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ステップ・バイ・ステップで進める印刷CIM実現事例

JDF対応生産設備やMISの導入に関してどのようなステップで進めたらいいかについて、迷っている企業は多いのではないだろうか。今年の6月から7月にかけJDFフォーラム・ジャパンが主催して行った無料セミナーの中では、さまざまな入り口が紹介され、その内容は本ページの「JDFによる4つのワークフロー」(2005年8月24日付け)で紹介した。今回は、MISの導入から入って、プリプレスと製本機械との連携を行い、印刷、後加工現場からのデータを原価計算に利用、さらに顧客が発注した仕事の状況をウエッブで確認できるところまで進んだ中堅印刷会社の事例を紹介する。

同社の印刷CIM実現への取り組みは、4年前にMISを導入したところから始まった。ただし、いきなり生産設備との連携をしたのではなく、生産設備とは切り離して使う形でMIS自体の構築、運用をきちっとできるようにすることを優先している。新たなMISの運用にそれなりの時間がかかることは、従来と変わることはない。
MIS導入の1年後には、プリプレスで生成されたデータで、印刷機械のインキキーコントロールのプリセットができるシステムを導入した。これについては、MISと関連するわけではないし、先行技術もあるので導入・運用はスムースで印刷作業の合理化に成果を上げた。その後、JDF対応ではない印刷機械でもJDF対応ができるインターフェースを導入してインキプリセットを可能にした。
この段階で、印刷機を郡管理するシステムから各印刷機の稼動状況に関する情報をMISに取り込めるシステムを導入した。

インキプリセットを可能にするシステムを導入した同じ年に、JDF対応の折機コントロールシステムを導入、ネットワークにつなげて製本機械のプリセットの自動化を可能にし、あわせて稼動状況をモニターできるターミナルも導入している。
MISを導入してから足掛け2年で、印刷、後加工分野のプリセットの自動化と稼動状況把握可能な状態にまでもってきたということである。この間にMISの方の整理を進めていたと思われ、3年目にはMISと印刷、後加工機のコントローラとの連携を強化して、印刷・後加工の作業の現状を常にモニタリングできるようにするとともに、生産管理のデータを原価計算に使用できるようにした。

プリプレス工程への導入は、4年目に入った段階で始まった。面付けのテンプレートをJDFとして発行しMISに登録しておくことで自動面付けが行えるシステムを導入して合理化を図った。さらに校正、CTP出力のコントローラも導入してMISとネットワークでつないで、見積もりから刷版出力までの生産ラインを完全に統合した。ただし、生産設備側からのMISへのデータ転送は行っていないという。
同社では、2005年に入ってMISのバージョンをアップデートし、顧客が発注した自分の仕事の進行状況を自由に見られるシステムを導入している。ただし、その導入による実績はまだ十分ではないという。

以上、かなり広い範囲でJDFワークフローを導入して成果を出している中堅企業の導入ステップを紹介した。同社は、これからJDFワークフロー導入をしようとする印刷企業に対してアドバイスをしているが、その要点は以下のようなものである。

1. 導入に当たっては、他社の事例等をあてにするのではなく、全てを自らが判断、決定していく必要がある。
2. ゴールに到達するためにはそれなりの時間がかかることを理解し、あらかじめ優先順位を明確にした上で、ステップ・バイ・ステップで導入する。
3. インターフェースやソフトウエアの接続については、前もって十分にテストすることが必要である。
4. システム導入、運用にあたっては、プロジェクトマネージャーおよびシステム管理責任者を明確にして進めること、および時間をかけた十分な社員教育が重要である。

2005/09/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会