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キーワードはフライヤー印刷--営業人員なしネットオンリーで成長

株式会社グラビティ

ライバルが少なかったネット受注

株式会社グラビティは1999年の2月に創業した当初から,主にWebサイト経由の受注システムで成長してきた。2001年に株式会社化,社員は20名強。創業者であり,社長である奥田義一氏は現在33歳。グラビティのWebサイトを活用したビジネスについて伺った。 奥田社長は,千葉大学理学部を卒業後製薬会社に2年勤務した後,2年の海外生活を経て,帰国後に共同経営者と有限会社を設立してソフトウエア開発とWebサイトでの印刷物受注を始めた。その後,当時の顧客に請われていったんソフトウエアシステム開発の会社に9カ月ほど勤務するが,すぐに現在の会社を本格的にスタートさせた。
奥田社長がWebサイトで受注を始めた97年ごろは,同じようにWebサイトで印刷物受注を行っているライバルと言えるような会社は,ほかには1社ぐらいしか確認できなかった。当時も印刷会社はホームページをもっているところはたくさんあったが,Webサイトから原稿を入稿することを行っていた会社はほとんど見つからなかったと語る。
創業当時もほぼ現在と同じような受注システムで展開しており,1年目からそれなりに受注でき,顧客も獲得できた。現在では,年間に約5億円を売り上げるまでの企業になった。
この仕事を始めたのはやはりインターネットが登場したことにある。印刷受注に限らないが,実際の店舗をもたなくても物を販売できるし,同様に営業担当者が訪問しなくても印刷物を受注できるようになった。つまりアイデアと行動力があれば,かつてに比べると低資金で起業できるようになっているのだ。 実際,奥田社長はこれまで印刷業界の経験はなく,印刷に関してはほとんど素人だったと語る。

9割以上の原稿がインターネットで入稿

現在,同社はほぼWebサイト経由の受注で,原稿の入稿も一部に宅配便や持ち込みがあるが,約95%はインターネットを利用したメール,FTPになっている。同社はWeb経由での受注がほとんどなので,いわゆる顧客を訪問する営業担当者は存在しない。社員はほとんどがDTPオペレータとデザイナーで,メールやデータ入稿のチェック,問い合わせなどへの対応は基本的に彼ら社員全員で行っている。
同社では,受け付ける入稿データをAdobe IllustratorとPhotoshopに限定している。個人の顧客が多いとなると,IllustratorとPhotoshopを使ってのデータ作成はハードルが高いように思える。しかし,同社の受注する製品の主力がフライヤーで,ペラものが多いことと,顧客が音楽や演劇,クラブイベントプロデュースなどクリエティブに興味をもち,なおかつ若い顧客が中心なので,Macを所有してIllustrator,Photoshopを使いこなしてデータを作成してくる顧客は多い。
また,現在のようにコンピュータが普及していると,例えば劇団であれば20人ぐらい人がいると,1人や2人はIllustrator,Photoshopを使う人がいるようだ。
入稿をこの2つのデータ形式に絞っていることで,データ入稿やデータチェックの上で効率化につながる。
どうしても既存の印刷業の発想では,Quark XPressにも,InDesignにも,あるいはMicrosoft Officeにもというように,対応力をアピールしがちだ。それがややもすると混乱の原因や非効率な作業工程になってしまう。
同社の場合には,受け付けるデータを限定することで,効率化や自社の特徴を生かせる,つまりターゲット(フライヤー印刷)層に合った印刷物受注につなげることができているようだ。
顧客のもう一つの特徴としては個人および個人事業者の割合が多く,約8割を占め,2割弱が中小企業で,若干大手企業がある。
受注している仕事の特徴としては,少部数,短納期,低価格のものが多い。これはWebサイトで基本の価格や納期を明示していることもあるだろう。原則的には完全データでの入稿となっているが,全体の5%ほどはデザインから請け負って制作する仕事もある。
インターネットを利用しているので,発注は北海道から沖縄まで全国各地からある。やはり首都圏の仕事が多く,ほかには関西,沖縄からの発注が目立つと語る。

料金回収は代引きが9割以上

受注の受け付けは営業時間内となるが,原稿の入稿はインターネットを利用すれば,営業日以外も受け付けている。
営業担当者がいないことは前述したが,従って顧客との折衝はメールや電話で行っており,一部のデータ持ち込みや印刷物の受け取りに来る顧客以外には,実際に顧客と顔を合わせることはない。
同社では現在,印刷は外部に委託している。印刷会社には原稿はデータで渡すが,インターネットで入稿されたデータは,印刷会社に渡す前にすべて同社内のオペレータがチェックを行う。同社内のチェック項目をすべてクリアするようなほぼ完璧なデータもあれば,ほとんどの項目をクリアできなくて再入稿になるものもある。原則的に問題のあるデータは社内で修正して,面付けしたデータを印刷会社に渡している。この修正代は規定料金の中に含まれている。
でき上がった印刷物は必ず引き取って,検品して同社から発送する。
相手が見えない仕事なので,トラブルが発生した場合が気になる。同社の場合,これまでのトラブルで多いのはキズがついていた,色がおかしいなどの加工や製品品質での問題で,それに続くのが入稿データの不備,納品である。納品のトラブルとは,宅配便を利用しているので,それが時間どおりにつかないことでクレームになる。また,インターネットをとおしてのやり取りなので,印刷料金の回収が不安だろうと思ったが,これについてはトラブルは少ないと語る。
「4年間やってきていますから,正直,料金回収ができなかったことはあります。それでも問題になるのは年に2,3件あるかどうかの件数です。本来なら住所や電話番号をしっかりと確認したいのですが,メールアドレスしか分からずになかなか連絡が取れないということもあります。
しかし,データを入稿して,連絡が取れないからといって印刷していないと,納品日に連絡が取れて納品してくれと言われても間に合わなくなります。そういった場合には当社側の信用に関わりますので,リスクはありますが対応せざるを得ないのです。とはいえ,そういうケースはごくわずかです」(奥田社長)。
現在,料金回収方法は納品時に代金と引き換える方法が圧倒的に多い。
「代引きが9割以上となります。企業さんになると,一部に代引きでなく銀行振り込みもありますが,事前に振り込みをしてくれたりと,後払いはほとんどありません」(奥田社長)。(※続きは本誌にて)

『プリンターズサークル6月号』より

2005/06/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会