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デジタルカメラの撮影環境と制作工程 研究会速報

デジタル撮影からのフルデジタルワークフロー

株式会社DNPメディアクリエイト デジタルイメージングセンター センター長 上村 清一 氏

 1999年10月に商業印刷物などの制作において商品のデジタル撮影からDTPデザイン,画像処理,得意先のデザイン確認までフルデジタルで行なうデジタル・ネットワーク制作工房『デジタルコラボレーションスタジオ』を開設した。スタジオの開設により,カメラマン,DTPデザイナー,オペレータなどの専門スタッフが一堂に会して,フルデジタルで協働作業を行っている。

 デジタル撮影比率(デジタル撮影カット数/デジタル撮影カット数+アナログ撮影カット数)は80%を超えている。
 メーカーと連携したハードの検証を行っており,主なデジタルカメラの種類は,Nikon D1X(640万画素),Leaf Valeo(1,700万画素),Siner Back(2,200万画素)である。

 カメラマン側では,クオリティを重視したカラーマネジメントや入力画像の標準化を行っている。例えば,RGB値の調整は,Photoshopの情報ウィンドウ上において,ハイライト部と最暗部を適正値に設定すべくライティング調整・露光調整を実施している。具体的にはRGB値(0〜256)にて,ハイライト部を最大240以内に,最暗部を最小でも30以上になるように調整している。次工程のオペレータが色調調整し易いデータ作成を行なっている。

 また,基本画像解像度400dpi,sRGB環境,Photoshopのプロファイル埋め込み使用はしない。10年培ってきたプロファイルによってCMYK変換をしている。
 従来,5〜6時間要していた撮影が,現在では部分的な撮影後の合成により大きく合理化することが可能になった。
 また,コンピュータグラフィクスの可能性として,3D-CGによる仮想空間スタジオ(DNPヴァーチャルスタジオ)等の取り組みも行っている。

プリプレス部門におけるRGBデータ入稿の現状と課題
株式会社DNPメディアクリエイト 技術開発センター エキスパート 谷村 佳史 氏

 スキャナ分解点数は2001年4月を1とすると,今年度は0.3程度まで落ち込んでいる。しかし,実際に撮影をデジタル化したところ,カメラマン・制作者サイドと製版・印刷会社間のコミュニケーションが不足していることがわかった。
 デジタル化に伴う問題点として,
 ・デジタルカメラに対する過度な期待(デジタルだから直しが容易では・・・)
 ・クライアントのポジチェック工程がなく入稿されるので,色校正(DDCP)の赤字訂正が増えた
 ・スキャナオペレータやプロラボが行っていた細かなマニュアル調整を行う工程の欠落
 ・RGB値で色を判断できる人がいない(熟練スキャナオペレータはCMYK値で色を判断する)
 ・シャープネスをかけないと『ピンぼけ』と言われるのがいやなので,シャープネスを目いっぱいかけて入稿する

 最適なRGBデータの入稿のためのデジタルカメラ撮影・データ制作要領は
 ・レンジ:RGB255階調のうち,40〜245程度を目安に撮影(飛ばず,潰れず)
 ・ハイライト部:完全に飛ばさずに,ハイライト部分の階調を残す
 ・シャドウ部:シャドウ側に発生し易いノイズを避けるために,シャドウ部のライティングをやや明るめに撮影
 ・階調再現:ライト〜中間部の再現を重視し,ボリューム感がありメリハリのある再現
 ・色再現:可能な限り色再現を行なう
 ・解像度:掲載サイズや品質要求度に合わせた解像度(350〜400dpi)で撮影
 ・チャートカット:メイン部にカラーチャートを写したカットを撮影パターンごとに用意
  (Macbeth Color Chartなど一般的なものであればよい)
 ・その他:撮影条件にあわせてカメラのグレイバランス(キャリブレーション)をとる
      シャープネス処理は不要,撮影データの圧縮保存や再圧縮保存はできるだけ避ける
 ・推奨環境:sRGB環境またはAdobeRGB環境(プロファイルを埋め込んで入稿)

 近年の取組内容として,カメラプロファイル(RAW→RGB変換)の作成がある。通販カタログ等の現物色合わせ品目の増加に対応するもので,CMYK変換後に色修正するのではなく,RGBデータを作成する工程(デジタル現像)で印象を一致させるものである。

2005/06/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会