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印刷白書[2004→2005]=マインド・チェンジ= 5月20日発刊

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体裁:A4版,168ページ,バインダ綴じ
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「印刷白書」とは
「印刷白書」は,印刷産業の現状と動向を「統計資料に基づいて」「客観的に分析する」とともに,印刷産業の「時代模様をキーワードによって明らかにする」もので,3章からなっています。

第1章では,印刷関連統計データから印刷産業の状況と技術動向を明らかにするとともに、特に注目すべき業界の動きをまとめている。
第2章は,今後の印刷産業に影響を与えると思われる環境変化についての視点と、印刷産業の課題、そしてキーワードをまとめている。
第3章は,印刷産業と印刷市場についての統計データ集で、100点以上の図表データを収録してある。

本書の統計資料は,他にない以下のような特徴を持っています。
(1)印刷産業の動向把握に必要な公表データを,出来るだけ時系列的に遡って網羅,掲載しています。
(2)産業連関表データなど,他に見られないデータが豊富に掲載されています。
(3)各データから何を読み取るべきかの明確な視点からデータを加工,図表・グラフ化し てあり,そのまま計画資料・会議資料等として利用できます。

以上のような内容,特長を持つ印刷白書は,印刷産業動向把握の決定版であり,印刷産業,同関連企業の皆様の経営戦略を考える上での必携の書としてご利用いただけるものと確信しております。

印刷白書[2004→2005]=マインド・チェンジ= 目次1 2 (PDF形式, 11KB)

■ 印刷白書[2004→2005]=マインド・チェンジ= 要旨 (過去の印刷白書の要旨は,こちらからご覧ください。)
2004年もマイナス成長の印刷産業

2004年の印刷業界の売上高は,既存企業の売上高だけで見れば1%程度前年を上回ったようである。しかし,事業所数の減少によるマイナス効果を考慮すると2004年もやはりマイナス成長だったと考えざるを得ない。JAGATの推計による前年比は1.9%減である。
このような中で,2004年は,従来以上に大きな企業グループ間,個別企業間の業績格差が見られた。2005年3月期第3四半期の上場印刷企業6社の業績(連結ベース)を平均値で見ると,売上高では前年同期比7.0%増となり,売上営業利益率も7.6%と大幅に回復している。ただし, 個別に見ると11.1%増〜1.4%減と企業間のバラツキは大きい。
中小印刷業の売上前年比は1.0%減であった。上場企業は,全体としては上期も好調だったが第3四半期にはさらに良くなった。しかし,中小印刷業は全期間を通じて不振であった。中小印刷業の最大の問題は,売上げ拡大の見通しが立たない中で利益確保の弾力性を失いつつあることである。さらに,5%に満たない企業が,売上げ,所得の大半を占める寡占化が進んでいる。

時代の流れを反映する分野別状況
上場印刷企業と中小印刷企業の上記の差は,時代の潮流に沿った印刷市場の変化を反映した部分によるところが大きい。高度情報化の流れの中で,証券・カード分野では帳票,通帳等の売上高は減少しているが,データプリントサービス(DPS),ICカードの需要は好調である。2004年度第3四半期におけるトッパンフォームズのBF印刷売上前年比は▲3.3%であったがDPSは12.4%増になっている。
上場企業における「環境対応製品」の売上高は2004年度も好調である。大日本印刷の環境配慮型製品売上高は年々増加して2003年度は1404億円になった。1999年度に対しては4.7倍の規模であり,同社の環境会計収支は2001年度にプラスに転じて2003年度は100億円程度のプラスになっている。上場企業の売上増に大きく貢献したのがエレクトロニクス系事業である。この分野は景気による上下動が大きいが市場のトレンドは明らかに拡大しており,印刷産業ビジョンが予測した年率7%増という伸び率を上回って伸びている。

インターネットの紙媒体への影響
2004年の出版市場は書籍の販売金額が6年ぶりに前年を上回ったが,雑誌は相変わらず前年割で書高雑低の傾向がさらに拡大した。ブロードバンドの普及で,無料で手軽に利用できるネットが情報誌の役割を担いつつあり,その影響は否めない。専門情報はずいぶん前からWebで入手することが可能になっていたが,この1年でブログが急速に普及して,話題の映画,スポーツ,グルメ情報,あるいはさまざまな商品情報,さらには事件,事故などのあらゆる情報にブログを通じて接することが出来るようになった。
通信販売業界の売上高は順調に伸びているが,大きな要因は,インターネットを主要な広告媒体とする商品やターゲットを絞りこんだ専門店化した中小規模の企業の伸びである。通販業におけるインターネット利用率は86.6%で年々上昇し,2003年には各種媒体利用率のトップとなり,第2位のDMを大きく引き離している。過去3年間におけるネット売上は3.5倍となり,主要通信販売業者売上高に占めるネット売上比率は20%弱にまで拡大している。このような中で,カタログ,チラシの発行部数は4割弱減少した。

伸びる紙媒体分野
ネット利用の普及による紙媒体へのマイナス影響が見られる一方で,チラシ,DMは順調に伸び,フリーペーパーも急速に増加するなど,紙か電子といった単純な図式で割りきれない動きになっている。
2004年のチラシ市場は対前年比3.9%増と順調に伸びた。株式会社電通の「日本の広告費」によれば,折込チラシは,テレビ,新聞に次ぐ第3位の広告宣伝媒体になっている。エリアを絞った広告宣伝のベーシックな手法としてチラシは依然として魅力がある。
DMに関しては,2,3年前から需要が減少しはじめたことを示すデータもあるが,従来主体であった封書のDMが,郵送料が安く情報量を多く盛り込める密着ハガキに移行したことやダイレクトメールを送る手段が多様化したことを反映したものであり,DM需要は増大していると見られる。事実,広告郵便物通数は減少しているがクロネコメール便の取扱数は増加しており,両者の合計は6%強増えている。
フリーペーパーのタイプ,対象は非常に多様だが,例えば新聞タイプのフリーペーパーはこの5年間,紙数で8割,発行部数で約6割増加し,フリーペーパーの年間発行部数はすでに雑誌の年間推定発行部数を上回り,折込枚数とほぼ同程度の需要量になっていると見られる。

増加するプラスチック,低迷する紙
白板紙の出荷販売量前年比は2年連続で前年を下回ったが,包装資材・容器用プラスチックの使用量は増加している。京都会議が開催され,所沢のダイオキシン騒ぎがあった1998年から2000年においては紙の増加がプラスチックの増加を上回った。環境問題を基点として利用する包装材料の傾向に方向転換が起こったのかと見られたが,2001年以降,プラスチックはどんどん増加する一方,紙は減少気味で推移している。包装容器リサイクル法の施行によって,包装容器の原材料使用量を減らす方向に動いていることは間違いないが,その状況は紙もプラスチックも同じはずである。紙とプラスチックの単位重量当たり価格の推移をみると,プラスチックの単価下落幅は紙のほぼ倍になっている。このことがプラスチック利用増加に関わっている可能性は大きい。また,パッケージの場合は機能性からの制約も大きい。
1998年〜2000年での包装容器の原材料利用状況の変化とそれ以降の変化は,企業の環境問題への対応動向にはマスコミでの問題の取り上げ方,材料選定においてはやはりコスト要因が大きく効くということを示しているようだ。

ここ2,3年が正念場か?
JAGAT会員企業に聞いた2005年の売り上げ,利益見通しはさまざまだが,増収あるいは増収増益とする企業もそれなりにある。しかし,希望値,目標値という意味合いの企業が多く,明確な根拠をもって売り上げアップ,利益アップとした企業はやはり少ない。
しかし,過去7,8年における印刷産業出荷額減少のひとつの要因がCTPの普及でなくなりつつある。日本経済全体は2006年度前半でデフレを脱却し,2007年度以降は民間消費支出が安定して伸びる「普通の経済」に戻っていくというシナリオが一般的になりつつある。
単純な仮説に基づいてではあるが,JAGATが推計した2010年までの印刷出荷額予想では,印刷産業の出荷額下落はそろそろ止まり2010 年までほぼ横這いで推移するという結果が得られた。ただし,印刷業界内における供給力過剰が緩和されて価格低下が収まることが前提である。

予想を越えて普及,変化を起こすデジタルネットワー
インターネット,携帯電話は当初予測を2年前倒しで普及し日常生活にすっかり定着した。携帯電話は,既に接触時間,消費支出項目のいずれにおいても最大のメディアになっているが,ハードの高度化とともに,ポータビリティ制度によって各種のサービス競争が一気に加速し,メディアとしての機能をさらに高めて行きそうである。地上波デジタル放送は前倒しで始めるところが増えており,2006年末には世帯カバー率が80%になると見られている。
上記のようなインフラ普及の中で,電子書籍分野では,オンライン小説の動きが活発に見られ,mail,メルマガ,ブログの延長の上で第2ラウンドに入りつつあるようだ。個人の情報を発信するところから始まったブログだが,いまでは雑誌市場を脅かしさらに最近ではマーケティング手段として注目されている。
ECも2003年には予測を上回る取引高を記録し,B to Cの事業者は日本を代表する企業として位置付けられるまでになり,新たな需要も創出しつつ拡大している。 いま注目されているICタグは,経済効率向上とともに環境問題における3Rの観点からもそのトレーサビリティが期待されている。現在,いろいろな業界で実証実験が行なわれているが,幅広い範囲への普及のポイントはICタグの価格低下である。

メディアビジネスはコンテンツへ
日本の「電子政府」構想は,e-Japanに次いでu-Japanを目指すことになった。ネットワークインフラのさらなる整備とともに,情報通信技術の利用高度化とその安全利用のための環境整備,つまりコンテンツと利用ル−ルに焦点を移した構想になっている。
日本のコンテンツ市場規模は米国に次いで世界第2位の大きさになっているが,伸び率は新聞,放送系が停滞しているために韓国等に比べても低い。しかし,デジタルコンテンツについては,インターネット関連の技術はより高度な表現,操作性を具備したものになってきており,市場拡大を牽引するプロダクト市場が大きく伸びているので拡大していくことは確実である。そして,コンテンツビジネスではクロスメディア展開がビジネスのキーになる。
デジタル化,IT化への取り組みをいち早く行ない,印刷物,Web制作のノウハウを蓄積してきた印刷業にとってのこれからのメディアビジネスにおいては,プロデューサーの発掘,育成が重要課題である。

キーワード:マインド・チェンジ
閉塞している現在の印刷業界をブレイクスルーさせる圧倒的なビジネスモデルの出現や新しいビジネスの大きな成功事例の姿はまだはっきり見えてこない。ヒントや技術は数多く見え,それらをうまく組み合わせさえすれば解答が導けるという,寸前のところまで来ていると思えながらも,一方で果たして解答があるのだろうか,という思いを持ちながら立ち向かっているのが今の状況ではないだろうか。だからこそ,貪欲にあらゆる業界に目を行き渡らせる,強い意志と業界の枠に縛られない発想を持った経営者が牽引役にならなければならない。
印刷業界の状況を見れば,既存の仕事,既存の境界線に自らを縛りつけたままでは,新しいビジネスモデルに移行する延長線も脱出口もみつからないことだけは確かである。社会が必要とする継続するビジネスを追求するという企業使命を果たすために,経営者のマインド・チェンジ求められている。

印刷白書[2004→2005]=マインド・チェンジ= 要旨 添付図表 (PDF形式, 33KB)

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2005/05/20 00:00:00


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