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EMS認証取得だけで納得しない日本メーカー

以下は、「ISO Management Systems」に掲載された日本品質保証機構品質マネジメント局、マネジメントシステム部部長「Hitoshi Sasaki」氏の投稿記事の抜粋、要約である。ISO14000、9000いずれについても、認証取得という形だけでは評価できないという発注者の見方を明確に述べている。

競争の熾烈な世界市場では、日本の自動車メーカーも外国資本の受け入れやライバルメーカーとの提携を余儀なくされ、それによって迅速かつ正確な情報を共有するためのコミュニケーションの方法を確立する必要が生じる。さらに、生産基地の移転によって、部品・原材料メーカーを含めたサプライチェーンのマネージメントシが求められるようになったが、海外工場と本国の工場との役割分担を定め、日本の自動車メーカーのお家芸である改善を維持継続しなければならない。このような問題に対処するため、日本の自動車部品メーカーはISO9000かQS-9000を採用する道を選んだ。

日本の自動車メーカーが世界のメーカーと異なる一因は、系列企業と呼ばれる独自のサプライチェーンを持っていることにある。両社の間には信頼関係が生まれ、それが高品質車の生産に貢献してきた。が、最近になって外国資本が流入し西欧流の合理的なビジネスモデルが採用されるようになってくると、系列企業の見なおしが行なわれるようになった。こうしたとき、部品メーカーを選定するに当ってISO9000を評価基準として利用できるし、逆に自社製品が信頼性の高いものであれば、系列以外のメーカーとの取引も可能となる。そのためには、客観的に品質を立証する基準が求められる。そこでまた、ISO9000の出番となる。

以上のような理由から、日本の自動車産業は、世界的に通用する品質保証規格と品質マネージメントシステム規格を採用するに至ったのである。ただし、いくら品質マネージメントシステムを導入したところで良い結果が得られるとは限らない。手順や方式が良くても結果が悪ければメーカーの評価は低い。ISO9000、14000の認証は最低限の要求事項であって製品の品質を保証するものではないというのが日本のメーカーの考え方である。

ISO14000に対する日本の自動車メーカーのアプローチとして、'社会的責任'を果たしていることを証明し、自社のイメージアップにISO14000認証を取得する自動車メーカーが増えている。が、環境マネージメントシステムに対する意識よりも、'環境にやさしい車'を開発するという意欲の方が強いようにも見える。そのため、メタノールを燃料とする車、天然ガスを燃料とする車、ハイブリッドカーのような低公害車、さらに燃料電池車のような無公害車の研究が盛んになされている。 製造工場側でも、'グリーン調達'を掲げて資源を確保し、廃棄物の環境への影響を減らす努力が続けられている。この場合も、'環境にやさしい車'を開発するプロセスのためのツールとしてISO14000が利用されている。

供給業者を評価し、情報を共有する手段としてマネージメントシステム規格の採用が広がるのは間違いないが、日本の自動車メーカーは自社独自の要求事項にしたがって供給業者の評価を行なっているところが多く、その要求は、ISO9000、QS-9000、ISO/TS 16949などの規格が求めるものよりも高い。

重要なのは、品質マネージメントシステムを運用することではなく、その運用によって効率を引き上げることである。日本のメーカーは、供給業者のところに出向いて直接指導して問題点の解決に当り、場合によってはプロセスを修正する。マネジメントシステムによる自主的な是正処置を求めることなどしないのだ。きつい言い方だが、日本の自動車メーカーは、供給業者がQS-9000やISO/TS16949、ましてISO9000を取っただけでは少しも納得しない。背中が痒くてたまらないという表情を顔に出したら、供給業者はすぐさま背中をかくといった対応をメーカーは望んでいるわけだ。日本のメーカーのハードルはきわめて高い。

2005/09/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会