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印刷業界におけるサーバ製品の動き(その1)

制作用サーバ環境の変化

印刷物制作における原稿の流れは,現在ほとんどすべてがデジタルデータになってきている。クライアントやデザイナーとの間でデータを交換したり,制作済みの過去のデータをクライアントが参照したり,さらにはコンテンツをほかの目的に利用するなど,これらはすべてデジタルデータでやり取りされている。このように利用目的が広がってきている制作の状況を考えれば,デジタルコンテンツを管理する技術が必要になってくる。
今までの印刷物の制作では,ただデジタルデータをメールやオフラインメディアの交換を行うことで作業をしていた。しかしこれからは制作の効率を上げるためにも,データの交換を管理する必要が出てきている。

またデジタルデータを管理するには,変わりつつあるインフラ技術にも対応できるシステムが必要である。
DTP普及の初期の時期では,ファイルサーバを導入しLANを利用して制作の効率を上げてきている。今も社内環境は同様であるが,大きく変わってきているのはインターネットへの対応部分でサーバの機能が変わってきている。
印刷物制作のためであったデジタルデータの管理も,今後はWebサイトへの利用も考えた多目的への対応も必要な機能として求められてくる。

DTP用のサーバの利用

最近のプリプレスでは,編集済みデジタルデータの原稿入稿が増えているように,外部との制作コラボレーションという形が増えている。
デザイン編集を行う上で,クライアントとデザイナーおよびDTP制作担当者がデータを共有しながら進めることもある。
このような制作のコラボレーション環境では,コンテンツ管理を行うサーバにインターネットで接続しながら作業を行える仕組みが要求される。

制作用サーバでは,インターネットへの対応とともに,だれにアクセスを許可するのか,だれがアクセスしたのかなどの管理を行う仕組みが不可欠になってきている。さらに制作の流れとなるワークフローへの対応や工程進捗などの管理も要求されるようになってきた。このため最近構築されるサーバ環境では,インターネットへの対応だけではなく,アクセス制御やバージョン管理などのコンテンツ管理や制作ワークフローの管理などの機能をもったサーバが出てきている。
このような高機能化とは別に,用途別で単機能で使い勝手を良くするようなサーバ環境も提供されてきている。
このように制作を支援するサーバ環境には,用途や目的に応じて使い分けができる環境になってきている。

インターネットへの対応

デジタルデータの入稿やリモートプルーフの機能は,クライアントやデザイナーだけではなく,外注や協力会社など多くの企業とデジタルデータの交換を行いながら進められるように,インターネットへの対応は必須の機能になってきている。
インターネットへの対応では,WebDAVを始め,Web技術を活用したファイル共有機能を実現する仕組みが必要になる。WebDAVの機能は,ファイルの書き込みや共有や削除,移動などの操作機能がある。ロック,チェックイン,チェックアウト,ロギング,バージョン管理など,ファイルに対する管理機能もある。また,SSLと言った暗号化,電子認証などによるセキュリティ機能をもたせてファイル共有も実現できる。
WebDAV技術を利用した場合,WindowsのOfficeアプリケーションから,またMacのアプリケーションから直接ファイルを読んだり書いたりすることもできる。Webブラウザから行えるし,直接アプリケーションからも利用できる。

制作を行うには,ファイルを転送して処理をしてまた送るといった操作になるが,WebDAVではファイルを開いている時にほかから参照できないようなロック機構があり,ファイルを閉じれば自動的に更新され,いつ処理されたかの履歴も残る。制作におけるコラボレーションを実現するには,このようなファイルのアクセス管理や履歴管理が必要になる。これらはクライアントやデザイナー,制作会社などでインターネットでコンテンツ共有する上では,なくてはならない機能になる。WebDAV技術を利用したサーバでは,アシストマイクロ社が扱うXythos WFS,ヒューリンクス社が扱うWebDAVmanagerなどがある。
コマツライトリンク社が提供している製品であるWebDEPOTは,インターネットファイルサーバという位置付けで,共有フォルダをネットワーク上にもてる。WebDAVで実現された機能と変わらないが,簡単に導入できるようになっている。セキュリティ対策や自動バックアップができ,しかもWebベースでファイルの管理が行える一体型のファイルサーバである。運用保守を軽減しまたインターネット間でファイル共有できるWebDEPOTは,単機能だが使いやすい装置である。
WebDAVの利用では,共通した標準化された機能の範囲の利用となるが,DTPではよりきめ細かい機能が要求される場合があり,独自にWeb技術を利用して開発することになる。ビジュアル・プロセッシング・ジャパン社が扱うDTPターボサーバーなどは独自にWeb技術を利用して実現しており,DTP制作に必要な機能を提供している。(その2につづく)

2005/07/31 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会