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より強いパワーを生み出す組織作り

多くの企業が新年度を迎え人事、組織に大なり小なり変化が起こるこの時期は「人」という問題に否応なく注意が向く。
今年のJAGAT大会は6月23日(木)開催に決定したが、この「人」をキーワードに行なう予定である。予測のつきにくい変動性の激しい社会の中での印刷経営の原動力、すなわち変革の舵取り役であり推進力となる「人材」について考えてみようということである。
印刷の経営者との会話の中で人材をめぐる問題は必ずと言ってよいほど話題に上る。どう育成するのか、どう再教育するのか、新しいマインドにどうやって変えるのか、異なる価値観をもつ世代をどうやって一丸とならせるのか。そして、より優秀な人材を獲得するにはどうしたらよいのか、そのための印刷の魅力をどう語ればよいのか、その上で組織活性化をどうしたらよいのか……などなどである。
これらの問題を解きほぐし、対処のための的確な方法を見出すために、まずシンプルに自己診断をしてみることも有効な方法である。例えばスタッフ個々にとって、自らのやりたいことをやれることとし、それをやるべきこととしていく。そこからさらなるやりたいことを生み出していく。それが循環する形で矛盾なく継続されていくことが自己実現に結びつくはずである。
そして会社自体のやりたいこと、やれること、やるべきことと個々人のそれとを同期化するよう努めることが、会社と個人の双方にとって突進力をもつ強いパワーを生むために重要なことである。そのためにまず、、この個々の「やりたいこと(ビジョン)」「やれること(スキル)」「やるべきこと(ジョブ)」に関して会社のそれと個人のそれとがバランスよく対応しているのかを棚卸しし整理してマップにしてみるというやり方がある。

また、この「やりたいこと」に関連して、モチベーションエンジニアリングをコンセプトに組織活性化のコンサルティングを行なう今話題の会社、(株)リンクアンドモチベーションの代表取締役・小笹芳央氏は「モチベーション特性を把握するための4分類」を提唱している。それは「達成支配欲求型」「審美創造欲求型」「貢献調停欲求型」「論理探求欲求型」の4つで、それぞれにモチベーションンの向上、低下要因が記されている。

1「達成支配欲求型」
→up要因……目標達成・ライバルの設定
→down要因……権利権限の剥奪・他者の低い業績や怠慢
2「審美創造欲求型」
→up要因……アイデアや視点の評価・変革への期待・業務の変化
→down要因……独創性の制約・提案を無視される環境
3「貢献調停欲求型」
→up要因……貢献への感謝や励まし・良好なチームワーク
→down要因……貢献への無関心・不正直な対応・情報の隠蔽
4「論理探求欲求型」
→up要因……能力向上の勉強会・長所の活用機会・エラーの容認
→down要因……能力の未消化・一貫性のない指示や期待

これらに自分を当て嵌めてみることで自己のモチベーションが因数分解され、整理されるのではないだろうか。

しかし長い歴史を持つ業務やルーティン型の業務には、時間とともになぜその形で業務がおこなわれるようになったのかの理由が見失われ、本当に必要なことなのかの検討がされなくなり、説明されないまま「やるべき仕事」として渡されていることがある。そういう中では「言われたからやっている」という言い訳がはびこりやすい。
この、会社とスタッフあるいは上司と部下の関係は、受発注の際の顧客と営業の関係にも置き換えられる。発注側は欲しいものをきちんと見極めシンプルに発注できないと、不必要なものも混ざりこんだハイコストのものを売りつけられてしまうことにもなる。受注側から言えば、積極的に発注者の意図を汲み取らねば顧客が満足する売り上げには結びつかない。お互いが、この場で何を問題解決し何を得ようとしているのかが明確化され、お互いのポジションから積極的価値を築こうとコミットしていくことが成功する仕事の必要条件なのである。
先ほどの社内業務の関係も正に同様なのであり、その業務が何の目的で、どういう機能をもつのかということが明確化され、それが最終的に会社のビジョンにどのように貢献するのかが明示されたとき、業務を通してより積極的な価値を見出そうとする主体的な姿勢が生まれてくる。

人材をより活性化し、より強いパワーの原動力とするための方法論はさまざまある。印刷会社特有の問題点も多々ある。しかしひとつ言えることはトップ自らが「変革の意思」を明示し、自ら率先して働きかけることが何よりも必要だということである。そしてその時どういうビジョンを語るのかということである。


経営層向情報サービス『TechnoFocus』No.#1386-2005/4/25より転載

2005/05/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会