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DTP制作が、WEB制作の後を追うようになる

10数年前から印刷物制作のシステムがDTP化し始めた時は,実際の作業者がやっていたことはMacのコンピュータ環境の習得,Adobeアプリケーションの習得であった。その後も技術革新は絶えずあったが,MacとAdobeのDTPはコンテンツ制作加工に関して独自な世界を作り出していて,IT化の大きな波をモロに被らずにきたともいえる。そのためDTPは成熟したとか,もう終わりだという雰囲気もでてきた。

しかしAdobeCS2からは,今後のDTPの仕事の流れが大きく変わる可能性がうかがえる。それはこれまでのコンテンツ制作加工の独自な世界に,IT化の大きな波をブリッジする要素が加わったからである。まずDTPアプリケーションがXMLをベースにしたJDFやXMPなどのフォーマットに対応し,作業に必要なデータの交換をアプリケーションを越えてできるようにし始めた。

コンテンツそのものについてはSVGなどXMLベースのものがすでにあるが,出力フォーマットのPDF化が進むとともに,コンテンツ配信もゆくゆくはオープンなフォーマットが多く使われる可能性がある。これらのことは一見するとDTPの作業に携わっている人には,仕事の改善という点では関係がないように思われるかもしれないが,パブリッシングのシステムを考え直すという点では大きな変革になる。

つまり従来のDTPにはあまり慣れていない周辺の分野の人がパブリッシングのシステムを構築する際には,全体をXMLベースで考えて,そのうちでテンプレートやスタイルシートの設計,見栄えのチューニング,最終的な校正など人が関わる部分だけをDTPのアプリケーションで行って,またIT化された全体のシステムの中に組み戻すことができるようになるからだ。

紙のメディアにおいては従来のプリプレスの分業体制をベースにして,発注者,クリエーター,文字処理,プリプレスなどの異なる作業環境の間で,DTPのパーツのファイルの受け渡しやファイルの変換によってひとつの作業を成し遂げるやり方をとっていた。WEBも最初は手書きのHTMLで同じようなことをしていた。しかしWEBの世界はDTPよりも先にCMS(コンテンツ管理)が発達を始め,DTP制作とWEB制作の類似はこのままではなくなっていくし,WEBの方がメディアとしてより機敏なものになるならば,仕事量もWEBへのシフトが進んでいくだろう。

しかし印刷物がなくなるわけではなく,むしろ従来の手作業DTPからCMS(コンテンツ管理)に直結した印刷物制作へのシフトも進むことになる。印刷物作成のシステムの効率化は過去には漢字情報処理や画像データベース,データベースパブリッシングなどさまざまな試みがあったが,これらすべての解決がXML化の上に集約されようとしていることが明らかになりつつある。

2005/05/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会