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色を表わすモデルの謎

小学校では虹の7色(国によっては6色あるいは5色)のことを習うし、中学校では色環(色相)とかマンセルの色立体を習うだろう。仕事で印刷に就く人はCMYKを覚え、電子ディスプレイではRGBをいう色の関係を覚える。最近ではTVが印刷よりも身近にあるので、小学校でもRGBを先に教えたりしている。また小学生もパソコンで絵を描く科目がある。家でプリンタを使っている人は、CMYKのインクを買いに行く。 子供にとっては何故こうも多くの色を表わす方法が併存しているのか疑問を抱くことになろう。あるいはこのことに疑問を感じることが色の理解の第一歩であるともいえる。しかし子供の疑問にうまく答えられる親がどれだけいるのか、という疑問もある。それほど色のモデル間の関係をきちんと説明したものは少ないように思う。

これらが大きな疑問も持たれずに併存できている理由は、いずれのモデルも人間が直感的に理解できる要素があるからである。小さい子供は色の弁別能力が低いので、虹の数色を覚えるのくらいから始めるのはよいのだろう。色の変化を段階的に表わせば色環になる。それに明度・彩度の区別をつけるのは、絵を描く時に自然に覚えられる。それを精密にしていけば何十色のパステルや色鉛筆になり、体系化すればマンセルのようになるのだろう。

一方、見え方の側から考えると、色環の赤と緑、青と黄のような反対色の対比がある。これは均等には配色されないもので、そうすると違和感を覚えるものとなる。RGBとCMYの補色関係もある。これは混色の基本である。混色や配色の対比というのも直感的にわかるものであるが、人の目に判りににくいのは虹の色の分光強度分布のようなもので、あまりバランスのよい配色には見えない。

しかし分光強度は工業計測の基本である。正確に光の波長ごとのエネルギーを測るには、多くのバンドで光をとらえなければならないが、なるべく簡単に可視光をとらえるには、いわゆるRGBのバンドを使うことが一般的であり、スキャナもデジタルカメラもそうである。違うバンドでも分光強度を捉えることはできるが、その組合せは人には理解しがたい部分がでてくる。

それぞれの色のモデルには良し悪しがあり、どれも捨てられない。これらを統合的に納得するには、人の視覚系自体が複数の異なる色モデルで成り立っていることを理解すればよい。最初の光センサの段階は、いわゆるRGBに近い視細胞の構造があり、そこで得られた信号圧縮をするのに反対色ごとの2チャンネルの色差情報にまとめられ、それはTVのNTSC方式にも採用されている。また脳では色の名称とその明度や彩度の程度で認識しているというように、人の中で3種の色の構造を扱っているという。だから経験的に3つのモデルが使われてきたのだと解釈されている。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 2005年8月号より

2005/09/02 00:00:00


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