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写真の余命と、デジタルカラーサービス

現像や定着など化学処理を必要とする感光材料を使った技術が消え去ることはないだろうが、人々の生活にを彩る要素として、あるいは一般業務の日常的なところからは消え去ることはそれほど先のことではないと人々が思うようになっている。例えばコンビニの棚から35フイルムやカメラ付フィルムが消えそうなことや、フィルムをDPEにもっていっても現像後にスキャンしてプリントしたり、CD-ROMを焼くサービスが充実していることなど、身近な変化として感じられる。

自分でデジタルカメラから画像を取り出して自分のプリンタでハガキなどを作るというように、意図的に写真処理を避けている人もいるが、デジタルカメラに切替えてもDPEサービスに持ち込んで、カラープリントを作ってもらっている人もいる。つまり写真からデジタルに変えるという方向性は、利用者側とサービス提供側の双方から進められていることがわかる。

その帰結として、画像を自分でコントロールしたいとか再現にこだわりをもった意図的な利用者がデジタル化を先導するというよりも、デジタル化のメリットを感じない利用者に抵抗ないサービスをすることで、写真処理をなくすという宣言をしないでも、実質的にデジタルのプリントに置き換えられてしまうだろうことが予測される。

問題があるとするとサービス業者の方で、写真処理とデジタル処理の設備を2重に持つか写真処理を外部に委託するかになるが、仕事の総量が増えないとすると楽ではない。今でもハガキプリントやCD-ROM作成のサービスをしているが、そもそもそういった加工や2次利用をしたい人は自分でPCでしているだろうから、なかなか一般の多くの人を付加サービスとして窓口に呼ぶことは難しい。

サービス業者が仕事を増やすとすると、既存のカラープリントの利用よりは、デジタルで可能な新たなサービス開発であろう。カラープリントほどの普遍性はないにしろ、自宅PCではできない出力や加工はいろいろある。産業用のカラープリンタの用途は広がっていることは、グラフィックアーツ業界の人ならいくつもの例が簡単に思い浮かぶだろう。

一般のお店でも、幟や横断幕やノベルティ需要は掘り起こせるだろう。それらをするための設備を全部入れなくても、少なくとも窓口業務としてはメニューを増やすことができる。こういった加工が一般の人にも認知されてくれば、街角の窓口業者から仕事を集めて集中処理する業者もさらに高機能の設備をしていくことができる。今は一部の専門業者しかしていない近年のデジタルカラーサービスが、町の需要や個人の需要と結びついて広がっていく時代になれば、その集中処理業者として町の印刷会社が役割を担うことになるだろう。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 2005年6月号より

2005/07/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会