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DTPワークフローの効率化を進めるソリューション

〜フォント・DTP関連ソフトウェア・XMLソリューションの動向〜

フォント

国内の主要フォントベンダーのほとんどは,既にOpenType製品をラインアップの中心としている。OpenTypeの最も重要な意義は,MacとWindowsで同じ文字セットのフォントが使えるためクロスプラットフォームを実現できることと,PostScriptフォントと違ってプリンタフォントを必要としないホストベースフォントということである。 国内でのDTPのトラブルの多くが,文字セットの違いやプリンタフォントの有無に起因するものであったことから,最終的にはOpenTypeフォント中心に移行すると思われる。しかし,Mac OS XやOpenType に対応したDTPアプリケーションの使用率もそれほど上がっていないことから,実際の使用度合いは,現時点でもそれほど高くはないことが推測される。

モリサワでは,新たにフォントライセンスの年間契約「モリサワパスポート」の提供を開始した。PC1台分のフォント使用権を1年単位で購入するもので,既にリリースされている138書体すべてが使用可能となる。
ユーザにとっては,多種類のフォントを使用する際の導入コストを大幅に削減できること,OSやハードウェア変更の際のフォント移行が楽になることが,大きなメリットであろう。

DTPソフトウェア

アドビの主要DTPソフトウェアの統合パッケージがバージョンアップされ,Adobe Creative Suite 2(クリエイティブスイート2,以下Adobe CS2)となった。主要アプリケーションは,それぞれPhotoshop CS2,Illustrator CS2,InDesign CS2,GoLive CS2となり,Acrobatのバージョンも最新の7.0 Professionalとなっている。
Adobe CS2には,新たなアプリケーションとしてAdobe Bridge,Version Cue CS2がパッケージされている。さらに,新たにオンラインでストックフォトを購入することができるサービス,Adobe Stock Photosが付加されている。

Bridgeは,アドビアプリケーションのネイティブファイルやPDFの整理,検索,プレビュー一覧表示が可能な,ビジュアルファイルブラウザの機能を持つアプリケーションである。DTP作業をおこなう場合,複数のファイルを開き,複数のアプリケーションを切り替えながら作業することが多いが,Bridgeを使用することによりアプリケーションの切り替えを減らし,作業性が向上する。Version Cue CS2は,ファイルのさまざまなバージョンを管理するアプリケーションであり,グループ内でのファイル共用時に効果的である。

InDesign CS2の新機能としては,オブジェクト属性をスタイルとして登録するオブジェクトスタイル機能などがある。また,Microsoft Wordからの読み込み・XML読み込み機能の改善が図られている。

また,新しいアプリケーションとして,Adobe InCopy CS2が発売された。InCopy CS2は,ライティング・編集専用のアプリケーションで,InDesign CS2と連携して使用するものである。たとえば,InDesign CS2を使用する編集者の指示にしたがって,ライターはInCopyを使用して記事を作成しInCopyファイルとして保存する。出来あがったInCopyファイルを編集者に送信すると,編集者はInDesgin上でそれを配置するという流れとなる。InCopyでは,文字組みエンジンを始め多くの機能がInDesign CS2と互換性が保たれている。InCopyは,米国では以前から発売されており,雑誌編集や新聞編集のためのツールとして普及している。

クォーク社から最新版の「QuarkXPress 6.5日本語版」が発売された。動作環境がMac OS X,Windows2000/XPになり,複数の印刷用ドキュメントやHTMLドキュメントを総括して1ファイルとして扱える機能など,クロスメディアパブリッシング機能を強化したものとなっている。

国内のDTP分野でもっとも普及しているQuarkXPressがMac OS Xに対応したことで,Mac OS Xの導入が増えるかどうかも注目される。6.5では,Adobe Photoshopのネイティブファイル(PSD形式)をインポートし,さらに,フィルタの適用・色調節・色変換などのイメージ操作をQuarkXPress上でおこなう画像編集機能が追加された。また,OpenType・CIDフォントのダウンロードにも対応している。他にExcelファイルをインポートできるなど表組機能が強化されている。

DTP専用システム

方正のFounder Fitはチラシ向けと情報誌向けに販売されており,データベース連動や台割システム連動などのシステム構築がおこなわれている。Founder Fitは,印刷の発注元である小売流通業での導入が増えている。
シンプルプロダクツのWAVEシリーズは,情報誌や広告の自動組版レイアウト用システムとして定評がある。他に新聞向けDTPとして,方正の Megalith(メガリス)とキヤノンシステムソリューションズのEdianWing NPSの導入が増えている。

XML文書とレイアウトソフトの連動

近年,DTP専用システムやDTPソフトの多くが,XML文書との連携を重視した機能拡張を進めている。印刷物とWebなどデジタルメディアの双方を対象にした制作には,XMLデータを中心にしたシステム構築が不可欠であり,様々な形態でのXMLサポートがトライされている。
シンプルプロダクツは,XMLデータベースから自動組版をおこなうXML Automagicを販売している。モリサワのMDSは,XML文書からの自動組版やWebパブリッシングをおこなうモジュールからなる統合ソリューションで,外字もサポートされている。大日本スクリーンのAVANAS BookStudioも,XML文書から自動組版編集をおこなう機能を装備している。MDSやBookStudioは用語集や辞典類,法令集などのXML化で実績が多い。
アドビのInDesign CS2でも,XMLデータを読み込んで組版する機能や,XMLへ出力する機能が強化されている。また,Windows版とUnix版のみとなったFrameMaker7.1は,新たにXML取り込み機能の充実や,最新のPDF出力に対している。構造化されたXML文書の編集制作と印刷の機能に優れており,海外との文書交換の多い大手メーカーのマニュアルなど,企業内出版物を対象に広く利用されている。

PPMLとバリアブル印刷向けの編集ツール

バリアブル印刷は,以前から帳票印刷などの分野で広くおこなわれていた。しかし,モノクロのレーザプリンタ出力が中心であり,編集方法もメインフレーム上でプログラミングによってテキストレベルの編集をおこない,宛名や個人別メッセージなどを差し替える程度のものがほとんどだった。近年,高品質カラーに対応したデジタル印刷機が増えたことや,バリアブル印刷に最適化された言語とRIPの実装,One to Oneマーケティング手法の普及によって,バリアブル印刷が急速に広がりつつある。PostScriptにはバリアブル(差し替え)の概念がなく,大量ページを出力するには,RIP処理がネックとなる。PPML(Personalized Print Markup Language)は,RIP内で同一オブジェクトのキャッシュをおこなうことにより,大量ページの可変データ出力に適した出力言語である。

シンプルプロダクツのFormMagicは,バリアブルプリント用の編集レイアウトソフトである。宛名や画像の差し替えレベルを超えて,パーソナルカタログや,成績表,ビジネスレポート,海外旅行の日程表など幅広い分野のバリアブル印刷を実現することができる。XML,CSV,RDBのいずれにも対応している。
サカタインクスは,XMPie社のパーソナルエフェクトを販売しており,データベースとデザインの要素を,設定したロジック(バリアブルデータを生成するルール)に従って,ダイナミックにバリアブルドキュメントやWebページ,eメールを作成する。
その他に,縦組みやOpenTypeフォントに対応したモリサワ・バリアブル・プリント(MVP)が発売されている。

印刷関連機能が充実したAcrobat7.0

PDF生成ツールであるAdobe Acrobatが,バージョンアップされた。Acrobat7.0 Professionalでは,印刷関連で使用する機能が,「印刷工程ツールバー」としてひとまとめにされており,操作自体も分り易くなっている。印刷時のインキ総量や,RGB画像,オーバープリントをチェックすることができる出力プレビュー機能や,ヘアライン修正機能,裁ち代やトンボを付加する機能が新たに搭載されている。また,オフィスアプリケーションのデータからPDFを生成する際に,RGB/CMYK変換することができる。

PDF/X-1a はデータ入稿の信頼性向上と簡便性のためにPDFの機能を制限したフォーマットで,米国の広告業界によって策定され,ISO規格にもなっている。PDF/X-1aでは,フォント埋め込みとCMYKカラーが必須であり,フォントの有無や色空間の違いによる入稿トラブルは起り得ない。国内でも,PDF/X-1a による入稿を検討しているケースが増加している。

Acrobat7.0 Proでは,プリフライトの結果をエラーメッセージではなく,ビジュアルに表示することが出来る。たとえば,PDF/X-1aを設定してプリフライトをおこなうと,問題のあるオブジェクトに注釈を付けた状態のPDFが生成される。このPDFを見ると,どのオブジェクトに透明が設定されているとか,RGB画像であるためPDF/Xでは問題となることが,誰にでも理解できるし,修正の手順も容易に理解できる。

■出典:JAGAT 発行「2005-2006 グラフィックアーツ機材インデックス」 工程別・印刷関連優秀機材総覧

2005/09/15 00:00:00


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