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InDesign上の自動組版による印刷物の付加価値向上

PAGE2005コンファレンスのグラフィックストラックでは,InDesign上での自動組版を取り上げ,コンテンツ管理の側面やカタログ編集の側面など,多方面からの議論を行った。共同印刷の守屋博之氏は,顧客がメリットを享受できるデータベース自動組版の実現として同社の自動組版ソリューションを紹介した。

TRUENEXTの概要

共同印刷では,カタログ制作の効率化を目指し,データベースパブリッシングシステム「TRUENEXT」を数年前から開発してきた。TRUENEXTは,単なる商品管理データベース・自動組版ツールだけでなく,カタログ制作における上流工程から下流工程までをトータルでサポートするシステムを目指している。特徴として,Adobe InDesignによる自動組版を行っている。このプラグインはすべて自社開発しており,特にデータベースへの赤字書き戻し機能を重点的に開発してきた。また,PC画面上で割り付けのシミュレーションを行えるような機能も用意している。

事前準備としてデータベースの構築と入力画面の作成をする。このとき,データベースのひな形とプログラムのひな形が用意されており,これをカスタマイズするだけでデータベースの構築ができる。次に,レイアウト部品作成を行う。他に,ページのひな形(テンプレート)があり,これらを必要なだけ作成してデータベースに登録しておく。2番目に,TRUENEXTデータベースへ情報登録する。事前準備の段階で作った入力画面を使ってデータをデータベースに登録する。3番目に割り付けをおこなう。これはページテンプレート,小組テンプレートを使って割り付けツールで一括して流し込む。その後に商品の配置を変更したり,コマ割りのシミュレーションを行うことができる。

レイアウトが確定したら,割付指示ファイルとして自動組版側に送り,Mac上のInDesignで自動組版を行う。自動組版した後に赤字が入った場合は,直接ドキュメントを修正するが,修正した箇所がデータの中に自動的に記録される。校了した後,赤字部分だけを抽出して,TRUENEXTデータベースへ修正内容を書き戻す。このとき,元のオリジナルデータベースのデータとDTP上で修正された箇所を見比べながら内容を確認することができる。確認したらデータベースに戻し,最後に他メディアに展開ということで,データベースからデータを抜き出して転用するという流れになっている。

データベースパブリッシングの理想と現実

データベースパブリッシングは,本来DTPの作業をバッチ的に処理することで,印刷会社側の制作合理化が目的である。顧客から見た場合のメリットは,コストダウンということに尽きるだろう。そうすると,顧客からはもっとコストダウンできないかという要求が来るようになる。しかし,自動組版による制作合理化には限界がある。自動組版をするには前もって準備をして流さなければいけない。少し複雑なレイアウトでは前準備が大変になり,かえって手で組んだほうが早いというケースもよくある。
理想としては,顧客にコストダウン以外のメリットを提供し,お互いに得をして,Win-Winの関係を築くことだろう。

また,データベースパブリッシングに対する主な要求を考えると,3点が挙げられる。1つは大量データ処理の効率化である。この場合,制作できる紙面は定型的なデザインのものに限定される。もう1つは,フリーレイアウト・カタログへの対応である。もっと自由にデザインしたい,商品情報をデータベース化し,デザイン作業とDBを連携させたいといったニーズがある。このどちらにも共通するニーズとして,レイアウトソフト上で入った赤字訂正箇所を確実にデータベースに戻したいという要求がある。

さらに,顧客の視点から見ると,印刷物以外のデータも一元管理しWebと印刷物を同時に発行したい,顧客サイドの制作ワークフローを見直して制作の効率化を図りたいといった要求もある。

大量データ処理の効率化

大量データ処理を効率化するため,TRUENEXTでは,3つの取り組みを行ってきた。1つはプログラミング不要でデータベースを構築することで,データベースのひな形を予め用意しておき,これを顧客の仕様によってカスタマイズしていく。しかも,スクリプト作成等のプログラムは一切不要となっている。2つ目は商品コマ割りシミュレーション機能で,大量データをPC画面上で一括割付し,割付後に商品のコマを移動することができる。3つ目はデータベースへの赤字書き戻し機能である。データベースへ戻す専用ツールがあり,データベースのオリジナルのデータとInDesign上で修正した箇所を比較しながら書き戻す機能もある。

フリーレイアウト・カタログへの対応

TRUENEXTでフリーレイアウト・カタログに対応するために,InDesignからネットワークを介して,離れた位置にあるデータベースにアクセスする。2つ目は,シンプルな自動組版である。テンプレートを作っての自動組版ではなく,もっとシンプルな,緩い自動組版にする。3つ目がデータベースへの赤字書き戻しである。定型のレイアウト以上に,フリーの場合はデザイナーがデータをいじるという作業が入るので,かなり重要な機能となる。デザイナーがいろいろいじっても,データベースのフィールドと紐つけされた情報が途切れないような仕組みである。

顧客がメリットを受ける仕組み

今,FatWire社のコンテンツ管理システム「Content Server」と連携することを考えて開発を進めている。Content Serverの強みであるWeb配信機能と高度なコンテンツ管理機能,TRUENEXTの強みである自動組版と赤字戻し機能を組み合わせることにより,より強力なソリューションを顧客に提供することができる。また,Content Serverの承認ワークフロー機能というものを使うことによって,顧客側のコンテンツ作成から印刷までのワークフローを効率化する。

例えば,Content Serverを顧客側に置いて,印刷会社の中にデータベースを置いたとする。顧客側でコンテンツを作成して登録すると,承認ワークフローが起動する。コンテンツ作成者の上司が内容を承認してOKすることにより,自動的にTRUENEXTデータベースへコンテンツが配信することができる。配信されたデータに制作会社のコピーライターやデザイナーがアクセスして,InDesignを使って紙面を作成する。一方,Content Serverの機能を使って企業のWebサイトやイントラネットにデータ配信する。あるいは,支店等で営業マンが販促チラシを作る場合は,Content Serverから商品の画像やロゴを取ってきて,WordやExcelで作成する。それを承認ワークフローで,承認者がOKしたら販促チラシとして配布するといったワークフローを構築する。これによって,ブランドイメージが統一できる。

まとめとして,小組テンプレートを使ったグリッドレイアウトによる自動組版,よりシンプルで緩い自動組版であるフリーレイアウト機能を使って,コストダウンとデザイン性を両立していこうと考えている。また,コンテンツ管理システムとTRUENEXTを連携させることにより,顧客にとってメリットのあるシステムを提供していくという取り組みを,さらに進めて行く。

(Jagat Info 2005年5月号より)

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