■平面の印刷が3次元の世界に
印刷は縦横と平面の世界であるが,この平面の絵柄に奥行きを出し飛び出し感を表現する手法を立体印刷と言う。
立体印刷にもいろいろな手法がある。絵柄を赤・藍(あい)の2色で印刷して赤と青のフィルタを通して見ると立体的に見えたり,角度を変えると虹色に変化するレインボータイプのホログラムで平面上の画像と立体画像を組み合わせたり,違う角度から撮影された2枚の写真を並べて撮影し専用のビューアまたはメガネで見ると完全な立体が見えるようにしている。
見せたい画像をコンピュータで画像処理してランダムなドットパターンにしたり,イラストやマークなどを一定のピッチで連続的に並べて印刷したりすると,立体的な絵柄が見えるように特殊画像処理をしていることもある。
微細なカマボコ形のプラスチックレンズを絵柄に貼り合わせて,立体像を見るレンチキュラーレンズ法には,見る角度によって通常3つまでの絵柄が切り変わるものと,一つの対象を4枚以上のバリエーションにした画像によって拡大縮小を表現するズームエフェクト,角度により被写体の中の物が移動するように見えるアニメーションエフェクト,角度により被写体の中の物がほかの物に徐々に変化するモーフィングエフェクトがある。
用途としては,カレンダーやポスター・カタログ・雑誌などに利用されることが多く,より人目を引く目的として有効だ。またホログラムはカードにも利用されているが,この場合は偽造防止に用いられることもある。
■感触を得られる印刷
通常,植毛印刷(フロッキー)と言われるもので印刷素材の全体または一部にスクリーン印刷で接着剤を印刷する。
そして,プラスの静電気につないだ電極板に短い繊維を置いて,これにマイナスの電極につないだ印刷素材を近づけると短い繊維が接着剤の部分に飛びつく。その結果,手で触ると絨毯(じゅうたん)のような感触を得られる。
用途は,グリーティングカードやパッケージ装飾・高級ワッペン・コースターなどに利用されており,逆にキャッシュカードやクレジットカードには規格上利用できない。
■紙以外の被印刷物への印刷
■UVインクジェット
■その他
上記で述べた以外にも特殊印刷はあると思われるが,プリプレスのデジタル化が進んだ現在では,デジタルでデザインされたモノの上にアナログ的手法が多い特殊印刷を効率良く組み合わせ,うまく人間の五感に訴求できることが肝要だ。
2005/09/05 00:00:00
従来はスクリーン印刷機で金属や木材・ガラス板・セラミックタイル・アクリルボードなどに印刷されていたが,これらの素材に印字できるプリンタもある。
これらの素材は通常のインキだと接着性が悪く乾燥まで時間が掛かる。従って,これらの素材には接着性が良く速乾性があるUVインキが使用される。例えばコムテックスでは大型平面UVインクジェット印刷機を発売している。また,ミマキエンジニアリングでも,UV硬化・有機溶剤などのインキを使ったプリンタをそろえている。
よく見かけるのが曲面への絵柄だ。一般にパッド印刷(タコ印刷・タンポ印刷とも言う)と言われており,凹版から弾力のあるシリコンに絵柄を移し,曲面の表面へ印刷するという凹版オフセット印刷である。
平版オフセット印刷機やスクリーン印刷機ではできない曲面への印刷で,ゴルフボールやキーボード・時計の文字盤・体温計の目盛りなどへ利用されている。
一方,家電製品(炊飯器・掃除機など)やさまざまな製品のコントロールパネルなどの表示部分が曲面になっていることが多い。これはインサート成形という方法で製作されていることも多くパッド印刷とは別の方法で行われており曲面印刷にもいろいろな方法がある。
万線画は,隠し印刷の一つで万線画の中に線画の絵柄を隠し絵的に組み込ませたもので,その上に万線フィルムを乗せると隠された絵柄が浮き出てくる。絵柄は1色の線画や文字であり,幼児向けの絵本や教材などに利用されている。
偽造防止手段の一つの方法としてのマイクロ印刷は,肉眼では判別できない微小な文字を印刷する技術である。マイクロ印刷は有価証券などに印刷されており,特に身近なものとしてはお札にも印刷されている。
従来,スクリーン印刷されていた布地への印刷も,最近ではプリンタでも出力されるようになっている。大型懸垂幕やTシャツへのプリントが代表的だ。
大判プロッタ(プリンタ)と言えば従来は1枚だけのポスターやチラシなどの出力という形態から,最近は出力機に対応したさまざまなマテリアルが開発されており,その形態も大きく様変わりしてきた。例えば,ラッピングバスや電車・飛行機などの交通機関で利用される広告,ビルの壁や量販店内の床に貼られている案内版などはそれぞれ設置される場所や用途に適した素材に「印刷」されており,マテリアルの多様化が印刷物の付加価値を高めている。