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自動組版は、夢か幻か?

DTPの作業効率を高めるために、自動組版とかデータベースパブリッシングということが話題になったことがあった。コンピュータに割り付けレイアウトをさせることは今に始まったことではなく、そもそも電算写植の初期の目的でもあった。百科事典など膨大なページを自動的に組むシステムが作られた。その後情報誌など、やはり先にバラで校正しておいて、レイアウトは出稿の最後の一日で一気に自動的に行って多ページ出力するようなシステムも作られた。

しかし1980年代に日本でも電算写植が一般の印刷業に普及するに従って、百科事典のような多ページ処理よりは商業印刷や端物的な処理をどう電算写植で効率化するかが課題になった。そこでアルゴリズムによって自動レイアウトするのではなく、WYSIWYGで画面を見ながら手作業をするDTPの出番となったわけだ。その後にDTPでも原稿のテキストにタグを入れて自動組版するという、元に戻ったようなことを始めた。

DTPといってもマニュアルのような章節項がはっきりした構造化文書は最初から自動組版が行われ、FrameMakerなどはそれらをメンテ・更新するのに重宝なので、プラットフォームがUNIXからPCに移ってもまだ使われている。DTP機能の豊富さよりは図表などの位置が変わっても自動組版レイアウトができることにメリットがあるからである。今日のオフィスにDTPソフトが入り込めず、レイアウトの先割が行いにくいWordが結局使われるのも同じ理由だ。

テキスト量や図版のサイズなどに応じてレイアウトが自動的に決まってしまう文書整形システムをコンテントドリブンと一般的に呼び、電算写植からTexXやWordなどがそれにあたる。一方大方のDTPソフトのようにレイアウトを先に割り付けて、そこに収まるようにテキストサイズや組み方、画像サイズなどを調整する、あるいはレイアウト位置を調整するシステムをレイアウトドリブンと呼ぶ。

今日、プリンタによるバリアブルプリントなどは、この両者の要素が必要になっている。取引明細などは人によってまた月によって増減があるのでコンテントドリブンが必要だが、パーソナライズした広告を入れるのはレイアウトドリブンになる。レイアウトドリブンは一定の空間にコンテンツを押し込むだけでなく、理想的には人が割り付けたかのように、空間バランスの取れた組みやレイアウトすることが求められる。

これはバリアブルプリントの取り組みを、より難しくしている要素でもある。それ用の自動組版ソフトが過去にはあまりよく評価されなかったこともある。商業印刷物的なレイアウト調整を自動でさせようという無理難題を突きつけようとするのではなく、小組(箱組)を先に作っておいて、それを並べ替える程度のものもある。また自動でレイアウトした後で、人手でレイアウトを再調整するチラシ的な考えもあるだろう。

今日WEBのCMSというのはある意味では自動レイアウトであるともいえる。WEBの場合のやりやすさは、紙媒体と違ってタテの長さに制限がないとか、白紙のところが多くても資源の無駄は出ないという点で、緩くレイアウトできるからかもしれない。しかし今日のCMSの競争の中で、次第に洗練されつつあるように思える。その洗練はびっちり詰め込むという意味ではなく、シンプルなレイアウトでも見栄えのするものはできるという点かもしれない。

WEBやバリアブルプリントの普及は、否応なく自動化がしやすいレイアウト方法を進歩させるだろう。それは印刷の世界にもきっと影響を及ぼすことになる。むしろ出来ることなら、印刷側から先手を取って自動化しやすいレイアウトに努力すれば、WEBやバリアブルプリントに仕事を広げることになりはしないだろうか。

関連情報 : 10月20日(木)テキスト&グラフィックス研究会 tech Seminar
紙面制作の自動化とページデザイン

2005/10/05 00:00:00


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