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活字書体から写植書体、そしてデジタル書体(32)―フォント千夜一夜物語(最終回)

『和欧混植に適した本明朝-Bookと欧文書体』

近年日本における書籍・雑誌類の組版は、日本語の漢字・かな類・記号類、そして欧文文字が多く使われるようになっている。つまり和文・欧文混植組版である。文字組版において和文と欧文が同一行、または同一ページに混じって組版されることを「和欧混植」というが、和文フォントは全角を基準として仮想ボディの中心揃えで設計されている。

●和欧混植の問題点

ところが欧文フォントはベースラインを基準にデザインされ、しかも文字ごとに異なる文字幅(セット幅)をもっているのが特徴である。

したがって和文フォントと欧文フォントを同一行に組むと、文字の並びが揃わないという問題が生ずる。欧文フォントは、書体ごとにベースラインが微妙に異なっているが、大文字と小文字はベースラインを基準に横の並びを揃えている。

欧文のベースラインの位置は、仮想ボディの中心より下がっているため、和文と組むと欧文の大文字は上がって見える。また大文字の天地の高さは、漢字に比して小さく見えるため並びが悪くなる。これは純欧文フォントを使うかぎり宿命的な問題である。

これらの問題を回避するために、いろいろ苦労しているわけであるが「並びを揃える」ことについては、組版ソフトがもつ「ベースライン下げ」機能を使って、見かけ上揃える方法がある。

その他の問題として、漢字と欧文文字の「大きさ」と「ウエイト(太さ)」のバランスの問題と、和文と欧文の書体の非整合性がある。例えば本文に和文明朝体を使い、欧文はサンセリフ系フォントを混植するということである。つまり和文フォント・ファミリーと欧文フォント・ファミリーのそれぞれのウエイト構成は一致してはいないということである。そのために紙面の黒さのバラツキが目立つことになる。

和欧混植組版では、和文フォントに適した欧文フォントを選択すると体裁がよいが、雑誌や書籍などでは無神経な和欧混植組版がよく見かけられる。

和欧混植における欧文フォントの選択にはルールと呼ばれるものはないが、編集者やデザイナーの美的感覚に左右される要素が強いといえる。そこで参考のために欧文フォントの選び方と使い方を上げると下記のようなことがいえる。

@ウエイトに差がない書体を使う。
A和文書体に似通った書体を使う。
Bxハイト(字高)が大きい書体を使う。
C従属欧文書体を使う。

従属欧文書体とは、和文フォントに従属してデザインされている欧文書体のことで、和欧混植に適した書体といえる。しかし多くの市販のフォントパッケージには、フォントメーカーによっては用意していないものがある。

その点このリョービ「本明朝-Book」のフォントパッケージには、「本明朝-Book」の濃度とラインを合致させた「4種16書体」(図参照)の欧文書体が同梱されている。しかも「Small Caps(小頭文字)」と古典様式の数字「Oldstyle Figures」が搭載されていることは他に類を見ないであろう(完)。

※資料リョービイマジクス「本明朝Book」より

図 リョービの「4種16書体」


【参考】プリプレス/DTP/フォント関連トピックス年表
(拡大する場合は画像をクリックしてください)

フォント千夜一夜物語

印刷100年の変革

DTP玉手箱

2005/05/28 00:00:00


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