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印刷業界におけるサーバ製品の動き(その2)

ワークフローを重視

DTPでは制作時に必要な機能と制作後のコンテンツの管理に必要な機能がある。制作時に重い画像を扱うのではなく,軽い画像で操作を行いRIPの前で重い画像にするOPIサーバ機能,色を管理するカラーマネジメント機能などは制作のワークフローになるが,在版管理やバックアップ機能は制作後の機能になる。
在版管理には,大容量のストレージが必要になり,またカタログデータベースや在版データのアーカイブ機能などが求められる。さらに自動バックアップ機能などにより管理者の手間を減らす機能も必要である。

このようにクライアントやデザイナーなど複数の企業間でコンテンツ共有を実現する部分と,制作のワークフローへの対応や制作の管理機能がプリプレス用サーバとして求められる機能になってくる。このような機能をもった製品には,先に述べたDTPターボサーバーがありワークフローへの対応はWebNativeというアプリケーションでファイルの共有やリモートプルーフ機能などを提供している。
さらにDTPの制作データの管理機能以外に工程進捗などの作業情報などの制作管理も必要になってくる。データ管理と工程管理をつなげた製品ではコニカミノルタグラフィックイメージング社のNeoStreamもDTP用のサーバアプリケーションになる。また,DTPターボサーバーとNeoStreamは連携して利用することもできる。
オラクル社が提供するXPF+とは,クロスメディアパブリシングフォームの略で,これは台割管理からコンテンツ管理まで制作の流れから素材までを管理できるシステム開発のキットの位置付けである。このためこのようなものを利用すれば,制作を管理するためのサーバ構築が簡単にできる仕組みである。

セキュリティ対策を考える

インターネットを利用してデータの交換を行う上で,一番必要なことはセキュリティをどうするかである。特定の企業間でファイルを共有する場合には,VPN(Virtual Private Network)技術を利用した装置を使用してネットワークに接続し,LANで運用しているように利用する方法がある。
これらはサーバを導入するベンダーが一緒に構築してくれるケースが多い。
またDTPターボサーバーのWebNativeで実現されているようなワンタイムパスワードのような方式をサポートしたサーバも出てきており,今後クライアントとの信頼関係の上でもアクセス制限といったセキュリティ対策は不可欠である。このためネットワークに対するセキュリティやサーバやコンテンツへのアクセス制限といった機能は,データ管理の重要なポイントになる。

運用コストを低減する

最近はネットワーク上に大きなストレージサービスを提供しファイル共有できるサービスが出てきている。
NTTコミュニケーションズが提供するShareSatgeASPサービスがある。ネットワーク上にある大容量のファイルサーバで,ユーザIDを利用してクライアントやデザイナー,制作部門,営業などの間でファイル共有できる。またファイルをアップロードすると自動で通知を行えるのでリアルタイムでデータを参照できる。専用ソフトが不要でインターネットブラウザを利用して作業が行える。通信は暗号化され24時間システム・セキュリティ監視も行ってくれる。
社内でサーバを導入すると,運用管理などのメンテナンス要員が必要になるが,このようなASPサービスを利用することで不要になる。ASPのメリットは,初期導入コストが不要になり,さらにメンテナンス要員や技術習得などが不要になり,また設備や人材投資がないためいつでもやめることができるのがポイントである。
同様にレンタルサーバも運用コスト削減といったことから利用できる環境になったきている。
このようなネットワークやサーバのアウトソーシングを利用してDTP制作を行える環境も整いつつある。

CPI社やファーストサーバ社が提供するレンタルサーバには,いろいろなメニューがそろっている。従来はレンタルサーバと言えばWeb用のサーバが多く利用されていた。
ファーストサーバ社のレンタルサーバのサービスには,Webサーバだけではなく,多くの機能を提供している。FTP機能だけではなく,ブラウザやWindowsXPのリモートフォルダ機能を使って,ファイル共有を利用できる。またIPアドレスの制限を行うなど,セキュリティ対策も行える。このため,社内で利用していたWebサーバやファイル共有のためのサーバなどをレンタルすることで,セキュリティ対策を始め,社内インフラ整備のための要員や装置などの運用コストを下げ,セキュリティ対策も可能になる。
同様にCPI社が提供するセキュアファイルマジャーは,暗号化してファイルのアップロードダウンロードを行うなどセキュリティを高めたサービスをWebベースで提供している。これ以外にCPI社のレンタルサーバの機能には,CGIのサービスやデータベースのサービスまである。このためWebを利用したコンテンツ管理を開発した場合でも,レンタルサーバを利用できるので,RAIDによる信頼性確保やセキュリティ機能を実現でき,しかも運用コストを低減できるようになる。
一番手間やコストが掛かる運用保守部分をレンタルサーバを利用することでなくすことができるのが,このソリューションになる。
このようなレンタルサーバの利用も視野に入れながら環境整備を検討できる時代になってきた。

サーバの大容量化への対応

制作の現場では,入稿や編集レイアウトだけではなく,刷版の部分までデジタル化が進んできている。CTPによる刷版出力では,取り置きについてもデジタル化を考える必要がある。そのためには大容量のストレージも必要になってくる。このため最近では印刷業でもNAS(Network Attached Storage)装置の利用も考えられる。コダックポリクロームグラフィックス社が扱うExaStore(エグザストア)は,拡張性,安定性,柔軟性をもった装置で,非常に大容量までの拡張が可能になっている。
NASは,RAIDにしたネットワーク用ストレージでMacintoshやWindows,UNIXなどからネットワーク上でファイル共有できる。
現在NAS製品は,いろいろなメーカから商品が提供されており,簡単にネットワーク上でファイル共有でき,ファイルサーバとして利用導入も簡単である。しかし管理機能がないため共有ストレージとしての運用の範囲となり管理するためには別の方法が必要になる。単機能で簡単に導入できるサーバとしては対象となる。(プリンターズサークル8月号より)

2005/08/02 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会