クライアント「印刷が粗い。おたくは写真データを何dpi(解像度)で取り込んだんだ?」
私「350dpiです」
クライアント「仕様書には350dpi以上と記載してあるはずだ。印刷は300線で刷れとも。だから400dpi以上じゃなければだめじゃないか! だから薄いんじゃないか? どうするんだ」
私「もう一度,見直してご連絡いたします」
(その後,刷り直しはなかったのですが,当社の信用という「お金に換えられないもの」を失いました)
私の確認ミスで取り返しのつかないことになってしまったのです。部下には私の指示で350dpiで写真を取り込ませました。従来の当社の印刷物作成上の考え,私のやりやすい方法で仕事を進めてしまったせいで,このような失敗が起こってしまいました。自分の知識・経験だけの仕事の進め方に限界を感じました。私の印刷知識よりクライアントのほうが勝っていたのです。
2回のチャレンジ
プロとしてどうすればいいのか。書籍で知識を得ればいいのか? 資格をもてばいいのか? いろいろ考え,展示会,セミナーなどに足を運ぶようになりました。その時紹介されたのがDTPエキスパート認証試験で,全国の印刷業以外の人々も試験にチャレンジしているところに興味をもちました。「そんなに魅力のある資格なのか」と。試験内容を調べていくうちに,あらゆるデザイン業務,DTPに関係する知識を修得する試験であり,しかも非常に難しいことが分かりました。「試験に合格すれば,何か自分が変わるかも!」と,自信を失っていた自分に言い聞かせ,挑戦することにしました。
その結果,2回チャレンジをして合格することができました。1回目の試験を受けた時には勉強をあまりせず,経験に頼って試験に挑みました。やはりダメでした。半年後にある試験に向けて,必死に勉強をしました。2回目は何が何でもと。あの失敗をした時の悔しさをバネに過去問題をやり倒し,試験当日はあせることなく,見直しをする時間もありました。それから数カ月後,結果がホームページに掲載される当日は会社に2時間前に出社して,一人結果をチェックしました。「あった!」うれしくて顔がニヤケてしまうのですが,2回目なので,社内ではうれしさをこらえました。
会社とクライアントには多大な迷惑を掛けてしまいましたが,あの失敗があったからこそ,仕事に対する真剣な気持ちが出てきたのだと思います。DTPエキスパート認証試験では,書籍などで見流すような内容も頭にたたき込まれ,自然と知識が発揮できるようになります。今では試験合格と知識の蓄積が自信へとつながりました。エラーはしてはいけないこと。しかし,そこから学べるものはとても大きなものでした。これからは,プロ(DTPエキスパート)としてDTP業界に関わることで会社や部下たち,クライアントに貢献できたらと思います。
■月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2005年5月号
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2005/05/03 00:00:00