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まだ残っている情報ビジネスのフロンティア

過去に情報入手に金がかかった例としては、さる高名でその業界では重鎮の方に会って話を聞くのに10万円をつつんで持っていったことがある。また海外の事例を知るための企業訪問なども大変費用がかかった。しかしこれらは単に情報というよりも会うこととか経験することにかなり意味があって、そこで得られた情報を文字や画像にしても金額ほどの価値は感じられないものだった。

一般に情報を高い値段で売ることは成り立っておらず、有料コンテンツは安くて大量にさばくものしかビジネスになっていない。ということはいくらメディアが多様化してもコンテンツでのビジネスとしてはマスメディアの域を越えたものになることは難しく、特にデジタル化して物理的なメディアの形状に束縛されなくなると、従来のレコードやCDなど形状に依存した販売形態は見直さざるを得なくなる。

その例では近年もっとも大きく躍進した音楽のダウンロード販売は、世界的には1曲100円、日本では200円程度であるが、形状の制約がないので価格はおそらく多様化して下がってくるだろう。しかし友人への貸し借りのところでの小額課金とか、口コミでのお勧めにまでビジネス機会を広げれば市場は広がるともいわれている。要するに過去とは別のビジネス開発が必要になる。

もともと音楽配布ビジネスがあったわけではなく、レコードもエジソンが発明した蝋管は大量複製が不可能で、RCAの円盤になって初めて安価に大量生産できて、音楽家の収入の一部になり得たものである。しかも全音楽家がレコードで生計を支えられたわけではなく、多くの音楽家にとってはアルバイト収入程度のものであった。

ただし大ヒットから財源を得ようとするプロダクションやレコード会社にとってはレコードは企業の生命線であった。ハリウッドもそうであるが、結局知的財産権で利権を守らなければならないのはごく一部の人であって、ヒットのない者にとっては世に出る機会を得ることのほうが重要なはずである。

よくインターネットはロングテールのマーケティングに向いているといわれるが、同じ音楽コンテンツではあっても、いままで不足していた大ヒット以外の音楽家と聴衆の間をつなぐ方法を開拓すれば、それなりに大きなビジネスになるであろう。マスメディアとは絶縁した発想が必要である。

通信&メディア研究会会報195号」より

2005/06/26 00:00:00


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