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インクジェット方式のプリントモジュール(PM-1)

モジュールを組み合わせて,高速印刷,幅広・カラー印刷をそれぞれ実現
キヤノンファインテック株式会社 POD事業部 主席 矢野泰弘(やの・やすひろ)

産業用印刷市場は,これまでの'同じ印刷物を一度に大量に印刷する'こと から,'『個』への柔軟な対応をして必要な時に必要な分だけ印刷する'ことへの需要が高まり,アナログ印刷からデジタル印刷への転換が進んできている。
キヤノンファインテックは,産業用デジタル印刷市場への本格参入の第1弾として,印刷機システムに組み込んで鮮明な印刷を可能にするインクジェット方式のプリントモジュール(PM-1)を開発し,5月23日より受注を開始した。ここではPM-1の概要を紹介し,併せて今後の展望について述べる。

PM-1の自在な組み合わせで多様な産業用途に適応する印刷機を実現

■フルカラー・バリアブルプリントのメリットなど
プリントモジュール(PM-1)は,4インチ幅のラインヘッドを6本搭載したプリントユニット部および大容量3Lインクタンクを有するインク供給部の2つの部分から構成されている。このモジュールを組み合わせることにより,インクジェットのもつオンデマンド,デジタル,カラー,非接触の4つの特長が生きる,多品種・小ロット印刷,バリアブルデータ高速印刷を必要とする商業印刷,工業材料印刷,包装材料印刷,物流印刷などの多様な産業用途に適合する印刷機に展開することができる。
PM-1には最大32台まで制御可能なソフトウエアアーキテクチャが搭載されており,お客様の要求に合わせて多数・自在に配列することにより業務用途に応じた高速印刷(最速 毎分150m)や幅広のカラーデジタル印刷機の構築が可能になる。既に,PM-1を組み込んだフォーム印刷機やバリアブル高速印刷機,段ボール印刷機が実用化されている。

【基本性能】
  ■標準モジュール設計

カスタマイズ性を追求。用途に応じてヘッドの解像度,カラー,高速のモノクロ,ワンポイントカラー印刷機の選択ができる。

■高発色性水系顔料インク
産業用の各用途に合わせて高発色・高耐候性・高速定着を実現する水系顔料インクを開発。

■低ランニングコスト・環境配慮設計
PM-1は回復に使用したインクをサブタンクに戻し再利用するインクリサイクルシステムを採用。ランニングコストの低減と廃インクレスにより環境に配慮した設計となっている。

■保守時間の短縮を実現
PM-1の構成ユニットを一体交換する方式を採用し,産業用印刷機に要求される保守時間の低減などメンテナンス性を向上した。

■凹凸媒体に印刷可能
インクジェットの非接触印刷特性により,段ボール紙,壁紙の表面など5〜6mmの凹凸のある面にも滑らかに印刷ができる。

■印刷速度や幅広,フルカラー印刷が選べる

【使用例1 印刷速度の追求】
請求書,封筒の宛名などのバリアブルデータを高速で印刷。モノクロであれば,毎分150mの速度まで印刷ができる。しかも始動からトップスピードまで連続印刷が可能である。モジュールを組み合わせることで,多様な展開ができる。

【使用例2 幅広・フルカラーによる訴求力の追求】
4色のモジュール構成を選択すると1677万色のフルカラー印刷(36m/分)が可能。 包装用印刷に用いれば色彩鮮やかな内容表示ができる。壁紙あるいは日替わりタペストリーなどにも用途が拡がる。段ボールなども印刷の色を変更することで貨物の識別が容易になる。『産地直送○○さんの農産物』などの可変データを織り込んで差別化することもでき,しかも版下の製作,組み替え,保管も不要である。

【使用例3 既存設備との併用】
モジュールであるため場所を取らずに,既存の印刷機と併用することができる。例えば,オフセット印刷機の工程に組み込んで,名入れなどの可変データの印刷をPM-1に割り当てるというような利用が可能である。つまり,大量印刷と小ロット印刷が同じラインで印刷できる。

今後の展望

当初は,印刷モジュールの提供という形で事業をスタートさせるが,将来的には,お客様の要望に応じた産業用途に適応させる形での印刷機システム本体の開発・販売を行うことも考えている。 今年3月の製品発表後には印刷業界からこのような要望も多く寄せられてきているため,(1)ヘッド・インクの市場対応技術,(2)より信頼性が高いハード技術とより柔軟性に富むソフト技術に重点を置いて技術開発をしっかりと行っていく。今後も,印刷業界の要望に着実に対応するハードソリューションの提供を目指していく。

問い合わせ先
キヤノンファインテック株式会社
三鷹事業所 POD事業部 矢野泰弘
0422-47-7151(代表)
http://www.canon-finetech.co.jp/



『プリンターズサークル 2005年7月号より』

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2005/08/04 00:00:00


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