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オリジナルデザインの天然水を販売

―高付加価値で差別化―
株式会社精工 デプリ事業部 パッケージコンプ南青山 

『プリンターズサークル』2004年11月号では,デジタルプリントを活用した商品見本ビジネスを展開する精工デプリ事業部を紹介した。同社はインディゴ(現・HPインディゴ)の「オムニアス」導入を機に,サンプル製作専門ビジネスという形でデジタルプリントビジネスに参入した。
新商品発売前の消費者テスト用のモックアップ(商品サンプル)などの製作を請け負う商品見本ビジネスに加えて,多品種小ロットの食品,飲料などのパッケージ,ラベル類などにデジタルプリントを活用してきた。そのほかにもデジタルプリントを活用して新たに付加価値を付けた商品を開発し,企画提案を行っている。同事業部の林正規部長に同社の開発商品について,いくつかを紹介いただいた。
もともと同社は農産物などのパッケージやラベル印刷が主要商品で,そのためフィルム印刷・加工などが中心であった。従って,商品見本ビジネスでも紙にこだわらず,フィルムやプラスチックなど幅広い素材に対応している。
その一つが,オリジナルデザインのペットボトルを使用した天然水の販売である。これは大分県の泉水スプリングスと提携して,ユーザ独自のデザインの天然水ペットボトルを提供するというもので,その制作費用は基本的なものは1000本の注文で20万円,これにはオリジナルデザイン代も含み,納期は約1週間で提供する。
制作は,「オムニアス」を使用してオリジナルシュリンクラベルを印刷して,泉水スプリングから提供されたペットボトルの天然水にラベリングを行う。既にいくつかのメディアで取り上げられているが,日本ヒューレット・パッカードの「HP WORLD Tokyo2005」では,同社が制作した55種類(デザイン11種類×色違い5色)各60本,3300本のオリジナルパッケージデザインのペットボトルの天然水が配布され,話題を呼んだ。
「当社では,印刷からシュリンクまでの設備をそろえていますから,デザイン制作からの一貫したサービスを,しかも多品種小ロットに対応した形で提供できます。基本は1000本単位ですが,デザイン料込みで20万円からですから,だいたい市販の水に30〜40円程度のプラスでオリジナルのペットボトル天然水を製作できるということになります。

天然水を提供してもらっている泉水スプリングさんは,名水と定評のある大分県の竹田湧水群から天然水をボトリングしており,有名ホテルなどのオリジナルウォーターとして採用されるなど定評があります。
これまでは大手有名ホテルのようなところですとある程度大量の需要がありますので,グラビア印刷を利用して印刷しても,コスト的に見合った形でオリジナルパッケージラベルを作成することも可能でした。


HP WORLD Tokyo2005では同社が製作したオリジナルパッケージペットボトル天然水が配られた.

しかし,デジタル印刷機を利用して小ロットでの生産が可能になったことで,HP WORLD Tokyo2005などのようなイベントでの利用,販促での活用,あるいは飲食店などでオリジナルウォーターを提供するなど自社ブランド確立のためのツールとしても使いやすくなったと考えています。また,自社以外にもスポンサーを募って,例えばゴルフ場などでオリジナルウォーターのボトルを広告媒体に使用すれば,より制作費を抑えることもできるのではないでしょうか」(林氏)

自ら仕掛けることが重要になる

このようなオリジナルパッケージデザインの天然水販売を企画したのは,これまで同社がデジタル印刷機を利用したサンプル作りに特化してきたことによって,多数のサンプル製作を手掛ける中で,いろいろなアイデアやノウハウが同社に蓄積されてきた。それ生かそうとした時に,受注を待つのではなく自ら企画して販売していくことが重要だと考えた。
「オンデマンド印刷,デジタルプリントなどの言葉は知っていても,実はそれで何ができるのかを分かっているお客様はごくわずかです。例えば販促活動では,従来のマス広告のように画一のものを不特定多数のユーザ側に発信することに対しては,限界を感じていたり,何か新しいアプローチが必要だと考えていたりします。従って,具体的な企画や方法については,やはり常に何か良いものがないかと探しているように思えます。
もちろん,従来の方法論でよいということでしょうか,あまり反応がないお客さんもいますが,われわれの提案に対して非常に興味をもって関心を示してくれるお客様も増えています」(林氏)
現在,同社ではこの天然水のほかに,同様に菓子類をオリジナルパッケージで販売する企画も進行中である。海外では既にデジタル印刷機のみで,同様なビジネスを手掛けて成功している事例もある。例えば,自動車ディーラーが車検を受けてくれたユーザのミラーに菓子パックを掛けておき,そのパッケージにはディーラーとその担当者の名前が印刷されているというような仕掛けである。林氏は実際にその会社を見学して,日本でもビジネスとして展開できると考えた。


お菓子のパッケージもオリジナルデザインで提供

同社はもともと食品関係の包装資材も手掛けており,衛生面でも十分に対応できるという基盤がある。既に菓子類を提供してもらえる食品メーカーのめども立っている。 もちろん,食品に限らず,芳香剤や入浴剤などさまざまなものをオリジナルパッケージで提供することができるだろう。従来は大量に配布するような大型キャンペーンなどでないと,なかなかオリジナルパッケージでの提供はコスト的に難しいものがあったが,小ロットでも可能ということであれば,販促ツールとして利用しやすくなるだろう。

レーザカッターの導入で,形も自由自在

デジタルプリントを利用したビジネスのほかにも,レーザカッターを利用した企画も展開している。これを利用することによって,かなり細かい抜き加工のほか,ミシン目加工,折り線の加工やスリット加工なども素早くできる。
例えば,名刺である。これまでの名刺は凝ったデザインを行ったところで形はおおむね同じような長方形であり,会社名・名前などを相手に知らしめることが中心で,それを起因にしたビジネス展開を行うツールとしては機能しにくかった。 しかし,名刺を広告媒体と見れば,四角い名刺という枠から外れてもかまわないのではないかということである。 「例えば,自動車メーカー,ディーラーであれば,新車のキャンペーンや売り出したい自動車の形をした二つ折りの名刺を作成します。開くと座席のレイアウトがあったり,キャンペーン内容を掲載したりすれば,通常の担当者の名刺を受け取るより,もらうほうもインパクトがあって効果的ではないでしょうか。
あるいは同じ自動車の名刺でも,時間の経過によってまた違った形にする。印刷でのバリアブルだけではなくて,2次加工の部分でもレーザカッターを使うことによってバリアブルの対応が可能なのです」(林氏)
これまでの抜き加工と言えば,抜き用の型を一つひとつ作らなければならなかったので,少量多品種に対応するのは,納期的にもコスト的にもほとんど不可能であった。しかしレーザカッターを使用すると,印刷と同時にCADデータを作成し,印刷終了と同時にレーザで2次加工ができる。極端な話だが1枚1枚違う形でも対応できるという。日本で,このレーザカッターを導入しているのはまだ数社しかなく,このマシンを活用することで付加価値の高い製品を提案していきたいと林氏は語る。
今後は名刺だけではなく結婚式・披露宴の席次表,グリーティングカードなどのカードビジネスの展開を予定している。
同社では,紹介してきたようなビジネスについて,自社のみでビジネスを行うのではなくて,ビジネスパートナーを募集している。同社の営業担当者がいない東北地区では,既に前記ビジネスについての説明会を80名近い人を集めて開催して,かなりの反響があった。今後,ビジネスパートナーを組んで共同で全国的な営業展開を行っていきたいという。

『プリンターズサークル』9月号より

2005/09/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会