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根源的欲求 「よく見たい」「よく知りたい」

「目から鱗」とは、認識が変わったことのたとえだが、それははっきり見えた、と同義的に使われている。英語の「見る」は、探す=Look、見張る=Watch、わかる=See、などに分かれていて、メディア技術と対応させると、検索とか、巡回とか、表現方法、というテーマになるといえる。情報技術という点ではこれらは異なる分野かもしれないが、情報を必要とする人間にとっては総合的に簡単に扱える道具が欲しいのである。

グラフィックアーツは過去には印刷制作とほぼ同義語で、デザイン・編集・組版・製版を含むものであった。なぜそのような仕事があるのかというと、それぞれに人の根源的な欲求であるところの、「もっとよく見たい」「もっとよく知りたい」という要求に応えるノウハウがあったからである。

印刷および関連業はこれらのノウハウをセットで処理出来た(場合が多い)。そこでWEB制作などもその延長で行ってきた。しかしWEBの性質は紙とは異なり、紙が「もっとよく見たい」「もっとよく知りたい」ために提供できる機能とは別にWEBならではの機能のことも知らなければならない。さらに携帯とかPodcastingなどいろいろなメディアが増えてくると、各メディアの特質を捉えて組み合わせることが、「もっとよく見たい」「もっとよく知りたい」に応えることにつながるだろう。

人はTVでチラッと見た何かが印象に残ったならば、本屋に行ってそれに関する書籍を探して、じっくり読むかもしれない。つまり、チラッと見るのに役立つメディア、崩れかけた記憶から思い出すのに役立つメディア、さらに突っ込んで知るために使うメディア、などなどがデジタルで多様化している。

これらは情報提供側からは別々のものであっても、情報を受け取る人の側からすると人つながりのものなので、冒頭の「人間にとっては総合的に簡単に扱える道具」の実現にクロスメディアで立ち向かうことになるだろう。これからの印刷は、そのような人と情報との複合した関わりの中に位置付けられる仕事である。もし顧客の身になってどのようなサービスをすればよいかを考えれば、印刷物を作る仕事単独では解決できないことが多くなっていくのである。

だから関連したメディアの仕事をするところと連携をすることが重要になる。さらにこのような連携で新たなビジネス形態を見つけることは大変なエネルギーを要するが、顧客満足度を高めるには個々のメディア制作の効率化に留まらず、情報伝達全体を秩序だてて信頼性の高いサービスにしていくビジネスコーディネーションが成長の鍵となる。

多様なメディアが勝手に情報発信を始めると無秩序な状態になり、かえってわかりにくくなるので、デジタル情報に秩序をもたらす技術やサービスも発展している。メディアのビジネスをコーディネートするのは、制作作業などに関わる人々が対象なだけでなく、データ管理システムを構築することもあわせて必要である。つまりデジタルアセット管理、コンテンツ管理、DRM、メタデータ、電子認証、などの技術の発達とともに新たなメディアのビジネスも発達する。

このようなメディアに関する技術やビジネスのコーディネーションの担い手はまだ登場していない。それはいろんなメディアを組み合わせた総体を把握することは困難で、それが参入の障壁でもあり、新たなサービス提供者にチャンスを与えるものでもある。今日では印刷以外でも、「もっとよく見たい」「もっとよく知りたい」というテーマに応える仕事に面白さを感じる人が増え、またこのような方法が有効だというイマジネーションを豊かにもつ人も増えている。それはこのことに関するベンチャーが増えていることからもわかる。

もしあなたもそうなら、そして人生をその方向の仕事に賭けたいのなら、クロスメディアのエキスパートを目指してみませんか? またクロスメディアエキスパートを目指す人のために、下記のような講座を始めました。今までの印刷のビジネスのスタンスでは得られなかったデジタルメディアのソリューション提案力を獲得することが、ビジネスのコーディネーションには必須だからだ。

デジタルメディアのソリューション提案(講義編)

デジタルメディアのソリューション提案【演習編】

2005/09/30 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会