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JDFに投資した見返りは

・JDFへの投資とは印刷CIM化に投資すると同じことです。印刷CIM化では、MIS(経営管理システム)をコントロールセンターにして、工程情報に業界共通のフォーマット(JDF)を利用したIT支援型の印刷工場に再構築することになってきます。CIM化による経済効果については、PAGE2004の基調講演でCIP4本部から講演者として来ていただいたJohn Felleman(ジョン・フェルマン)氏が,CIM化した年商15億円レベルの印刷会社では,5年間で最大5億円のコスト削減が可能であると説明してくれました。少なく見ても1年間に8000万円弱のコスト削減が可能であると言うのです。CIMはコンピュータ支援生産とも訳されますが,大幅なコストダウン実現のポイントは,社内の標準化によるさまざまな無駄の排除と自動化です。

その内訳は以下のような7つの項目です。



・請求,代金回収業務の削減(1年間で185万円) 代金回収の改善では2〜6日間の代金回収期間が短縮でき,1年間で受取金利相当の185万円の削減効果がある。伝票発行作業もかなり削減できる。

・顧客満足向上(1年間で706万円) 重要なのは顧客満足で,顧客を維持するためのサービス改善である。顧客がインターネットで最新情報が分かり,Webでも迅速な対応をできるようにしておくことが改善につながる,また,顧客の心配事に即応して,顧客と良い関係を維持しておく。客をなくすと,新規開拓のコストが掛かる。5件の顧客を維持できれば,1年間で706万円のコスト削減効果になる。

・顧客とのコミュニケーション改善(1年間で760万円) 受発注をWebで行うことで,発注作業が削減でき,連絡ミスや注文間違いによる無駄が25〜75%削減でき,1年間で760万円の削減効果がある。

・社内の連絡,確認などのコミュニケーション改善(1年間で2185万円) 工場内では,ネットワーク化された業務情報によって,進捗の問い合わせだけで1人当たり週に1〜3時間の削減が可能で,1年間で2185万円のコスト削減が可能。

・在庫削減(1年間で363万円) 在庫把握の精度を向上し,ジャストインタイム購買によって在庫コストが5〜15%減少できる。管理の改善で在庫削減により,保管コストや支払利息も削減するので,1年間で363万円のコスト削減効果が上がる。

・生産性改善(1年間で2040万円) 既存設備の有効活用が重要で,予定や仕事の割り振りを自動化で実現して,不必要な機械停止を削減する。これによって工場生産性を全体的に2〜6%改善することも可能で,1年間で2040万円のコスト削減になる。

・損紙削減(損紙の印刷など:1年間で1589万円) MISから工場への指示データの発信や生産機の実稼働データ返信などの活用で,無駄な印刷が1〜3%減少する。これによって,1年間で1589万円のコスト削減効果になる(紙,インキ,人件費,時間など)。

・投資対効果分析(全体:ROIは5年間で600%〜2000%以上) 以上のようなコスト削減効果を合計すると,全体としては5年間で投資対効果(ROI)という観点からは,JDFやCIMへの投入に掛かったコストの600%〜2000%以上の利益が上げられるという考えです。 数字が大きいのでは思われるでしょうが,大きな人件費や設備コストが掛かっている現状からは,少し自動化することで,大きな効果が得られるということになります。
(プリンターズサークル2005.7月号より)

2005/07/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会