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出版市場における新たな動き

成熟・飽和市場における新たな動き
 日本における出版市場は、従来の紙媒体を中心にその市場規模が飽和・縮小傾向に入り久しい感があります。出版社サイドは、少しでも販売部数を上げるため、新刊本の発行により消費者の購買意欲を促進する傾向にあり、短ライフサイクル化、小ロット化が進んでいます。この様な中、出版業界はその市場閉塞感を打破すべく、(1)電子ブック、電子辞書など、新たなメディアの開発、(2)オンライン書店やSCM(Supply Chain Management)など、新たなビジネスモデルの開発、(3)中国市場や欧米市場への海外展開、(4)合併、吸収など、淘汰の促進による上位集中、など注目すべき動きが見られます。

新たな動きの背景
 この様な動向の背景にあるキーワードは、経営的な観点から2つ挙げられます。一つは、販売を促進し売上を向上する「マーケティング戦略」、もう一つは、オペレーションを効率化しコストを削減する「新たなビジネスモデル」、の開発と考えられます。

出版業におけるマーケティング
 マーケティング戦略としては、雑誌、週刊誌に顕著に見られる購読者層の明確化、ニッチ市場への創出・進出など、ターゲット顧客の絞込みと業界ポジショニングの棲み分けによる、ニッチでのオンリーワンを志向する動きで見られます。購読者層を、どのようなセグメンテーションとして捉えるか、その為の基準として、これまでのデモグラフィック基準(年齢、性別、学歴、職業、など基本属性)から、サイコグラフィック基準(ライフスタイル、趣味、嗜好など心理属性)などへの軸足のシフトが見られ、ターゲットとなる購読者層を絞込み、明確化して来ています。この動きが、雑誌・週刊誌などの小ロット化、短ライフサイクル化を加速しており、それ故にオンライン書店に代表されるダイレクト販売などによる売り場面積・営業時間など物的制約の打破、販売機会の向上を目指し、絞り込んだターゲットへのアプローチを、深耕化・有効化していると思われます。また、海外ターゲットの開拓の動きも活発化しつつあります。

新たなビジネスモデル
 また、新たなビジネスモデルの動きでは、上記マーケティング戦略を効率的・効果的に実現し、在庫や人的コストなどを抑制するシステムの構築です。ここでは、もちろんIT技術の進歩、インターネットの普及が背景にあります。出版業界は、定価販売によって出版物の単価は全国一律であるため、一部当りに掛かるコストの管理が大きくものをいいます。従って、小ロット、短ライフサイクル化が進む元では、売れ筋・死に筋のモニターと、それら販売動向情報の川下から川上へのリアルタイムでの伝達・共有化、によって流通在庫、店頭在庫の削減が必要になってきます。具体的には企業間ネットワークを前提にしたSCMや、ICタグとPOSの連動などによる単品管理、トレーサビリティ、などが注目すべき動きであると思われます。

 来る8月30日(火)に、(社)日本印刷技術協会では、株式会社文化通信社の星野渉氏を講師に招き、「出版市場・出版業界の最新動向」と題して、最新の出版市場の動向に関する拡大ミーティングを、開催いたします。詳しくは、こちらまで

2005/08/09 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会