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FTTHをめぐる国内外の動向

質・価格の面で世界トップレベルのブロードバンドサービスが提供されている日本が「ブロードバンド大国」になった背景には、ADSLインターネットの事業者が熾烈な価格引き下げ、速度アップ、提供エリア拡大競争を繰り広げてきたことがある。

ADSLの普及が飽和状態にある一方で、ユーザの純増数を着実に伸ばしているのがFTTH(Fiber to the Home)である。大容量・高速・高品質という特質から、最近の傾向として電話・ネット・映像の3つのサービスがワンストップで提供される「トリプルプレイ」が注目されている。2004年に始まったトリプルプレイは、ソフトバンクBBの「Yahoo!BB光」、KDDIの「KDDI光プラス」がある。ユーザにとっては、契約料や料金支払いの手間が少なくなるほか、セット化による割引などのメリットがある。一方ビジネスにおける着目点は、これまで接続サービス単体で売っていたものを、利用する内容とともに提供するビジネスモデルに変更したという進歩である。

またトリプルプレイ市場争いの3番手として浮かび上がってきたのはCATV事業者である。J-COMが提供する「J-COM Broadbandサービス」は、1本のケーブルで電話・ネット・テレビを提供するケーブルインターネットとして1999年にサービスが始まっていたが、最近の盛り上がりによりトリプルプレイ市場をISP、電話会社、CATVの三つ巴状態にした。

しかし、2005年に入って東京電力がISPやCATVと組んで光ファイバー回線を提供するサービス「TEPCPひかり」を始めたように、今後はあらゆる事業者の参入や事業提携が一般化し、FTTH上で展開されるサービスは電話・ネット・テレビのほかにも広がってくることが予測される。

FTTHに関する海外の動向として、特に日本に遅れを取っている米国では、地域電話会社に課せられるネットワーク解放義務の規制緩和に乗り出した。米国では、電話は「エッセンシャルファシリティ」として、地域電話会社にネットワークや設備を開放することを義務付けている。電話会社にしてみれば巨額な投資を行って光ファイバー網を構築しても、競争事業者に開放しなければならないのである。各事業者がリスクを抑えた結果、FTTHの展開が進まないという状況が生まれていた。 この状況を打開すべく、政府は2003年8月地域電話会社のネットワーク開放義務に関する決定を公表した。この規制緩和により、電話会社や衛星通信事業者とCATVが事業提携を行い、光ファイバービジネスを推し進めているところである。

トリプルプレイの先進事例として、注目しておきたいもうひとつの海外事例は、CATVが普及していないイタリアで成功を収めているFastWeb(ファストウェブ)である。既存の電話会社が乗り出す前にサービスを展開したベンチャー企業が、ユーザの月間利用料(ARPU)を高めることに成功している。加入者数は、サービス地域において12%、トータル50万人で現在も増え続けている。FastWebは地上波テレビや衛星放送など映像コンテンツ120チャンネルをDVD並みのクオリティで配信している。そして加入者一人当たりの月間利用料(ARPU)は1万円で、欧州の中でも最も高い金額ということも着目すべき点である。

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2005/04/22 00:00:00


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