本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

メタデータ指向から生まれた真のXMLパブリッシング

これからの制作やデータ管理には,メタデータの重要性が増してくると言われている。コンテンツ管理やワークフローのシステム見直しの際にもXMLに基づくメタデータがキーになってきている。
そこで,メタデータ駆動型自動組版ソリューションを提供する株式会社ロココの企画室室長上田善行氏と営業企画部次長河野三郎氏にお話を伺った。

初期InDesignのころからの関わり
ロココ(本社大阪・代表長谷川一彦氏)は,1994年の設立当初からソフトウエア開発,SI,コンサルテーションをメイン業務にしている。その他システム運用管理,24時間365日間対応コールセンターがあり,提案から運用,保守までトータルにカバーできる体制を取っている。
元はDTPオペレータの派遣業務を行っていたが,顧客から制作システムを作ってほしいという案件の依頼が増え,DTP系の開発からJAVAやWebへと発展していった。当初はQuarkXPressのエクステンションを開発してきたが,制作レベルの高い日本では本当の意味での顧客の要求を満たすことができなかった。そんな時アドビシステムズからInDesignがリリースされた。
同社では,InDesign日本語版の発売前からシアトルのアドビシステムズでプラグイン開発技術を学んだり,技術交流を図るなどの土台の形成に尽力していた。当時InDesign1.0には表組みの機能がなかったため,2001年春にRoco Tableという名前で,表組みプラグインを単体でリリースした。
その後,InDesignの開発技術をもったベンダーが少ないということで,大手企業から声が掛かり,プラグイン開発を行っている。InDesignで新聞CTSの組版を行うプラグインやフリーペーパーの制作システム,情報誌のカセット組版や制作システムなどを開発してきた。

組版指示メタデータを使ったInDesign組版
同社が開発したMetaWorksは,多彩な組版とプログラムレスによるデザイン変更を両立し,高度な自動化要求を満たすパブリッシングソリューションである。InDesign,Illustrator上で動作する自動組版ソリューションで,顧客の要件ごとにカスタマイズして,ユーザプロダクツを提供する。レイアウトの際に要求される段落,属性のセットは,組版指示ファイルの採用により顧客ニーズの最小公倍数を満たすことで,さまざまな体裁の組版が可能となる。
MetaWorksの特徴としては,まずテンプレート作成の容易さが挙げられる。組版要求からテンプレート作成まですべて自動処理を行う。文字情報量が固定化されたテキストフレームからあふれた場合は長体などの処理をルール化し適応,また,文字量に合わせたテキストフレームの生成,ページが埋まった場合次のページを生成するなどといった処理が,自動化の一例である。
XMLはいまや印刷,出版業界にとどまらず,データ基準の標準になりつつある。そこで,構造化された豊かな表現力をもつXML技術を応用して,高度のドキュメントの自動生成を実現する。またマイクロソフトのInfoPath2003の連動により,XMLのスキーマから動的な入力フォームを簡単に作成できる。InDesign自身がXMLを標準サポートしており,XMLをロードして段落スタイル,文字スタイルを適用するとそこに文字が流し込まれる。
MetaWorksでは,組版指示をXMLファイルと定義したことにより,プログラムレスの範囲が広がり,シンプルな設定と組版の自由度を兼ね備えたソリューションとなっている。XSLTを使ってタグを付けたり,タグの変換をしたり,ルールや想定,オーダーを付けたりすることができる。
XML技術を採用するということはすなわち,既存のシステムやデータとのシームレスな連携を前提に設計されていることである。データベース,アプリケーション,Webなどとの統合を容易に行い,開発工期の短縮を大幅に行うことが可能になっている。
AutoFOXは,独自のスキーマ概念で,組版するための命令自身をXML化したものである。それにより多彩なアルゴリズムやルールを指定できる。具体的に言うと「文字やイメージパス以外にどうやって組版するのか? どのようなルールに基づいて組版するか?」を記述する。このXMLをMetaWorksプラグインが解釈し,InDesignもしくはIllustrator上で組版する。選択項目もリストボックス化してInfoPathで見せられるように,いくつかの条件で制約を付けて,ある特定の値以外は指定してはいけないというようなバリデーション(検証)もXMLスキーマで記述できるため,XMLプロセッサによる妥当性の検証が可能である。

キーワードはメタデータ
文字やイメージなどの単純なデータに対し,メタデータとは,データについての情報を記述したデータである。いわばデータのためのデータであると言える。標準化されたメタデータを扱うことによって,情報の一元管理,資源の組織化を実現する。個々の情報にメタデータを付けることにより,よりデータの性質を的確に反映した検索が可能となる。画像の取り扱いにも利用できるので検索も可能になっている。だから制作環境にメタデータを使用するというのは,IT戦略上では必然的な流れになっており,今後のビジネスを左右する考え方だと言われてもいる。
MetaWorksでは,独自に設計したメタデータを記述することによって,プログラムレスで柔軟性の高い自動組版が可能になる。
さらに,開発コストが抑えられることが大きな特徴であろう。顧客の要求に対して多くのひな形を用意できるし,またデザイン部門やシステム部門の担当者が自分たちでテンプレートを作り変えることも容易にできる。
コンテンツの宝庫と言われる出版社や新聞社などでは,システムの変更や発展がしやすくなるというメリットがある。速報性にも強いので,新聞向け組版にも向いている。例えば新聞などでは,為替のグラフ,天気予報図,選挙グラフなどに採用されている。

コンテンツビジネスをメインに展開
今後の方針としては,出版社,印刷会社,新聞社向けのコンテンツビジネスをメインにしていきたい。単に自動組版できるだけというのではなく,ワンソース・マルチユースやコンテンツマネジメントに行き着く。リポジトリに格納されているデータをWebや携帯,紙,CDなどあらゆるメディアに配信していく。多チャンネル再利用や顧客ごとにカスタマイズができる。ただ,それらもメタデータありきなので,InDesignとXMLによって実現できるのではないかと考えている。
また同じ内容のものを言語を変えるだけで全世界に配信できる。ITを視野に入れ,グローバル展開している企業の世界同時発売のマニュアル制作システムにも利用できる。そこには翻訳システムとの連携も関わってくる。
同社では,その一つの戦略として,中国への進出を視野に入れている。まもなく中国の企業と合弁会社を設立する予定だという。市場は国内に限らないと考え,これまで自国で培った技術やノウハウをグローバルな発想で凝縮したソリューションの提供は,他国でも受け入れられるであろうと自負している。

JAGAT info 2005年5月号より

2005/05/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会