情報共有,さらには制作物とDTPシステムやWebシステムとの連携を行う機能の利用が可能になり,企業間をまたぐコラボレーションを実現する。IDによる権限のコントロールをしながら,クライアント,代理店,制作会社,印刷会社,クリエイターなどが,一つのワークグループに入って作業ができるという形である。
クリエイターサイドも,顧客をも含めたコラボレーションを実現したいという意識に変わってきている。制作サイドの仕事量の半分くらいはIT化が可能な仕事だが,煩雑な業務が多く,実際の企画やデザインを考える時間が取れない。
企業サイドのメリットは,制作プロセスの効率化によるコスト削減,変動費化とクロスメディアへの同時展開による情報公開のスピード化,制作フローの透明化による丸投げの弊害からの脱出,戦略的マーケティングの実現が挙げられる。

Oracle10gをベースとした「any」の機能
「any」のフレームワークは,最新のOracle10gがベースとなっている。テクノロジーの特徴は,まずは大容量ファイルへの対応である。Oracle10gのCMSDKをベースに開発されたXPF+は,クリエイターが取り扱うあらゆるデータを概念的に格納できる技術である。例えば,入稿前のMOをそのままデータベースに格納でき,XMLの取り扱い,ツリー概念のデータ構造などを対象とすることもできる。また,アクセスコントロールによるセキュリティ機能で安全性を追求している。
ファイルやフォルダ,さらにその上位概念となる,ボックスと呼ばれる各データグループに対し,ユーザがそれぞれの権限を設定することができる。これにより実際の制作において企業間を超えた業務の詳細な権限管理と安全なワークグループを構成できる。また,アプリケーションを経由することで,ログイン情報やダウンロード情報などのトラフィックも管理できる。
「any」の基本機能は以下のとおりである。
●コンテンツマネジメント:クリエイティブ素材を,ネット上のワークグループで一元管理する。制作する媒体や社内のルールに応じて,階層を作成し,自由にほかの作業者と共有できる。
●ワークフロー設計:ワークグループ内において,メンバーのだれが,いつ,どの仕事を担当するかを設定できる(タスクアサイン)。また,制作作業をしながら,同時に工程設計ができる。
●プロジェクトマネジメント:同時並行で進む媒体制作の進捗状況をビジュアル的に確認でき,メンバーのタスクやスケジュールも一元的に把握できる。
●クロスメディア連携:InDesignやQuarkXPressなどのレイアウトソフトにアセッツ情報を半自動的に展開し,修正を加えた後に,さらにデータベースを最新化する。これにより,マスターアセッツの管理をサーバ上で一元化できる。
●マーケティング連携:ページやコマなどのアセッツグループのデータベースと,基幹システムを連携することで,販売計画や商品計画に必要なデザインデータを管理する。マーケティングデータに基づくクリエイティブが実現できる。
「any」では,基幹システムに取り込まれている売上データなどの数値だけでなく,デザインデータなどのビジュアルも蓄積できる仕組みになっていることが大きな特長になる。
今までMacintoshに対応したコンテンツ管理がなかったが,OS Xへの移行が進み,制作環境の変化が予想されることから,WindowsとMacintoshの両方で利用できるようにしている。

広告・印刷関連の企業との連携を図る
「any」の提供方法は,ASPとパッケージ両方での展開を考えている。ASPでは,「any」の基本機能とOracle10gを特別な投資なしにすぐに利用できる。企業のユーザ数に応じたワークグループの大きさによって課金するモデルとなる。
一方パッケージは,ASPの基本機能に付加する要件や基幹システムとの連携など,カスタマイズも含めて企業導入を支援するサービスである。目的や規模に応じて,サービスを選ぶことができる。
同社では,これらの機能をより発展させるために既存のサービスとの親和性を高め,プラグインをさらに開発できる環境を提供することを今後の課題としている。また,広告・印刷関連の企業との連携により,「any」のビジネスモデルを展開させ,一層のクリエイティブ制作現場の環境改善につながるためのサービスを創出していくことが当面の目標となる。代理店制度やアライアンスも含めて,広く業界の連携を図っていく。
anyの導入は,コンテンツ業界にとって長年にわたり解消されなかった無駄な時間とコスト削減などの問題解決の糸口になるだろう。

JAGAT info 2005年4月号より

2005/04/16 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会